【感想・ネタバレ】歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子 闘病の十年―のレビュー

あらすじ

その時、夫は妻を抱きしめるしかなかった――歌人永田和宏の妻であり、戦後を代表する女流歌人・河野裕子が、突然、乳がんの宣告を受けた。闘病生活を家族で支え合い、恢復に向いつつも、妻は過剰な服薬のため精神的に不安定になってゆく。凄絶な日々に懊悩し葛藤する夫。そして、がんの再発……。発病から最期の日まで、限りある命と向き合いながら歌を詠み続けた夫婦の愛の物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「歌に私はなくだらう」は、歌人河野裕子がなくなってまだ生々しい1年後に夫永田和宏によって書かれたもので、哀切きわまりない。同時にすさまじいというか凄い内容です。
癌になってから、河野は 薬の影響もあったのか、精神の変調をきたし、「なぜ自分だけがこんな目に合う」と家族、特にご主人を詰問し、えんえんとなじることがあったそうで、それが続くとご主人も逃げ出したくなる、それがまたよけい河野を傷つける、特に乳がんということで妻として女性として夫に捨てられるのではないかという恐れがあったかもしれなくて、嫉妬が病的になり、ついには娘にまでのろわしい言葉をはくようになったそうです。連日の妻のののしり、ぶちまけられる不満に耐えきれなくなった永田が 椅子を振り上げて窓ガラスを割る、娘が、父永田が迢空賞受賞のための外出先のエレベーターの中で狂ったような母親に「張りて」をかませるという状態。家出騒動もあったそうで、 およそ闘病記らしくない闘病記かもしれません。しかし、そういう時期を経て、癌の再発後、河野は精神の高みに達したかのように違う面を歌にみせ始め、
みほとけよ 祈らせ給へあまりにも短きこの世を 過ぎゆくわれに
手をのべて あなたとあなたに触れたきに 息が足りない この世の息が

という歌を口述筆記で残しています。
亡くなる前日には、高熱の中で、
「今晩、ごはんは? 何食べるの?」と 夫に聞いています。
永田が
「魚の味噌漬け いただいたのがあるし、きゅうりも漬けようか」
と答えると、
「それでいいね」
と安心したようだったそうです。亡くなる前日も夫の食事を気にするなんて、と違和感を覚える方もおられるでしょう。
歌人であり、妻であり、夫に対して母親的側面もあった昭和の女性。その恋人であり夫だった人との激しい関係に圧倒されます。

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2023年01月16日

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