あらすじ
16歳の明帆は同級生の藍子と付き合っている。だが二人はすれ違ってばかりで、明帆は藍子の幼なじみの少年・陽に近づいていく。ある日、藍子のアパートが火事で全焼し、藍子も焼死体で発見される。不可解さを感じ、真相を探る明帆と陽だが――。「死んでほしゅうない。おまえに生きていてほしい。おれは、おまえを失いたくないんや」友情でもなく、同情でもなく、仲間意識でもない。少年たちの絆と闇に迫る、著者渾身の物語!
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Posted by ブクログ
明帆と陽の関係性がすごく曖昧だ。友達でもない、同情でもない、仲間意識でもない。明帆は陽がこれからどう生きていくか、どう死んでいくかをそばで見ていきたいし、陽は明帆に生きていてほしい、自分の両親や藍子のように失いたくないと思っている。
私はこの関係性に名前を付けることができない。多分恋とか愛とかでもないし、相棒というくくりでもないだろう。
事件とか、真実とかは二の次で、ただ似ている性質を持った2人の少年が、藍子という少女を介して複雑に絡み合ってしまっただけ。その瞬間を、その部分だけを作者はこの本に記しただけなんだろうなと思う。
この2人が事件によって絡まっていく様を、私はただ見ているだけ。読み終わってしまった今、この2人の交わりはどうなるのか、だれにも分からない。
個人的にはこれからもこの関係性を続けてほしいけれど、あのラストでもしかしたら交わりは断ち切れ、片方にだけ絡まった痕跡を残して、2人の交流は終わるのかもしれない。それとも2人共が相手に自分を残して、徐々に絡まりは解けていくのかもしれない。ひょっとしたら、私の望んでる以上の関係になっているかもしれない。
私は高校生の頃、この少年少女と同じ年頃のときに読み、全然彼らの心情が分からなかった。ただ面白かったし、少年、特に陽に心惹かれた。かっこよかった。斜に構えた雰囲気、魅力的と言われる声、明帆への他人へ向けるのとは違う感情。
それから10年以上経ち、オーディブルの朗読でこの本を聴いている。声が付くことで印象は変わったし、あの頃より理解が出来る気もする。けれどやっぱり分からない事も多い。でも一つ分かったのは、あの少年少女は今の私よりも大人だったということ。
高校生らしさもあるけれど、根本的な考え方、物事の読み取り方、考えていることがとても深い。それは彼らにとって良いことなのか私には分からないけれど、でも今、私はこの歳になってもこの少年たちに魅力を感じてしまうのだ。
Posted by ブクログ
ひとつ前に本棚に登録した畠中恵著《百万の手》を読んでからしばらくして出合い共通項の多さにセットで記憶に残った作品だった。しかし《百万の手》は読後数年を経ても覚えていたにもかかわらずこちらの《福音の少年》はうろ覚えでレビューのために手にとってみた。そうだった。こういう物語だった。読み出してすぐに思い出した。でもやめられずに結局、最後まで再読してしまった。二人の少年と一人の少女の物語だ。危うい、思春期というにはもっと駆け足でその先へたどり着いてしまった、青春というには哀しい時間のなかで足掻いている彼らの一人が死に、遺された二人は彼女の真実を追う。誰にとって誰が福音の少年だったのか。幾重にも読むことができるだろう。ラストで少年の一人、秋帆はまるでそのいのちを脅かされているように読める。そして殺し屋がいう、罰だと。罰などではない。たしかに彼一人で犯人と、さらには犯人に雇われた殺し屋と会うなど無謀だ。一人にすれば死ぬと警告してくれる大人もいたというのに。しかし、私は彼の生存を信じる。絶望したわけではないという殺し屋の言質もその根拠のひとつだ。殺し屋がそういう以上、この先に殺し屋と秋帆の再びの接点が予言されている。だが、最大の根拠は秋帆を失いたくないと強く願う者の存在にある。頽れ、倒れ三日月をその手に掴もうとした秋帆にはそう強く願う者がいる。それは必ず生への楔となる。ほんの微かにでも歩む角度が違っていれば人殺しとなっても不思議はないと思わせる少年だ。しかし彼は、殺し屋の誘惑を自らの意志ではね除けた。そんな彼が殺し屋に屈し、安易にいのちを捨てるわけはない。だが、結末は物語のなかで明確に語られることはなく、幕を閉じる。著者がそれ以上を物語ることなく沈黙するのならば読者は唯々諾々と従うまでだ。けれど私は信じる。彼の明日を。彼を失わぬ未来を。
ちなみにバッテリー、NO.6未読。本作が初あさのあつこ作品。
Posted by ブクログ
NO6、バッテリーの順に読み進めてあさのあつこ第三作目。
先の二つと比べてBLの雰囲気が薄く、ヒロインが登場するという点だけでも好印象。ストーリーの展開もおもしろく、時間を忘れて読み耽けられる。
最後のページをめくり終わったとき、この作品はまた再び読んでみてもいいと素直に感じた。
Posted by ブクログ
明帆と陽、違和感を感じながらも、擬態して普通の生活を送る2人。お互い自分達が異質な存在であると理解している。心の中に何か暗い部分があると感じている。そんな中で、明帆が陽を、陽が明帆を現実につなぎ止める役割を果たしているように感じた。2人が出会っていなければ、明帆は最後、殺し屋の誘いに応じていたのではないか。
これからも2人は互いの中の闇を見つめつつ、ともに生きていくのだろうか。ラストは不穏だが、これからも2人は生きていくと信じている。
続編はなさそうだが、2人の少年がこれからどういう風に生きていくのか、続きを知りたい気持ちになる。
Posted by ブクログ
やめてー。
どうにもスッキリしない終わり方。
でも、永見くん生きてる…よね。
男は「罰だ」と言った。
自分の期待を裏切った罰だと。
そして「君に絶望したわけじゃない」
とも言った。
それってつまり、殺しはしないってことだよね…?
よし、それでいこう。
Posted by ブクログ
思春期って難しいなあと思いながら読んでました。
どう展開していくのかわからない、最期もどうなってしまったのかはっきりわからない。けど、「どうなっていくのか」を読者に考えさせてくれる作品だと思います。
Posted by ブクログ
ある少女を廻る少年二人の物語。
終わり方に美しさを感じると同時に、「え、これで終わり?」とも思った。
救い的な後日譚が欲しかったのが正直なところ。
誰の視点で描いているかによって登場人物の記し方が変わるので、偶に混乱することも。