あらすじ
かつて皿からはみ出るほど大きかったホッケ。いつの間にかすっかり小さくなってしまっていることに気づいているだろうか? 本書は、築地魚河岸三代目にして魚食のプロが日本の魚事情と魚食文化について軽快に語る!
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Posted by ブクログ
日本は海に囲まれた島国だ。国土の面積は約38万㎢で世界の61番目だが、その細長い形状から海岸線の長さは3万5,558㎞もあり、何と豪州、米国を抑えて世界第6位だそうだ。そして「ここまでは自国の海」と決められている国土から200海里の排他的経済水域が国土面積の約12倍の447万㎢で、これも世界第6位だ。暖流と寒流が流れ込む豊かな海に囲まれて、日本が昔から海の幸に恵まれていたのも納得だ。そして山があり森があるのできれいな水がふんだんに使え、魚を美味しく料理するのに最適な環境なのだ。
著者は東京の築地市場にある魚河岸の三代目、海産物を美味しく食べる方法を熟知している魚のプロフェッショナルだ。旬の、身がふっくらとしたあさりの酒蒸し、脂がのったカツオのたたき、香ばしいアジやサンマの干物などの描写には思わず生唾を飲み込んでしまう。
ところが、この豊かであるはずの日本の海から魚が消えつつあるという。漁業生産量は1984年をピークに下落を続け、この30年でピーク時の37%にまで落ち込んでしまった。かつてはひとりでは食べきれないほど大きかったホッケの干物も最近はアジの干物程度だ。ホッケの漁獲量はこの15年で75%も減り、大きなホッケはもう捕れなくなったという。
なぜこんなことになったのか。それは日本が魚の「乱獲・乱売・乱食」という負のスパイラルに陥っているからだ。魚の群れへ大挙して押しかけ、産卵前の魚や成長途中の稚魚も根こそぎ捕ってしまうということを繰り返してきたのだ。次世代を残すことができなければ絶滅へ向かってまっしぐらなのは子どもでも分かる。実際にニシンは乱獲が原因で一度絶滅している。
魚を増やすにはどうしたら良いのだろう。簡単なことだ、捕り過ぎなければよい。日本の水産資源の管理は自主的管理と公的管理となっているが、漁業者の自主的管理には当然限界がある。ほとんどの漁業先進国では、行政が商業価値のある多くの魚に対して「総漁獲可能量(TAC)」と「漁獲枠個別割当制度(IQ制度)」、「譲渡可能個別割当制度」を設定して魚資源の管理をしている。日本も一応「総漁獲可能量」を一部の魚を対象に設けてはいるが、有名無実で全く機能していない。水産庁は魚資源の枯渇問題にはまともに取り組む姿勢を見せていないと著者は憤慨している。このままではいずれ日本の近海に魚はいなくなり、日本の漁業は廃れていくだろう。
しかしまだ日本の漁業には復活のチャンスがあると著者は希望を持っている。東日本大震災の原発事故の影響で漁業が自粛されていた福島県沖では、3年間で魚の量が3倍に増えたそうだ。たった3年で魚は帰ってくるのだ。日本の海はまだ力を失ってはいない。日本の豊かな海を取り戻すために必要なのは、先ずTACの厳格化、IQ制度の導入、そして私達消費者が少しずつの我慢をすること、無責任なマスコミに踊らされず自ら率先して食べ物について学び正しい知識を持つことだ。国連海洋法条約には「魚は人類共有の財産」だと定義されている。「日本の海を豊かな海に戻し次の世代に渡そう、今ならまだ間に合う!」と著者は心から訴えている。これからも美味しい魚を食べ続けていくために、私達も漁業資源について真剣に考える時が来ている。
Posted by ブクログ
ここ4-5年で本当に小さくなって、且つ値段も上がってしまったホッケ。。どうして?居ないの?。。。その率直な問いかけの答えがここで述べられている。
溢れる生命力とポテンシャルを有する日本の海なのに、魚資源が枯渇していく現実を著されると、なんだか歯痒い思いが頭をよぎる!
僕にも一因があるんだなぁ。
国産の身振りの良いホッケを、いや、魚を、
これからも食べたいなぁと思います。
Posted by ブクログ
<目次>
プロローグ 魚とうまくやっていこうぜ!
第1章 日本の魚が世界一うまいワケ
第2章 魚をおいしく食べ続けるために
<内容>
この本を読んで、カリカリした。怒りがこみあげてきた。官僚の、企業の勝手さ。プロローグは事実が並ぶ。第1章は日本の魚の美味しさ、素晴らしさが並ぶ。が一転第2章は、日本漁業のじり貧と言うか、末路が載っている。このままではおそらく、日本の漁業は破綻するだろう。そればかりか世界の鼻つまみ者になり(すでになっているかも)、今日本に訪れている観光客に見放され(和食のベースに魚があるからだ)、日本の衰退は加速度的になるのではないか?
それは、おそらく経済成長とか外交政策とかでなく、こうした地球資源の問題、になると思う。
漁業については、北欧やアメリカのように成功例が多く見られる。ところが、農水省や漁業系の企業は、自らの利益と事なかれ主義(それは勉強をしていない政治家にも)で、無策に無策を重ね、悪弊を垂れ流しているようだ。おそらく、今の日本の悪い例の一つなのだろう。ここを治せなくては、日本の病弊が消えることはないのでは…
Posted by ブクログ
カバーのフォント、とにかくひどすぎる。
こんな文字使って、何を表現したいのだろうか…。
と思いながら読み進める。
ホッケが小さくなったのは結局、漁獲量の減少が原因だという話。かつてのニシンを引き合いに出しての説明は、よく聞く説であるし、知っていることではあるが、それから何も反省していないのか日本の漁師たちよ。と思わずにはいられない。
本書では漁師だけにその責を求めるのではなく、広く政府の政策にも呼びかけが必要だとしている。その意図には充分賛同するが、いかんせん各章の節毎に表示されるフォントをみて、説得力がガタ落ちだよなあ、と残念な気持ちになるデザインである。