【感想・ネタバレ】トライアウトのレビュー

あらすじ

シングルマザーの新聞記者・久平可南子は心に決めていた。息子のために仕事は辞めない。父親の名は誰にも明かさない。取材の折、彼女を見つめる戦力外通告を受けたプロ野球投手・深澤翔介。ふと気にかかり、インタビューを試みると、彼には可南子の秘密を知る素振りがあって……。仕事、育児、生きがい。今、前を向くことのリアルを、ひたむきな再起の物語に込める。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

思い通りにならない人生も、
どうしようもない躓きも、
失敗も、後悔も…。

深い愛情と、
確かな言葉があれば、
のりきれるのではないだろうか。

そんな勇気と、喜びを
与えてくれる小説。

大切にしたい言葉に
たくさん会えた。

0
2018年05月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

藤岡陽子さんの本にはまっている。今年は既刊分すべて読破するぞと静かに燃えている。

心に疼く傷が癒えずに息子の父親を誰にも明かすことが出来ないままでいるシングルマザーの新聞記者と、戦力外通告を受けたプロ野球選手がトライアウトの場で出会う。

故郷で祖父母と暮らす8歳の息子。
娘の生き方に同感出来ない父親。
姉の唯一の理解者でありながらも優等生の姉とは対照的で自由に生きる妹。
聴覚障害がありながらもひたむきに仕事を頑張るアルバイトの竹内君。
精神の発達が遅れていても清らかな心で周囲を癒す妹の婚約者。
不器用で時に世の中のはみ出し者となりえる境遇でも、ひたすらに信じるものを疑わない姿は美しくて尊い。

複雑な事情のもとに生まれながらも、温かい愛情を受けて素直に成長し
野球をひたすらに愛する息子の存在がこの家族に光を与えていることがひしひしと感じられる。

母親の貢献度が低いせいでチームの監督から疎んじられて球拾い要員であることも周囲に明かさずただ盲目的に頑張る姿。
同級生に親の八百長疑惑をからかわれて事故の加害者とされても、頑なに親を守ろうとする姿。「子供をばかにしちゃいけない。子供なりに正義を持ち、正義をふまえた人の見方をするのだ。謝罪しないなら、あなたは明日から卑怯者になる。」
ここ、涙、涙。つい世間体を優先して、子供の気持ちをおざなりししてしまいがちな自分、孫を守る頑固爺さんの姿勢にうん、うん、と頭が下がりまくり。

藤岡さんの言葉は温かくて優しいのに背中を正させるものがあるなあ。。。

担任の先生の教育者としての心根も胸に沁みた。
「月曜日の朝、ぼくはいつも感じるんです。子供たちは十分にタイヤの空気を入れてもらったかなと。幸せな土曜日曜を過ごした子供たちは、体中に元気をみなぎらせて、それこそ自転車のタイヤが空気に満ちて張り切っているようにして登校してくるんです。」

嫌な奴も出てくるけど、真人間が辛いときにぐっと踏ん張って、前を向いて道を切り開く逞しさ、に素直に学びを得る。

「辛いときはその場でぐっと頑張るんだ。そうしたら必ずチャンスはくる。
チャンスが来ない人は辛いときに逃げる人なんだ。」

0
2022年01月25日

「小説」ランキング