【感想・ネタバレ】目の見えない人は世界をどう見ているのかのレビュー

あらすじ

私たちは日々、五感――視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚――からたくさんの情報を得て生きている。中でも視覚は特権的な位置を占め、人間が外界から得る情報の8~9割は視覚に由来すると言われている。では、私たちが最も頼っている視覚という感覚を取り除いてみると、身体は、そして世界の捉え方はどうなるのか――? 視覚障害者との対話から、〈見る〉ことそのものを問い直す、新しい身体論。生物学者・福岡伸一氏推薦。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

正にタイトルの問いの答えが知りたくて読んだ。
視覚障害者ならではの大岡「山」駅の捉え方など、そうやって捉えるのかのいう発見がいくつもあり、新たな視野が開けた気がする。
「見える人が目で見て済ませていることの多くを、見えない人は記憶で補っている。」というフレーズがとても印象的だった。

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2025年03月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

# 不可逆な視界——「見える世界」に縛られている私たち

## 面白かったところ

* 目の見えないヒトを何人もヒアリング・同行している生の体験が文章経由でリアルに感じ取れること。
* 「道から自由」という言葉が含蓄あるなあと感慨深かった。

## 微妙だったところ

特になし

## 感想

きっかけはWebアクセシビリティ対応の仕事に取り組み始めたことにある。
Mac OS準拠のVoiceOverを使って雰囲気でテストしていたが、このしごとは本当に届くべきヒトに届いているのかわからなかった。
自分は目の見えないヒトの友人がいないから、まず文章にあたろうと思ってこの本を取った。

本書の中では様々な視点から目が見えるヒトの風刺があって、たいへん刺激に満ち溢れている。特に「目の見えないヒトは道から自由」という言葉と「目が見えているヒトも盲目」という表現がぶっ刺さった。

「道から自由」という言葉は、進撃の巨人のラストの解釈と似ていてハッとさせられた。縛られるのが嫌で自由になろうと藻掻き苦しんでいたエレンは、実は自由に縛られたという残酷な真実。「目が見えているヒトも盲目」という言葉日も通ずるが、道が見えている時点で、道を知らなかった世界線にはもう戻れない。不可逆。その点、目が見える我々は道から不自由である。だからどうということはないが、このレベルの視座の考え方を得られたのは大変面白かった。

生まれたばかりの子どもは目が見えているが、母親という存在以外はよくわからない。赤ん坊と母親の境界が曖昧で、母親のことを自分の体の延長とさえ解釈している。だからこそ、世界を目で見て「自分」と「自分以外」の境界を作っていく作業が大切。改めて言語化されるととても面白かった。

一つ上の視座を得られる一冊。

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2025年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これも脳の多様性なんだろうなーと思いながら、

目の見えない人に焦点を当てるすることで、そのおもしろさをあらためて感じました。

本書はとても読みやすく、空間、感覚、運動、言葉、ユーモアの5テーマから、著者が5人の今は目の見えない方々とのやり取りなどを通して気づきを受けた言動などを組み合わせ、見えない人が世界をどのように見ているかを、考えていく作品になっています。

とくに現代社会のさまざまな事柄が、視覚に偏重気味であることにも気づかされ、だからこそ、目が見えない場合を想像したり、目の見えない人の脳や身体のつくりを学ぶことは、普段の当たり前の世界を相対化させるための触媒になるのですね。

言葉のところで、

見えない人の「見える」に関わる慣用表現を吟味すると、視覚だけが「見る」ための必須条件ではないのでは、と考え始める著者。

見る、とは、実物を目で見るだけではなく、頭の中で見る、ということも含んでいる、、とかとか。

一見すると、視点、視野、注目する、

それ以外にももっといろいろありそう、見識、見どころ、予見…

言葉に、視覚への偏重が反映されている、ともいえるのか、どうなんだろう。

目で見る、ということも、しくみとしては目からの情報を頭の中に投影している、のだから、

その頭の中に投影したものについて、見る、と言っているのであれば、それは目からではないことも含んでおり、見る、は想像する、ともいえるのかもしれないですね。

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2025年07月22日

Posted by ブクログ

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「見える人」が見えるゆえに空間を平面的に認識し、見えない人が立体的に認識しているというのがおもしろかった。

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2025年04月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

薦められて読んだ本。
いちばん影響を受けた本であり、価値観をひっくり返してくれた本、と聞いて読んでみようと。

自分の考えがいかに浅かったか。そりゃそうだよね、と驚きの連続。想像力の欠如に情けなくもなったけど、それよりすごい!おもしろい!の方が強くてポジティブに読ませてもらった。

障害は欠損ではない、というようなニュアンスの言葉はよく聞くけど、その意味を本当には理解してなかったように思う。そう思うべき、そうであるべき、というか教科書的なというか。
4本足の椅子から1本抜いたら倒れるけど、もとから3本足で作られた椅子はバランスの取り方が違うので倒れない、という話がわかりやすかった。

見える人と見えない人の空間の把握について。
少し前にある映画を見て、生まれた時から目の見えない人の感覚世界について想像したとき、思慮が足りず自分の脳内には真っ暗闇が浮かんでいた。でももちろんそんなことはなく、何ていうか目から鱗ってこの感じかと。
脳の視覚を司る部分が変化していく話も興味深かった。

環世界とチョウの話も。
個人的な解釈だけど、結局どの生き物も自分の見方をしているのであって、自分と隣の人が同じように世界が見えてるかどうかなんて誰もわからない。つい「正解」の見え方があると思っちゃうけど、結局は対象をどう知覚するか。人間は視覚に頼りがちな生き物だけど、それが「正解」って訳ではない。
今の社会は見える人向けにカスタムされてるから、目が見えない人達にとっては不便を感じることも多いかもしれない。ただ、必要なサポート方法はきっと一律ではなく、その人に聞いてみないとわからない。善意を断るのは心苦しいかもしれないから、押し付けるのはやめようと思った。

『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』という本も気になっていて、アートなんてそもそも解釈がそれぞれなのにどうやって伝えるんだろう?と心に残っていた。
これを読んで、そもそも自分の理解が間違っていたことがよくわかったし、この取り組みはすごくおもしろいと感じた。機会があったら参加させてもらいたいくらい。

ソーシャルビューについて。自分の漠然とした思い、というより感じたレベルのものを言葉にすること。他人の目で見ること。
自分も、あそびの多いアート展なら何度か行ったことある。でも芸術ってよくわからないしハードル高いなと敬遠してたけど、こういう受け取り方ならやってみたい、おもしろそうと思えた。

絵について。見える人、しかもプロである学芸員さんでさえ、必ずしも全部を理解できているわけではない。だから自分たち見えない人が引け目を感じることはない、という言葉は真理だと思った。

視覚障害のある方のユーモアについても同感。R-1にも出てた濱田祐太郎さん、ほんとおもしろいもんなー。

本筋からはズレるけど、個人的にはここも興味深かった。

「生物は、たとえば歩くために使っていた前脚を飛ぶために使えるように作り替えました。同じように、事故や病気で特定の器官を失った人は、残された器官をそれぞれの仕方で作り替えて新たな体で生きる方法を見つけます。前者は何千万年、何億年、後者は数ヶ月や数年とかかる時間はだいぶ違いますが、どちらも同じ、器官から予想もしなかったような能力を取り出しているのです。」

生き物の生存戦略の話が好きで、どうして?と聞きたくなるような進化を経て脈々と生き抜いてきた種に感動することも多い。もしかしてそのきっかけってこういうところから始まったのかも、と想像して興奮した。

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2025年05月04日

ネタバレ 購入済み

新たな視点に気づかされます

2020年中学入試では栄光学園、中大附、東京都市大附で出題、高校入試では東京学大附で出題された。
先日、目の見えない人に道を聞かれて、説明にとても苦慮したことがあって読んでみた。
実は足の裏から多くの情報を得ているとか、美術館で絵画鑑賞するとか、驚きの世界であった。
大切なのは、見えている人が強い、見えない人は弱いという無意識の上下関係を作らないこと。
「見えないことが障害ではなく、見えないことで何かができなくなる、そのことが障害である」という言葉が胸に突き刺さる。
障害者が引け目を感じない世の中であってほしい。

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2020年12月14日

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