あらすじ
七月、咲留間島。東京のはるか南に位置するその島で、俺は絵を描いていた。もしこの夏の間に、画家として納得できる作品を描けなければ、その時は筆を折り、この島に骨を埋めようと覚悟して。 そんなある日、俺は織川志穂と名乗る女性と出会う。穏やかで可憐な彼女は、幽霊が見えるのだと言った。 その真偽はわからないまま、しかし俺は自然豊かなその島で彼女と時間を共有する。 蓮池の女霊、ハマユリに見える少女の呪い。そして、消えた彼女の父親。 俺はそうした謎に触れるうち、彼女が何かを隠していることに気付いてしまい――。
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Posted by ブクログ
三部作からなる。
公一郎と志穂、志穂の妹紫杏、商店の店主。
これだけが登場人物。絡んでくる人たち。
一章は公一郎と志穂のお話。
主人公の森公一郎。
彼が訪れている、伊豆諸島の一つ咲留間島という場所が舞台。
そこで君一郎は画家として絵を森の中で描いている。
出会ったのは織川志穂と出会う。
彼女は公一郎が絵を描いている近くに住んでいるという。
志穂は『幽霊、見えますよ』と。
そして、蓮の花の池の幽霊の話を中心に話が進む。
謎解きは公一郎。幽霊は志穂のひいおばあさん。
台風の日に現れるという女性は蓮の花を思い、危険を顧みずに自ら湖に現れ、蓮の花を間引きしていた。
絵が完成しなければ画家を諦めるつもりの公一郎。
志穂は『必ず完成する』と言い放つ。
何かを隠している志穂。
隠し事をしている事に気づいてしまった公一郎。
二章は志穂の妹紫杏が公一郎と絡む。
夏休みの宿題をするために島に来た中二の紫杏。
ハキハキした紫杏が『お姉ちゃんの秘密を一つ教えてあげる』という言葉に釣られて、絵の先生をする事に。
何かを隠していると確信している公一郎はその提案に乗る。
公一郎は、紫杏の色覚異常に気づく。
そしてそれでも尚『生きている絵を描け』と。
色を認識できない紫杏は、色=チューブから出した色。
それでも絵を描くのに色を絞って書かせて。
彼女に自信を持って絵を描く事を勧める。
教えてもらった秘密は志穂のスリーサイズ。
公一郎は言う。他の事は『自分で確かめる』と。
三章で再度公一郎と志穂の二人。
志穂が精神病院に入院している事、
志穂の父親が今現在此処にいない事。
公一郎の絵を描いているすぐ近くに骨が埋まってる事。
それを聞こうとアレコレ物的証拠も見つけ。
島の商店にアイスとドリンクを買いにいく。
が、店主は寝ていて一筆書いて店を後にする公一郎。
これが物語をひっくり返す。
森は生きている。
そう言って公一郎は筆を置く。出来上がった絵。
それを見て泣く志穂。
秘密を確信するために、まずは自分の手を触ってくれという志穂。
が。
触れない。触れられない公一郎。
そこにやってきたのは商店の店主。
公一郎の事が全く目に入らないで話は進む。
そこで公一郎が気付く。
自分が幽霊なんだと…一年前に自殺したのだと。
志穂に公一郎は幽霊とはなんだと問いかける。
自分が死んだ事を認識出来ないで、同じような日々を送る事だと。
それをキチンと認識させてあげたいと思っている志穂。
エピローグで志穂と紫杏が電話で話す。
紫杏の『今回は長かった』と言うセリフでかなり長い事公一郎と付き合っていた事を伺わせる。
読み終わって思った事は『胡蝶の夢』と似てるなぁって。
一気にひっくり返されたのは小気味良い。
あれだけどんでん返しされたのも久々でした。
登場人物を絞ってあって、物語がスマートにまとまっている感じがする。
しかも伏線が商店店主のお婆さんってトコロがイイ。
『いかにも田舎』って雰囲気で。
夢と現実はこんなにも曖昧に成り得るのだろうな…
関係ないが、遺体発見日が兄貴の誕生日だったのに思わず笑った。
シリアス場面なのに…。