【感想・ネタバレ】反〈絆〉論のレビュー

あらすじ

東日本大震災後、絶対的価値となった〈絆〉という一文字。テレビは「優しさ」を声高に称揚するようになり、列島中がその大号令に流されて、権威を当然のものとして受け入れてしまったかに見える。だが、そこには暴力が潜んでいないだろうか。陰影のある、他の「繊細な精神」を圧殺する強制力がはたらいているのではないだろうか。哲学にしかできない領域から、〈絆〉からの自由、さらに〈絆〉への自由の、可能性を問いただす。

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Posted by ブクログ

中島義道氏3冊目。内容は想定、期待通り。
「絆」は不可侵存在であり、私たちを縛る。当然のものとして存在し、時には暴力的な様相を醸し出す。

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2020年08月23日

Posted by ブクログ

人間を美談という一つの物語に安易に閉じ込めるべきではない。ひとはそうするとき、自らの快さにプライオリティを置くあまり他人の何かを犠牲にしているのだと著者は説く。

さらにこの無反省な善意の受け手は、弱者としての処世術として偽善を判別する嗅覚を身に着けているのだから、なおのこと問題になる。

この伝でいくと、最近よく聞かれる「どうせ同じ偽善ならやらないよりやった方が人の為だ」という一見真っ当で格好の良い言い様も、独り善がりの欺瞞でしかないということになる。偽善であり誠実さを欠く以上、やはりそれはすべきではない。むしろ無自覚な「絶対的美/善」の押し付けが、共同体に思考停止をもたらすことの害悪を認識すべきなのだ。

今まで自分が四六時中感じていながらうまく言語化できないでいた違和感を、極めてクリアに示してくれたこの本に感謝したい。

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2015年02月10日

Posted by ブクログ

絆という価値を声高に繰り返し叫ぶことがかえって全ての人に絆を大切にすることを強制する暴力的な言葉になり、陳腐化してしまう。何事においても当たり前ではない、と自問自答を続けることに尽きる。この視点は今後の世界において大きな意味を持つだろう。一方、この本を読んでもなお、全体主義的な価値観に少なからず理解を示してしまうことに、心がザワザワする。

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

絆は確かに素晴らしいものだけど、だからといっていつでもすべての人がそれを求めているとは限らない。つながりを求めていない人もいるという事実を無視した絆なんて、暴力でしかない。個人の違い、多様性を大前提にしないといけない福祉の世界が、一番“絆”を訴えているけれど、それは正しく理解された“絆”なのだろうか

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2020年01月27日

Posted by ブクログ

私の嫌いな言葉「木を見て森を見ず」が浮かぶ(個と全)。木が森が、と大忙しな一冊。
森に入って木の側に立って、落ちたドングリがどう芽吹くのか、なぜオタマジャクシがカエルになるのか、オナモミが絶滅しそう、タガメは変なかたちだ、わたしはそんな事を考えていたい。

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2015年02月24日

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