【感想・ネタバレ】夜ごとの揺り籠、舟、あるいは戦場のレビュー

あらすじ

森瑤子復刊第二弾は大人の官能を描く衝撃作。

小説家の私は、末娘の夜尿症などの問題行動を機に、半年ほどセラピストとの対話を続けていた。「母がしてくれなかったことを、自分の子供たちにしてあげよう」。そう思いながら子育てをしてきたがうまくいかず、家族との不協和音に自身の精神状態も追い詰められていた。夫との関係もずいぶん前から冷え切っていた私は、夫婦の再和合を目的に、南国の地へ旅に出かけるが、その旅先で夫と「情事」や女性の「性」について問答してしまう。セラピストとの会話を反芻し、現地の男とのエロティックな対話を経て、私は家庭内の問題や自身が抱える心の暗闇の原因に、幼少期の体験があったと気づき……。妻、母、そしてひとりの女として「性」と向き合い、自己を解放していく姿を大胆に描く。また1980年代当時にあたり前として認識されていた「あるべき母親の姿」を、真っ向から破壊した本書。既成の価値観にとらわれず、女の本能に切り込んだ革新的小説!

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Posted by ブクログ

このタイトル、何て秀逸なのだろう。
読み終えた後このタイトルをしみじみと見つめて、センスの高さを感じた。

主人公は三人の娘を持つ小説家。末娘の問題行動がきっかけでセラピストによるカウンセリングを受け始めるが、そうなった原因は、彼女自身がいわゆる毒母に育てられたことにもあったということが分かる。
との関係も破綻しかけていたが、再和合を図るために旅に出かけた南国の地で、夫と激しく問答してしまう。
そして徐々に自らが抱える闇の根源に気づいていくが…。

経験したことのない何とも不思議な感覚。今現在の現実、セラピストとの対話、そして空想(主人公の心象風景?)が、何の説明もなく交錯しながら進んでいく、時間としてはたったの一日を描いている小説。
会話にかぎ括弧がついていなく、そして会話の合間に主人公の独白も混ざるから、どれが誰の台詞なのか、どれが主人公の独白なのか…柴門ふみさんの解説によると、男の人はとくに途中で挫折する人が多いらしい。それも肯ける。
でもはまる人は本当にはまると思う。私もその一人で、すごい世界を見てしまった、という気分になった。

主人公はどうしても抑えられない家族への嫌悪感を自覚していて、カウンセリングを受けているわりに非常に冷静で理知的だ。
これは著者の森瑤子さんの感覚も強いのかもしれないけれど、主人公は同じ女だけではなく男のことまでものすごく理解していて、男から見たらこういう女は脅威なのではないかと思う。賢すぎて。だからこそ作中の夫は主人公を見下げたり馬鹿にするような発言も多いのだと私は感じた。怖いからそうするしかないのだと。

妻、母、そして一人の女として「性」と向き合い、はっきり自分にとっての害だと自覚していた母親について考えることを通して、自分の中では存在感が薄かった父親についても考えを深めていく。
30年以上前に執筆された小説が、毒親という言葉が浸透し始めた今にリンクしている不思議。先を見通す、ってこういうことかと。

森瑤子さんに憧れる女流作家が多くいる、という理由が分かった。
40歳を手前にして主婦から売れっ子作家へ転身を遂げた女性の、普通というものを知っている感覚。の、凄まじさ。

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2015年10月28日

Posted by ブクログ

著者自身を思わせる女性の主人公が、南の島で夫との口論をおこなうシーンと、著者が心理療法家のもとを訪れ、幼いころからのトラウマに向きあうシーンが織りあわされながら、物語は進んでいきます。

女性である著者が、家庭を顧みず小説を執筆することに不満をいだいている夫との口論は、二人のあいだのセックスの問題にもその影を落としていることが明らかになります。一方、心理療法を通じて著者はけっして彼女を愛することのなかった母親によって心のなかに埋め込まれた問題に直面することになり、激しい葛藤をくり返しながらも、すこしずつ内面の闇に光がもたらされていきます。

会話文に引用符は用いられず、地の文のなかにそのまま取り入れられているために、主人公の内なる視点から出来事の推移が見られるような独特の臨場感があります。その一方で、主人公や他の登場人物たちの名前などは明かされておらず、舞台となる南の島もどこなのか言及されていないため、どこか現実から遊離したような印象も併せもっています。夢と現実の両面にわたる主人公の深刻な心理的葛藤が、彼女自身の置かれている個別的な条件を越えて普遍性をもつように感じられます。

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2019年01月19日

Posted by ブクログ

夫との関係。娘、実母との関係。破綻をきたした女性が、夫と旅に出る。

セラピストとの会話を回想しながら。現在、過去、空想、現実が入り乱れ、インスピレーションのままに吐き出されているような、そんな文章。

きっとノンフィクション部分も多いのだろうと思ってしまう生々しさ。
筆者の、そして我が身の体験であるように感じられる文章力はすごい。

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2017年06月21日

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