あらすじ
「高齢者ケア」は、いま正念場を迎えている。超高齢社会となった現在、大都市圏では独居高齢者や生活困窮高齢者の増加、地方では人口減と市街地の限界集落化などの深刻な問題を抱えている。そのような切迫した事態に対応し、利用者にとって最善のケアとは何か。本書は、各地で奮闘した先進的な取り組みを進めている人びとを取材し、その答を追い求めていく。また、東日本大震災の被災地では、困難な状況下で、新しい取り組みが果敢に進められている。その取材を通して、地域医療、生活困難者支援の未来を考える。
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Posted by ブクログ
制度の隙間に生きる「人間」を凝視する。現場のリアルを突きつける力作。
介護の現場に身を置き、多くの利用者様やスタッフと関わってきましたが、
本書を読んだ時の衝撃は今も忘れられません。
ここに描かれているのは、
きれいごとだけでは済まされない介護の「最前線」です。
制度の不備、人手不足といった構造的な問題だけでなく、
ケアの現場で交わされる言葉や、そこにある静かな感情の動きが、
佐藤幹夫さんの緻密な取材によって浮き彫りにされています。
特に、
ケアの質が「効率」や「管理」によって削ぎ落とされていくことへの危惧は、
現場を知る人間として痛いほど共感しました。
私たちが日々向き合っているのは「症例」ではなく、
かけがえのない人生を歩んできた「一人ひとりの人間」であるという
当たり前の事実を、本書は改めて突きつけてきます。
論理的な分析と、現場への深い慈しみが同居したこのルポルタージュは、
これから高齢社会を生きるすべての人にとって、
避けては通れない問いを投げかけています。
「良いケアとは何か」という正解のない問いに対し、
安易な答えに逃げず、考え続ける勇気をくれる一冊です。
Posted by ブクログ
高齢者ケアの今後を考えるルポである。抑えた筆致で様々な地域の特徴について述べている。地域にはそれぞれの事情があるので、モデルにはならないが参考にはなる。都市部郊外の例である柏プロジェクト。孤独死を防ぐ新宿区の取り組み。路上生活者と山谷の高齢問題。認知症に対する熊本モデル。群馬県上野村の過疎再生モデル。石巻の状況。それぞれの地域事情に合わせて工夫している所にヒントがあると思われた。
Posted by ブクログ
これから到来する超高齢社会は、大量に高齢者が死んでいく社会である。
それに直面するのは、70歳や80歳の高齢者ではなく、現在40歳代、50歳代、そして65歳前後の団塊の世代である。
著者は次のような危機感を抱く。
施設や病院から非人道的な扱いを受けた家族の無念の言葉。「なぜ、人生の最後になって、こんなひどい目に合わなくてはならないのか」(p10)
「普通に老いて、普通に死ぬ、…そんなことができるのはむしろ一握りの恵まれた、幸せな高齢者」(p10)ではないか。
10年前にそう考えたが、現在、ますます情況はひどくなっているのではないか。
そして今後ますますそうなっていくのではないか。
本書は、この危機感とともに都市と農村部での超高齢化対応の実践例を報告しながら、二つメッセージを伝えようとしている。
「高齢者を地域で支えようにも、地域自体が活力を失っているときにどう支えることができるのか。地域包括支援システムとはいっても、それを駆動させる地域の力が枯渇しているならば、絵に描いた餅に過ぎなくなる。地域づくりとは端的に地域の再活性化だと言い換えてもいいが、高齢者へのケア(システム)の充実は、地域の活性化と両輪である」(p15)
「活力ある地域のケアは、活力と受容性の溢れた良質なものになる」(p15)
「医療・介護一体改革法案」(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案)が5月15日に衆議院を通過し、これから高齢者の医療と介護の仕組みが大きく変わっていくわけだが、その影響をもっとも受けるはずの団塊の世代の人々や、40歳代以上の人々が、それぞれの将来を考えるための格好の読物となっている。