あらすじ
1938年に沖縄に生まれ、幼い頃に本土に移住した著者は、ベトナム戦争の従軍カメラマンとして、沖縄の復帰と基地を取材した。以後、沖縄戦を経験しなかったことに「後ろめたさ」を抱きながら、沖縄について考え続け、撮り続けてきた著者が、70年の歴史を、戦争と基地を軸に描き出す。(カラー写真多数)
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
戦後70年に発行された本書を、戦後80年のいま読みました。
著者はベトナム戦争の報道などで知られる沖縄出身の戦場カメラマン。戦中から2015年までの沖縄を多くのインタビュー等を通して描く。南洋群島や沖縄戦で、集団自決させられ、また我が子を殺さなければならなった非戦闘員の市民。捕虜などになり運良く生き残った人々から発せられる言葉には胸を引き裂かれる思いがする。軍隊は市民を守らないし、戦争は非戦闘員であっても容赦ありません。
復帰後も米軍基地の負担に喘ぎ、米兵に人権を蹂躙されてもなお、殺されてもなお、日本政府に顧みられることのない沖縄の人々。選挙や投票で何回も何回も県民の意思を表明しても、無視し続ける日本政府。そこには、琉球処分時と同じ、差別の構造を見ます。
沖縄戦、占領時代、復帰、県民投票、オスプレイ配備・・・様々な場面での県民の想いを、思い知ります。
戦後70年から10年経った今、状況は改善されることはなく、「粛々」と辺野古の海は埋め立てられている事を思うと胸が痛みます。著者はあとがきでこう書いています。「私は「粛々」という言葉が大嫌いになりました。政府の「粛々」という言葉には、民意には耳を傾けないという姿勢を感じます」