あらすじ
仕事も恋も「迷子」の梓が、同じ名前の特急列車で旅に出る! 空回りしがちな仕事と、望まない結婚を迫る恋人を置いて、介護福祉士の梓(あずさ)は、新宿駅から特急あずさに乗り込んだ。上諏訪駅で下車し、諏訪湖畔で途方に暮れる梓に声をかけたのは、陶芸家の桂だった。泊まるところのない梓は、桂に連れられ長野・高遠町の民宿「すやすや」へ。雄大な自然とのんびり暮らす人々に囲まれて過ごし、心は揺れ動くが……。高遠と東京を行き来しながら、新しい生き方を見つけていく女性の姿をいきいきと描く。新しい人生に出会えるハッピーストーリー。『迷子の大人』として刊行された単行本に、掌編「花の咲くころ」を加えたオリジナル版。
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Posted by ブクログ
こういう文体の小説を読むのが久しく、新鮮だった
解説にあるように、確かに「それどうよ?」と思う身勝手な言動や行動が主人公に見受けられるけど、人間パニックになったり冷静な判断ができない時ってそうなるものよね、と主人公に感情移入できたのは、心理描写がリアルだったから。
幸せな展開に胸がスキっとなった。
旅に消極的なわたしが、ひとり旅したい(あわよくば幸せな展開に…)と思った作品。
たまにはこういう、全てまるっとうまく行くものが読みたくなるんです。
Posted by ブクログ
単行本を文庫化する時全く違うタイトルに変えられるのが好きではない。この本も単行本の時は「迷子の大人」って全然ちゃうやないか!…と本を探す時は思ったのだが。
改題は正解だったと思う。確かに「迷子の大人」が主人公なんだけど、物語の雰囲気は実に「恋するあずさ号」なのである、しかもこのあずさ号特急なのかどうか分からんくらい、いらんとこに停車し、寄り道し、時には事故に会い…文庫化にあたって書き加えられた最終章によると、どうやら終着駅にはたどりついたようだが、途中迷走しまくる(ということは単行本当時のタイトルでもエエのか?)
解説にもあったが、主人公梓の行動は戴けない部分も多く、実在したらこういうヤツは嫌いなんだが、この小説は主人公の魅力で読ませる本ではない。かといって主人公の思い人もムッサイケてるわけでもなく…。実はこの小説、脇を固める人々がとてもいいのである。とりわけ年上と年下の女友達がすごくいい。彼女らがいるから読ませる小説。
そして、小説の大切な舞台となる高遠町がこれまたなんともいいのである。南アルプス登山の際にほんのちょっとだけ立ち寄ったことがあるが、次はゆっくり滞在してみたいと思わせるところ。桜の季節が有名みたいだが、出来れば冬に行ってみたいなぁ。