あらすじ
港町マルノヴァで足止めを食らった蔵人は、ルワン家の娘ファンフから決闘を申し込まれる。とどめを邪魔され、手厚く保護されたファンフを見る蔵人の脳裏には、ありきたりで嫌な予感しかしなかった……。
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ラストの悲劇はいろいろな要因が重なってのものだったが最大の元凶はファンフの保護をしていた月の女神の付き人の関係者。
ファンフの身に起こったことは彼女の一族の自業自得だが彼女からしたら知らない間に一族郎党皆56されて怒りをはじめ様々な感情をクランドに向け、命がけの決闘をしかけてしまうのは精神が未成熟な少女だったのだから致し方ない部分もある。
しかし、月の女神の付き人の連中はファンフの″精神が未成熟な少女″という部分を完全に失念していた。
本巻のクランドの昇格試験の試験官が20年も前の古い感覚で正しくクランドを評価できなかったように、月の女神の付き人の連中も今までと同じ感覚でただ一族を失った少女を助けただけで復讐心に焼かれる少女の内面など欠片も理解していなかった。
その末に起こったことが救い導いていたと思っていた少女の無関係なエスティアを巻き込んでの報復行為、巻き込まれたエスティアは命を落としファンフも最後はクランドに討たれての結末。
本巻の序盤でファンフの側から仕掛けた命を賭けた決闘をクランドが制し、決闘の完遂を実行しようとしたクランドを妨害するという月の女神の付き人の傲慢な行いの顛末がこれよ・・・。
自身の行いが絶対に正しいことだと信じて疑わない傲慢さがどれほど愚かなことかをこれでもかと描いたエピソードだったと個人的に思いました。
だいたいのエピソードがモヤモヤする事が多いこの作品だが、なぜかそこにも惹かれてしまうのがこの作品の魅力でもあると思います。
Posted by ブクログ
まさか異世界が舞台のファンタジー小説で、現代の少年法問題によく似た事件が発生するとは思いませんでした。
「両親の仇」ということで決闘を挑んできた美少女を返り討ちにした用務員・蔵人さんですが。命を狙われること自体が不幸ですが、そもそも美少女の両親を殺したのは蔵人さんじゃないってところがさらに不幸。
少女の両親が殺されたのは、王様の命令を破って蔵人さんを闇討ちしようとした両親が、王様にバレて粛清されたってのが理由ですからね。お門違いも甚だしい。百歩譲って復讐の矛先が王様に行くのなら理解できますが、それが蔵人さんに向けられたのはただの八つ当たりにしか思えないです。
でも、そんな少女を周りの保護者達は全力で庇うのですよね。保護者としての責任を棚上げして。いくら年端もいかない美少女とはいえ、殺人未遂どころか殺人まで犯しておいてそりゃないんじゃないの? って展開が続きましたが、最終的に蔵人さんがきっちり物理的にとどめを刺してくれたので溜飲が少し下がりました。
ただ、彼が失ったものは大きかったですし、少女を手にかける、という終わり方の読後感は悪かったです。それがこの作品らしいといえばそうなのですけれど。
4巻から初登場の新しい癒しキャラ―飛竜の子ども・アズロナがいなければ救われなかったですね。アズロナかわいいよアズロナ。同じ子どもでもエラい違いだなと思いました。
雪白(豹)だったりアズロナ(竜)だったりジーバ(骨)だったり、蔵人さんの人間には好かれないけど人外にはとことん好かれるところがいいですねぇ。