あらすじ
そもそも憲法9条、96条は改正できるのか? 集団的自衛権から非嫡子相続まで。憲法論議を正しく楽しむための一冊。本書の内容は、1.憲法の価値を噛みしめる―国家を縛るとはどういうことか? 2.日本国憲法の内容を掘り下げてみる―いわゆる三大原理は何を語っていないのか? 3.理屈で戦う人権訴訟―憲法上の権利はどうやって使うのか? 4.憲法9条とシマウマの檻―どのように憲法9条改正論議に臨むべきか? 5.国民の理性と知性―何のための憲法96条改正なのか?など。テレビや新聞などのメディアには様々な限界がある。メディアには、憲法問題以外にも山ほど扱うべき事柄があり、どうしてもテレビでは伝えられない話がある。安直な改憲論議に踊らされるのではなく、憲法に対するリテラシーを高め、情報の取捨選択を読者自ら行えるようにならなければならない。憲法を身近に感じ、読者自ら考える機会を与える一冊。
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Posted by ブクログ
国際法とも照らし合わせ、憲法をわかり易く説明している。
法学者なので当たり前といえばそうなのだけど、感情論に流されることなく、いいか悪いかというわけでもなく、あくまで論理的整合性を追求する。
良書だと思います。
Posted by ブクログ
あとがきに
素朴な議論に飛びつかず、難しい問題を知恵を絞って考えることには価値があるし、広く深い検討をし、精密な法概念を積み重ねて結論を出すことは、とても楽しいことである。
本書では、立憲主義・権力分立・人権保障・平和主義・改正手続と、憲法のほぼ全体系を見渡しながら、このことを強調してきたつもりである。
というわけで、本書では、「分かりやすい」素朴な議論に飛びつくことの問題をしてきした。
とある。
分かりやすいスローガン、素朴な議論がいかに問題か、ということが繰り返し指摘されている。「分かりやすい議論」には、つい納得されがちだし、また自ら「分かりやすい理由」を見つけて分かったつもりになっていることもある。事に則して丁寧に考えることが大事だと思った。
「押し付け憲法論」についての議論で、背景に敗戦の屈辱の物語があることを指摘。『雨月物語』の『白峯』を引き、西行が「いかにせん」の気持ちは自らが乗り越えなくてはならないものだ、と諭したことを紹介する。
”スジが通らない議論は、スジが通らないと論難し、「押し付け憲法論」を突き放さなければならない。しかし、それだけではいけない。あなたなら、スジの通らない議論に拘ってしまう浅ましい気持ちを乗り越えることができるはずだ、と尊敬を示す。”として、「押し付け憲法論」者とのコミュニケーションを促している。
確かに、この「屈辱の物語」を克服しない限り、いかに論理的に説いても、繰り返し、手を変え品を変えて改憲論が起きてくるだろう。
随所の挿入される著者独特の、やや荒唐無稽なたとえは、いささか「やり過ぎ」感がある。たとえを使うことで、状況が鮮明になるところもあるが、概ね、無くても理解できる。