あらすじ
150キロ台後半の剛速球を投げ込み、日本プロ野球界を代表する投手となった伊良部秀輝。そんな彼が次の活躍の舞台として希望したのはニューヨーク・ヤンキースだった。そして、日本球団とパドレス、ヤンキースを巻き込んだ世紀の三角トレードへと発展していく。本書では、傲慢、不遜とマスコミからバッシングされつづけた伊良部秀輝の真実の姿を明らかにしようとする一冊である。著者は、伊良部の代理人として、ヤンキースへの移籍を成立させた代理人の団野村。最近では、ダルビッシュ有のメジャー移籍を成立させた日本を代表するエージェントである。本書では、伊良部がヤンキースのオーナーやファンから愛された姿、そして豪腕でありながらミリ単位の投球フォームにこだわりつづけた繊細な野球人としての姿を浮き彫りにしていく。42歳にしてこの世を去った伊良部秀輝。彼が、日米のプロ野球界、マウンドに遺したものは何か―野球ファン必読の一冊。
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Posted by ブクログ
伊良部秀輝のメジャーリーグ移籍に関わった団野村が、彼の人となりについて綴った一冊。
彼の“悪童”というパブリックイメージと違い、人間的にはとても繊細で、投球術についても力よりも頭を使うタイプだったということがよくわかった。
また、例のバーでの暴行事件も、原因はバーによるカードのスキミングによるもので、むしろ被害者だったということも初めて知った。
何より、彼の移籍をきっかけにポスティング制度という、日本人選手がMLBに移籍しやすい環境が整ったことが最大の功績。
団野村もポスティング制度に100%賛成ではないみたいだが。
もちろん、伊良部側の立場で書かれてることもあると思うが、彼の人となりを知ることができた。
Posted by ブクログ
メディアに脚色された「伊良部選手」は、伊良部秀輝氏の実像とかけ離れていた。プライベートの伊良部氏(「ヒデキ」)を知っている団野村氏は、そう考えている。
「ヒデキ」は、ワガママな乱暴者ではない。確かに熱情的ではあるが、研究熱心で、仲間思いで、むしろ芸術家というべき野球選手だったのだ。さらに、彼の信念の強さこそが、その後の日本人選手のメジャー挑戦を可能にしたのである、という。つまり、FA制度を整える手はずの提供者なのだ。
野球選手を辞めた伊良部氏は、「伊良部選手」という脚色にも仇されて、第二の人生のスタートを失敗してしまった。だがそれ以上に、「ヒデキ」の顔を失ってしまったのが、強いショックだったようだ。つまり、彼は生きがい(野球!)をなくしてしまったのだ。それが、あの悲劇をもたらした要因ではないか、と筆者は考えている。
惜しい人を亡くしたものだ、とつくづく思う。