あらすじ
在宅医療専門クリニック看護師のわたし(中嶋享子)と新米医師の三沢、クリニック院長の一ノ瀬らが様々な患者本人と家族、病とその終焉、そして安楽死の問題にも向き合う。「綿をつめる」膵臓がん患者の60代女性が亡くなった。わたしは三沢に死後処置――遺体に綿をつめる作業を教えることに――。「いつか、あなたも」在宅医療は老人ばかりではない。26歳の女性患者は統合失調症に見えたが、症状は複雑だ。その女性がわたしに投げかけた言葉「いつか、あなたも」の意味は――。カルテに書かれることのない医療小説、六つの物語。著者は、2001年から14年まで、在宅医療が専門のクリニックに非常勤医師として勤め、多くの患者さんを診察してきた。本作は、そのときの経験をもとにした、ほぼ実話の小説です。
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Posted by ブクログ
在宅医療、患者さんはホント良くなることはない。そして、いつか、あなたも。家族、将来のこと、考えさせられる。亡くなった方の処置、訪問看護師さん尊敬する、告知の問題も難しい。「まだよくわかっていない。大事なことは、病気に振り回されないこと、病気を治すことに執着していると、残された寿命が、何年あっても、悩んでばかりになります、気にし過ぎるとストレスで悪くなる。病気は考えないほうが良い。やりたいことに時間を費やして、楽しい気分になること」
Posted by ブクログ
人間は不平等なものだが、ひとつだけ平等なものがあるとしたら、誰でも1回は絶対死ぬということだろう。でもその死に方は決して平等ではなく、大往生で安らかにピンピンコロリを上等としたら、親に虐待されて死ぬ子供や強盗に押し込まれて殺される被害者、災害で、戦争で、いじめで自殺…
この本では、在宅看護で死をみとる訪問医療の現実をリアルに描く。「良かったねぇ」の死にざまなどほとんどない。特に最終話、ハッピーエンドと思いきやの大苦のラスト…、何もこんな終わり方にしなくとも…と思ったが、作者は敢えてこれを伝えたかったのだと思う。
いつか俺も死ぬんだが、できれば苦しみは少なくしてほしいし、何より誰かがしんどい思いをすることができるだけ少なくあってほしい。娘や妻が俺の介護でしんどい思いをして人生の長い時間を無駄にするくらいなら、安楽死させてほしい、と切実に思えた1冊。
安易に死を選ぶことは良くないが、命を長らえさせるのだけが正義なのか?常に考えておきたい。