あらすじ
動物と植物の未分化な葉状生物フィトが繁茂する無名の惑星。この無害な土着生命を全滅させる惑星改造計画の一員クレイグに対し、研究者ミドリはフィトの異質な知性の驚異を説く。だが、フィトを駆除すべく禁断の遺伝子組み換え植物が導入され……テラフォーミングにまつわる倫理的問題に切りこんだ、先駆者にして不朽の宇宙生命SF。第46回星雲賞海外短編部門候補作。(本書は中村融編訳『黒い破壊者 宇宙生命SF傑作選』の収録作を単体で電子書籍化したものです)
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Posted by ブクログ
早歩きでズンズン先に進んでいくのだが、此方を気にして時折ちらっと振り返ってくれるような距離感のアンソロジー。ただし、手慣れたエスコートは期待しないように。
古い作品としては読みやすいほうだと思うが、独特の単語や言い回し、説明の多さ、一文の長さなど、SF古典らしい取っ付きにくさはある。文体も若干古めなので、最近の小説に慣れていると古典らしい硬さや飲み込みにくさを感じるかもしれない。
生態学がテーマのようで、タイトルにある『宇宙生命SF傑作選』という呼び名がしっくりくる。
ニュアンスの違いだが、私には、異星人との交流というより、他の惑星の生態系や環境の中に地球人という外来種が入っていく話にも感じられた。
言語体系や意思表示の仕方で知性の有無や自他の優劣を判断しがちなのは人間の悪い癖かもなあ、と思う。ただ、その中で、未知のものを理解しようと努力して別の道を歩む人もいるし、色んな方向から物事を見るというのは、生き残る上で大切なことなのかもしれない。相手を理解する努力をする、観察力や想像力を持つ、というのは、生物と関わる上では重要だろう。勿論、地球でも。
異文化・異種族との関わり方、アプローチの仕方が人それぞれなら、文章の書き方も人それぞれだ。
『狩人よ、故郷に帰れ』が凄く好みだったこと、『海への贈り物』と『黒い破壊者』がそれぞれ方向性の違う洋画みたいで面白かったので評価を高くしたが、人によっては退屈かもしれない。
因みに自分は、話ごとに読む速度が不規則になり、ページがなかなか進まず、読み終えるのに結構苦労した。SFを読むのはツラい、と嘆く人の気持ちがよく分かる……。それでも面白い、興味深いと思って読み終えることが出来るのは、ひとえに作家の力量だろう。
ストーリーがはっきりしているものもあるので、辛いと思いながら読むくらいなら、ある程度さらっと読んでもいいかもしれない。途中から「なんか面白くなってきやがったぜ……!」となったら、そこからしっかり読めば良いのだし。
『狩人よ、故郷に帰れ』リチャード・マッケナ
凄く好みだった。人間がテラフォーミングのために動植物未分化の在来生物、フィトを絶滅させようと躍起になる話。なんかもう、この時点で既に結末が見えている。
フィトやザナシスは私の考える『植物』という存在に限りなく近く、予想外に一気読みした。植物ってあまりに強者だよなあ……。生命力の怪物だね。
何気に二つの種族がフィトによって一つになるのも見どころ。
武器で相手を制圧できると思っている人間に、一方的に殺意を向けられるフィトが可哀想だと思っていたが、それは随分とおこがましい考えだったと思い知らされた。同程度の相手ならともかく、一段階上の存在とでは、争いにすらならない。
人間が見ている以上に、動物や植物は人間を観察している。そして、人というものは、破滅が待っていると分かっていてもそれを認められず、意地になってそこへ向かって直進してしまうものだ。そして、不思議なことに、誰もそれを止められない。
『黒い破壊者』A・E・ヴァン・ヴォークト
タイトルから受ける印象と冒頭、共にラヴクラフトっぽさを醸し出している。
とある惑星で、ケアル、という人間曰く「子猫ちゃん」に研究者達が襲われる話。洋画っぽさもあり、動きも多いので、結構楽しく読めた。王道のSFかも。
地の文さんが神の力でどちらの考えも見せてくれるので、読者という客観的な立場で物語を追える。ただ、どちらの考えも分かるからこそ読後感はやるせない。
ケアルは飢えて獰猛だし、あんまり先のことをちゃんと考えてないのだが、なんだか動物っぽくて可愛い。人間が彼を『子猫』と呼ぶんだけど、そこには未発達の存在みたいな意味もあったのかな。ラストは景色がはっきりと見えて、ちょっと寂しくなった。確かに子猫ちゃんだ……。
Posted by ブクログ
いいですねー!読み応え十分、SFならではのエレガントな短編集です。
地球人類以外の宇宙生物・宇宙生命をメインテーマに据えた日本オリジナルの短編集。雑誌掲載後に単行本されなかった幻の作品を敢えて取り上げるとの方針の下、なかなかお目にかかれない珍品が粒ぞろい。
いずれも1960~70年代のかなり古い作品ばかりです。が、21世紀の今読んでも、ほとんど古びていない確固たる世界観と生態系の構築。鴨の個人的な感触ですが、SFの本質とは「変容を描く文学」だと思っています。凡百の地球人類には想像もできないような、異質で、でもその存在を否定することはできないような世界の構築。そうした題材を描き出すキャンバスとして、生態系の構築はうってつけの題材なんですね。
SF者なら知らぬものはいないであろう、ヴァン・ヴォークトが生み出した怪物「ケアル」はまぁ別格としても、鴨的にはジャック・ヴァンスの構築した世界観のさすがの貫禄が印象的。徹底して地球人類の目線で淡々と描写しながらも、異星生物の未来への挑戦を詩情豊かに描き出したこの美しさ、並行して成立するSFサスペンスとしての完成度。華やかさやキャッチーさからは無縁ながらも、渋いカッコ良さに痺れましたね!これだから古いSF読みはやめられませんよ!
他の作品も読んで損はない佳作揃いですので、SF好きな方はぜひチャレンジして欲しいですねー。
Posted by ブクログ
the black destroyer, like a Panther and the other SF creature. l want to make an another black destroyers long story .
Posted by ブクログ
中村融編「宇宙生命SF傑作選」は、以下6篇収録。
・リチャード・マッケナ「狩人よ、故郷に帰れ」
・ジェイムズ・H・シュミッツ「おじいちゃん」
・ポール・アンダースン「キリエ」
・ロバート・F・ヤング「妖精の棲む樹」
・ジャック・ヴァンス「海への贈り物」
・A・E・ヴァン・ヴォークト「黒い破壊者」
宇宙生命を取り扱う作品ときくと、どうしても映画「エイリアン」のように、宇宙に進出した人類とグロテスクな容姿をした生命体との手に汗握る攻防…という作品が連想されます。しかし、本書でそのような作品はヴォークトの「黒い破壊者」のみ。それ以外は、編者があとがきで言及するように生態学(エコロジー)に焦点をあてた作品です。
そんなエコロジー的SF作品の中でも、とりわけ面白かったのは、ジャック・ヴァンスの「海への贈り物」。
地球から遠く離れたとある惑星。海で満たされたこの惑星を調査するクルー一行。ある日、突然、仲間のひとりが調査用のいかだから姿を消した…
地球外の知的生命体とのコンタクトを扱った作品を読むのは、本書が初めてというわけではありませんが、より緻密にコンタクトの過程を描いた作品として、本作は読み応え十分。潜在的な恐怖を感じる海を舞台にしたことも、不穏な空気を感じられて、ほどよい緊張を感じつつ読み進めることができました。