【感想・ネタバレ】明治横浜れとろ奇譚 堕落者たちと、ハリー彗星の夜のレビュー

あらすじ

三人の堕落者たちの優雅(?)な怪奇事件帳――時は明治末期、ハリー彗星騒動におののく横浜。役者の寅太郎、画家の谷、浪漫研究家の有坂は定職にもつかず周囲を呆れさせている「堕落者(=フリーター)」たち。「富国強兵」もなんのその、お国の役に立たない夢野望に邁進している三人だったが、行きがかり上首を突っ込んでしまったハリー彗星退治をきっかけに、横浜に蠢く面妖怪奇な陰謀に巻き込まれることに…!?

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Posted by ブクログ

ネタバレ

近代にも夢を志すフリーターはいたのだろうか?という質問を具現化したような作品。
明治末期、第一次世界大戦前の社会情勢を忠実に表現していると思う。

舞台は明治、1910年5月19日にハレー彗星の尾の中を地球が通過する噂が広まる横浜から始まる。
当時は彗星の正体は小型の天体であることは分かっていたが成分は不明で、尾には毒ガスが含まれているらしいという噂で「この世の終わりになる」のではという社会不安が広がっていた。
(2000年のノストラダムスの予言の噂話みたいw)

そんな中、前島寅太郎は、大勢にみられると緊張して演技できなくなるという致命的な欠点をもちつつ役者を目指し、東京から横浜まで身一つでやってきた。
そんな中で出会った同じ長屋の面子と共にハレー彗星をめぐる横浜の事件に巻き込まれる。

堕落者(命名:水谷巡査部長)の背景
西洋演劇役者を目指す前島(政治界で活躍する華族の年の離れた四男)
キュビズムに影響され画家を目指す谷(有名老舗呉服店の若旦那)
浪漫研究家を名乗る有坂(海軍大御所の三男で帝大卒)
フリーターだけどバッググラウンドがすごい。。。

無職になったばかりなのに、役者の仕事以外はやりたくない、でもどうしよう~彗星の毒ガス怖いとめそめそする主人公にイラつく水谷巡査の気持ちがちょっとわかる。
でもその夢に一途なところがかわいいかもと思わなくもない。

水谷巡査も融通が利かなさそうな堅物だけど、喫茶の女主人にしどろもどろするあたりがかわいい。

堕落者を保護する喫茶店の主、愛の正体はまったく不明だが、今後明らかになるのかなぁ。特に年齢が気になる(笑)

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2019年03月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

気弱なおぼっちゃんをとりまく変人たち、できのいい兄弟に甘やかされてうんざり、などよくある設定だけど芝居がうまいところが独特か。気楽に読める。

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2015年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

良くも悪くも素直な、まさしくキャラクター文芸です。
表紙や帯に書かれている「三人のフリーター」のキャラが際立っているし、それぞれ特徴が異なり、台詞も特に説明を要することなく誰がどのことばを発しているかわかるあたり、キャラクターの造形は魅力的。個人的には浪漫研究家の有坂さんがすごく好きです。若い子から大人まで楽しめそうな、わりと王道のお話。
ただ、ミステリとして読むのなら、内容・展開はわりとありきたりだと感じます。のっけの登場からこいつクソ怪しいな~~と思っていたらその通りの黒幕で、それが冒頭の良くも「悪くも」素直な話だと感じた理由です。もっとも、ミステリという枠組みで無かったら申し訳ないのですが……。予想や「こうなるだろう」という期待を裏切ったりはしないので、最後まで楽しく読める作品かと。
ただ、これは作者さんというより出版社サイドへの疑問なのですが……一度ルビを振った単語にまた何度もルビが振られていたり、わりと一般の小説にはルビなしで登場するような単語にもルビが振られていたりして、見難かったりしたページが幾つかありました。時代が題のとおり明治期なので、ある程度地名や国名などルビを振らなければならないところがあることは分かるのですが、すごく謎基準だなと気になりました。

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2015年04月05日

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