あらすじ
無意職論、欲望論、精神病理論、身体論、家族論、国家論、世界史論、資本論、貨幣論、記号論、芸術論、権力論…のすべてであるとともに厳密な哲学の書でもある奇跡的な著作の新訳。「器官なき身体」とともにあらゆる領域を横断しつつ、破壊と生産をうたう「分裂分析」は、来たるべき思考と実践の指標であり続けている。
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Posted by ブクログ
この本の真骨頂である「欲望機械」や「分裂分析」、「器官なき身体」の定義、「欲望的生産」と「社会的生産」、死と強度の問題、革命の話などが展開される下巻。「脱コード化」という概念は流行ったが、今読むとそこはあまり面白くない。
むしろ、オイディプスの三角形、端的に言えば近代家族モデルであるが、これを解体するに飽き足らず、「人間」そのものも概念的に解体し、あらゆる欲望という切り口でその存在を捉えなおし、その欲望が社会の中へはめ込まれていく、あるいはそこから逸脱していくさまを描いたところが非常に面白い。この説明はわかりにくいだろうか?
つまり、自我を持つ主体としての人間という定義すら、DGは投棄している。欲望の強度が、欲望のない(強度=ゼロ)ところを目指して活動するがゆえに社会は回り、あるいは破壊されるという立論のなかで、個人がどうとか共同体(家族)がどうとかいう話を乗りこえてしまうのだ。
当時は精神分析とマルクス主義批判として現れたこのわけのわからない本であったが、今読むとアナキズム的でさらにフーコーの下地になるどころかそれを乗りこえていくような読み方を可能にする論述なのである。このレビュではほんのわずかなエッセンスに触れたにすぎないが、ここから引き出せる思想の広がりというのは、相当に可能性を秘めているのではないかと思う。ただのキチガイ本と侮る勿れ、ということだ。