あらすじ
死んでしまった猫〈雲〉を愛惜する夢想的で自閉的な中年女性〈私〉、「猫の殺人」という童話を書く年老いた女流詩人G、そして優しくも威厳に満ちた猫たち――。悪意に満ちた外界に傷つけられる繊細な存在の交感を詩的散文に結晶させた、優雅で奇妙な連作小説集。「猫の殺人」「雲とトンガ」「赤い花を吐いた猫」「窓辺の雲」「小さな貴婦人」の5編を収める。表題作で芥川賞を受賞。
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Posted by ブクログ
芥川賞受賞作品。
当時読んだと思いますが再読。
愛猫の雲を見送ってから、似た感じのぬいぐるみに出会った作者。
趣味的にやっていた店のオーナーが留守の時に、手に入れる。
実は飾り物の非売品だったとわかるが、非売品というのは店主の父が母に送った思いである品ということで、これも縁と心地良く認めて貰える。
ところが、このぬいぐるみを「小さな貴婦人」と名付けて店に通っては眺めていた人がいた。
それも旧知の女性詩人で、ユニークな人だから、言うことがまた面白い。
間の悪い思いをする著者だが、店の人には黙って持っていてと言われる。
猫エッセイ風とも思える内容ですが、溺愛ぶりは前面には出てきません。
日常を細やかに描き、関わる人間の不思議なムードとひそやかなユーモアで読ませます。