あらすじ
昭和の終わり。田舎町に住む9才の少年・春人には、6つ年上の兄・秋介がいる。秋介は学校でケンカの絶えない問題児で、家の中は、兄を叱る母の声が絶えない…。春人の“家族”の物語、はじまりはじまり!
【収録エピソード】第1話/春人と秋介(前編)、第2話/春人と秋介(後編)、第3話/青山とし子 第4話/家出 第5話/すべての夜 第6話/6年前
家庭は子どもにとって最小単位の社会である。その社会が荒れ果てていたら、どうすればいいのだろう。子どもにできることは何もなく、ただ環境に順応していくしかない。たとえ、その環境が異常だったとしても。
兄は不良で、母はどこかずれていて、自分は不出来。そして、家はプレハブ。極貧家庭で育ち、兄と母に振り回され、だんだんと変調をきたす春人。早く兄と母から逃げ出したくて、大人になることを望んでも、9歳の春人にはまだ長い道のりが必要だった。
《ほぼほぼ実話》と書いてある通り物語は淡々と進み、誇張表現を選ばない。同作者の『100万円の女たち』や『俺はまだ本気出してないだけ』と同様に、悲劇を悲劇として消化せず、一つの出来事として記述する。特に今作はその表現が光り、自分1人ではどうにもならない不条理に対して麻痺し始める春人の感覚とリンクする。セリフにも絵にも何も無駄がないことで漂う冷たい温度感は、彼の家族ないしは社会への不信感だろう。彼にしか描けない、強い作品だ。
感情タグBEST3
血がつながってないとダメなの?
家族に血のつながりは関係ないと思いながら読んでみました。シングルマザーで2人の子連れで子供と血がつながってないという状況。
兄がかなりグレてて母親と弟に迷惑をかけてるのが見てて辛いです。
15才ということで、体は大きくて暴力的でわがままで周りと比べて不満ばかりで感謝もない。子供はこんなもんだろうと思いながらもかなり理不尽。
けど、母親に暴力を振るわないのは一応わきまえてる部分もあるのかと思う。
母親からは頑張って子供を育てようという覚悟が伺える。離婚して子供を育てるために働いて、長男の酷い対応にも全くめげない。そんな自分の選択に対して後悔を微塵も見せない強い母親。
原作者?のかなり大変な子供時代、これからどうなるのか気にはなるかな。
Posted by ブクログ
離婚したシングルマザーと相手方の連れ子(中学生と小学生の男子兄弟)の物語。貧困のため、母親は朝から深夜まで働きづめ。中学生の兄は荒れ放題で、自身の弟にも容赦なく暴力をふるう。弟はそんな兄におびえながらも、一方でしたっているぶぶんもある。物語が進んでいくにつれ、3人それぞれの闇が少しずつ明らかになっていく。読んでいてつらくなる作品だが、一度読み始めたら止まらない。絵がシンプルなところが、悲惨なストーリーをより際立たせていると思う。
なお、単行本の3巻の予告で、本作が「ほぼほぼ実話」であることを知った。1~2巻ではそんなことは書いてなかったので、完全フィクションかと思ってただけに、大衝撃。とすると、小学生の弟である春人が作者本人か?
また、本作には著者の別作品で映画化もされた「俺はまだ本気出してないだけ」の主人公をほうふつさせる人も登場。
Posted by ブクログ
舞台設定と登場人物の背景がどうしようもなく暗くて辛いはずなのに、読んで酷くしんどくならないのは、あっさりとした作画と「それでも健気に生きている春人の姿」のおかげでしょうか。
うーんやっぱりしんどいです。
不良の兄にもしっかりぶつかっていく母の姿、弟想いを不器用にのぞかせる秋介の姿にじんわり温かくなる。
Posted by ブクログ
①②~刊行中。
兄弟の家の隣人として、前作シリーズ『俺はまだ本気だしてないだけ』の静男が出てくる。
一巻は貧乏も手伝いセンスのない母親と喧嘩三昧で乱暴な兄(心根は弟思い)、環境に板挟みの弟(主人公)とその周囲の人たちの話。ここまでが本題の基礎なんだと思います。
二巻からはその生活が一層に荒み、少しずつ状況の深刻さが増す。静男が前作シリーズに至るまでを、隣人の母と兄弟を中心にして描かれている。