あらすじ
不可解に思える出来事も、巨大なうねりの表層にすぎない。深層はインテリジェンスという叡智により立ち現れるのだ。日本が生き残るための戦略とは? 我々は反知性主義にどう抗うべきか? 「イスラム国」の台頭、中ロの新・帝国主義路線、マレーシア機撃墜、ウクライナ併合、ガザ地区砲撃、集団的自衛権論争など、最新情勢のつぶさな分析から鮮やかに「解」が導き出されていく。最強の外交的知性が贈る現代人必読の書。
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Posted by ブクログ
インテリジェンスに通暁しているお二方による、最近の国際情勢や政治に対する現状分析と今後の見通しを述べた対談式の書です。
お二人の書は、毎年一冊くらいで新書化されており、いつも楽しみにしています。
一般的なメディアからは味わうことが出来ない、様々な情報を統合しての見解は、たいへん読み応えがあり、知的興奮を味わうことができます。
今回は、一国の代表者として、アメリカ オバマ大統領と、安倍総理に対する、バックグラウンドから観た、今の政策運営の考察が、たいへん勉強になりました。
我が国では、政治やビジネスの場において、インテリジェンスリテラシーに通じる人材の育成・輩出が、重要だと感じた次第です。
Posted by ブクログ
佐藤優さんと手嶋龍一さんの“世界を読み解く対談集”、第3弾。
相変わらずに2匹の獣がじゃれ合うかのような面白さです。
題材は、ウクライナ、イスラム国、東アジア、集団的自衛権、
そしてまっとうな意味での“愛国心”、な感じで。
興味深かったのは、いわゆる“公開情報”を分析するだけで、
国家が生き抜くための“インテリジェンス”を抽出できるとの点。
そして、右派にも左派にもそれぞれに批判を加えながら、
見失ってはいけないのは愛国心であろうとは、なるほどと。
いずれにせよ、ブレない“軸”を作っていかないとなぁ、と。
ん、「イスラム国」の傍若無人さから始まった今年、
この1年を生き抜くためのヒントがちりばめられているのかな、なんて。
Posted by ブクログ
佐藤優と池上彰の「新・戦争論」の発売が2014.11で、その1ケ月後の2014.12にこの本が発売されている。
当然テーマとしては重複しているものが多いが、内容は前者もなかなか面白かったが、本書の方がさらに面白い。
これは池上彰と手嶋龍一という対談相手の違いから来るのは当然だが、佐藤優は相手の議論の深さに合わせて、発言内容の深さを変えている。
つまり池上彰よりは、手嶋龍一の方が掘り下げ方が深く、それに相応して佐藤優がより切り込んだ意見を出している。
幾つかのポイントを見ると、
【ウクライナ】
・G7がロシアとの着地点を見出すことは、安易な妥協だとして批判があるだろうが、モスクワを北京・テヘラン枢軸側へ追いやって良いのか。プーチンはウクライナをNATOに渡す事は容認しない。(佐藤)
・第2次大戦で、赤軍がドイツを占領するや、真っ先に探したのがロケットの開発技術者です。その研究・開発・生産の拠点となったのがウクライナ。しかもその拠点は、親ロシア派とウクライナ軍が戦闘を繰り広げている東部と南部に集中している。(手嶋)
・元外務官僚の宮家邦彦氏が「米国の知らないところで、将来独露間にクリミア併合を黙認しウクライナを緩衝国家とする密約が結ばれる可能性はないだろうか・・・戦前の独ソ不可侵条約と同じことが再び起こらないとも限らない」と産経新聞に書いているが、これはヨーロッパの然るべき筋が安倍氏に近い宮家氏に伝えた「内緒話」だったと思います。(佐藤)
・・・・この話を読んでアメリカのNSAがドイツのメルケル首相の電話盗聴をしていた事に合点がいきました。
【イスラム国】
・アメリカに限らず、政治指導者のもとには政治決断の選択肢が下から上がってきます。
この場合もきっと①空爆の敢行、②軍事顧問団の派遣、③一切の軍事的関与を見送る。凡庸な指導者ほど②を選ぶ。オバマは②を選択し、その後に①にシフト。オバマはぶれている。(佐藤)
・政治指導者が避けなければならない最たるもの、それが戦力の逐次投入です。ベトナム戦争の泥沼も、最初は軍事顧問団の逐次投入から始まった。(手嶋)
・そうして中途半端なオバマの関与が、反米的なテロ集団である「イスラム国」のイラク浸透を助ける結果になった。「イスラム国」を無力化するためには米軍が地上戦に踏み切る必要があります。しかしオバマにその腹はない。事態が悪化すれば、いよいよオバマは「毒饅頭」に手を伸ばさざるをえないんです。つまり仇敵イランとの連携。(佐藤)
・アメリカの「力の不行使」は「超大国の終わり」の始まりです。そしてアメリカが日本の同盟国である以上、中東情勢を混迷に陥れるだけでなく、東アジアの安全保障にも影を落すことになる。(手嶋)
・アメリカがイランに助けを求め、その結果イランの核開発禁止の手を緩めれば、サウジアラビアをアメリカから離反させる。イランが核を保有する事態になれば、インテリジェンス業界では誰もが存在を疑わない「(パキスタンの核をサウジに持ち込む)パキスタン・サウジアラビア秘密協定」がいよいよ発動される。(佐藤)
・イスラエルも黙っていない(手嶋)
【その他】
キシンジャーの著書「外交」の話が「尖閣を防衛したがらないオバマ」に繋がる事や、番外編で、「外務省から休職を命じられた時にロシア、イスラエル、韓国等の『その筋』」からうちで働かないか」と誘いを受けた事を手嶋が佐藤から聞き出す・・・等々次々と面白い話題が出て来ます。
Posted by ブクログ
インテリジェンスなんてあまりにも自分の生活に関係ない主題なので、特に感想もなにもないのだが、外交とはこう言う思想でやっていくのかと感心はした。読み物としては面白い。
Posted by ブクログ
佐藤さんは反知性主義に関しての発言も、本もあったので、第五章を期待して読んだ。
その点では、あれ?と思う。
あまり正面から反知性主義を論じていないから。
ウクライナやモンゴルなどの「柔らかい脇腹」とされる地域から、核兵器をはじめとする軍事技術が拡散していってしまうこと、小保方さんのような人が生物兵器の開発にリクルートされる可能性があること、もはや普遍宗教になった創価学会が集団的自衛権の議論にどんな役割を果たしたか―という話にハッとさせられた。
イスラム国については、いろいろ本を読んではみるものの、いまだによくつかめていない。
どのような本から読んでいくといいんだろう?
Posted by ブクログ
この対談シリーズも3冊目。
今回は、ウクライナ、イスラム国、東アジア(北朝鮮、中国等)関連、集団自衛権、反知性主義のレジスタンスの全5章。
対談という形が読みやすく、二人の経歴からインテリジェンスとして読み解くことの楽しさが伝わる本だった。
Posted by ブクログ
インテリジェンスに必要な事は、愛国心だというのが佐藤優の意見だ。ハッとさせられる。以前読んだ藤原正彦の、論理は情緒を起点に展開するという文脈を思い出す。大事な事だ。論理にしても、技法にしても、それを振るうのは、自らの理念だ。その理念を形成するのが人格、好き嫌い、つまり、愛国心が重要だ。これは企業人にも通ずる考え方であり、意思決定の依拠する理念が、愛社精神に無く、個人利害の場合、あるいは、背任行為を助長しかねない。または、他社を愛するならば、決断は変わるだろう。揺らいではいけない部分。それこそが愛国心なのだろう。
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手嶋氏と佐藤氏によるインテリジェンス対談第三弾。ウクライナ問題、イスラム国、集団自衛権等世界、日本の最新情勢の真相が分かり易く解き明かされている。
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物事には必ず裏がある。表に出ている情報だけを鵜呑みにして、難しい事を考えずにのほほんと過ごす事も可能だが、所詮どこにでもある情報に大した価値はない。その価値を議論していても単なる飲み屋で繰り広げられるような薄っぺらい時間潰しのネタにしかならない。知ってるものが知らなかったかの様に(もしくは本当に知らない)振る舞う人に偉そうに話している内容は、聴きたくもないのに耳に勝手に入ってきてしまう。そんなこと知ってるだろうし、多分聞かされた方も明日の朝には何も覚えてないんだろうなと頭の中で一人突っ込んでると、自分の参加する飲み会も上の空、何かつまらなそうだねとツッコミを受けてしまう。私の悪い癖だ。
情報は様々なソースから拾ってくる事ができる。週刊誌や会話やニュースや、会社の会議に出れば、人が集めて整理して分析した結果になって、多少面倒なプロセスを省略して良情報が入ってくる事もある。そうした情報を各方面から集め、それを何に使うか、目的に照らし合わせ、判断したり決断したりする。情報が無いこと、不足することは判断や決断に重大なミスを及ぼす事もある。会社の投資案件の判断ミスなら一企業の生存に関わる問題で済むだろうが(創業者の努力を無にしてはいけないとは思うが)、これが国家レベルの判断になってくると、国が潰れるわけにはいかないから、より多くの正確な情報が国家の舵取りに必要になることは言うまでも無い。
本書は日本のインテリジェンスを牽引する外務省出身の佐藤優氏と外交ジャーナリストの手嶋龍一氏の対談形式で進む。当時2014年は正にロシアがウクライナからクリミア半島を奪い取った年、そのロシアの戦略とウクライナについて、また最近は力を失い消滅に向かっているものの、当時アメリカが最大のテロ脅威として捉えていたイスラム国の問題、更には日本国憲法に絡む集団的自衛権の抱える課題など、どれも国としての重要な決断や判断が必要な題材を並べて議論する。
表のニュースだけを見ていれば結果だけが頭に入ってきて、明日どうなるか来年どうなるか予測もつかない。それが許されるのは長いものに巻かれて心地よく過ごせる人だけだ。大抵そうした人々も防衛予算確保のための増税には猛烈に反対するのだが、それすらもにわか仕込みのマスコミの受け売りをしているだけだ。そこに自分の考えは入ってるだろうか。無駄遣いを先に無くせというのは「無駄遣いの存在を知っていて、これまで指摘してきたのだろうか」。これは極端な話だが、何も知らない人はそうやってマスコミや大衆に踊らされて生きることになる。
私も楽に生きていたいタイプではある。だが、飲み屋でリラックスするために飲んでいたのに、そうして入ってくるどうでも良い会話を耳が勝手に拾ってしまうから、そこから猛烈な情報収集と自分で考えたくなる。この性格は中々疲れてくるし、万年頭痛を抱えている原因なのかもしれない。
兎に角こうした本を読んでいると、自分の知識の浅さにも今更ながら気づき、考えなければならないと身が引き締まる、そんなきっかけになる。