あらすじ
ホームレスのありのままの姿。社会からドロップアウトした人だけでなく、精神病疾患や障がいを持つ方たちにも焦点をあてる。うつ病、DV、派遣切り、認知症……。20年以上、ホームレス支援を続ける精神科医が現場の現実を活写する。
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Posted by ブクログ
【概要】
日本では調査上のホームレス数が減っているが、「安心していられる場を失った人」はずっと多い。公園のベンチは撤去され、駅地下では警備員が二時間ごとに巡回している。マイノリティの居場所を奪い、箱に閉じ込めようとする社会で、彼らは漂流している。著者水川すいめいのフィルターをかけたホームレスの実態が述べられている。
【感想】
第一に、ホームレスやアルコール依存症、統合失調症などになるのは本人の能力のなさや努力の足りなさではないと私も思う。しかしこうした考えをもっているのもマイノリティだろう。多くは自己責任論で彼らを責めたて、個人ではなく病人や障害者という箱に押し込め、環境との相互作用を考慮することなく彼ら自身を変えるか排除するかで必死だ。問題は彼ら自身にあるのではないから、そんなことをしても社会復帰はしないのに。(社会復帰すら望んでいないのかもしれないがそれは経済的観点から見ても社会にとって大損失である)
この本を読んで、彼らが社会の一員として居心地良く生きるためには、温かいコミュニケーションが重要だと思った。相手に興味をもち、彼らの能力より想いに耳を傾け、それに受容的な言葉と態度で接してゆく。信頼関係を築き、その輪を立場や生い立ちによらず広げてゆく。ソーシャルワーカーを目指すものとして、そんなソーシャルワークを実践していきたいと強く思った。
また、『私たちが「結婚するときはダイアモンドを贈れたらいい」と思っていた程度のことで、戦争が起きるのである』という言葉は非常にショッキングだった。
自分は何も知らない。私の日常が世界の誰かを死なせているかもしれないことを何も知らない。
人と人を繋げるソーシャルワーカーになるのなら、人がいる現場にもっと赴いて学ばなければならないと感じた。
「平等」の解釈は難しいものだが、同質であることを強要せず、異質さを許しあい活かし合う社会になってほしい。
【メモ】
・「平等だということが差別になることもある」
・困窮化にある家族を救いたくないと思う家族もいる、世間からのスティグマが気になる「恥ずかしい」
・知的障害があるのに、環境に恵まれず診断を受けることがなく、本人の性格や努力不足の問題だと周囲に決めつけられたりして、どうにもならないと自信で感じている人たちは、人口の1%前後いる
→自分を責めないでほしい、ありのままの自分を好きになってほしい
・経済合理性の名のもとに、確証バイアスが生まれている。効率的なコマにならない人を社会の中にある箱に隔離し、自分らしく自分のペースで生きることを拒否した社会、日本
・医療は脳へ治療はできたとしてもこころを治すことはできない
→温かい人との繋がり、言葉、態度
・認知症対策
行きたい場所で最期を迎えることができる体制
・アルコール依存症対策
・ハウジングファースト=まずは、住まいを=本人がどこに住みたいかについて、周囲は本人の能力をジャッジしない
認知症やアルコール依存症になっても自分は自分であり、何も変わらない。それなのにいきなり知らない人と、知らない街で暮らすことを強要される
だから、失踪する人が絶えない
・最も弱い立場を体験した人々は、人がどうして苦しいのかをよく知っていて、どうしたら生きられるのかをよく考えてきた人たちである。これからの希望であ
る。
・こちらが言いたいことを伝えるのではなく、相手が何を考えているのかを聴く。相手に興味をもつ