あらすじ
元検察官・元弁護士の著者が特捜のエースを経て闇社会の守護神と呼ばれるまでを綴り、30万部を超えるベストセラーとなった07年の『反転』(幻冬舎)。巨額手形詐欺事件の有罪判決、獄中生活、出所後のがん再発、事件の核心、ともに罪に問われた盟友で闇の帝王こと許永中へのメッセージ……同作発表後の7年間の波瀾万丈を赤裸々に書き下ろした問題作!
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Posted by ブクログ
「反転」を読んで、続けて「遺言」を読むこととした。
反転が、実に面白かったので、遺言にどんなメッセージがあるのか?
反転は、まだ闘う姿勢が強いものだった。
遺言は、刑が確定し、刑務所に入り、そして ガンとなる。
その絶望感の中でも、言葉を紡ぐ姿勢が尊い。
そのため、反転の時の明るいトーンと比べて
同じような経過を語るにも 暗いトーンが満ち溢れる。
どうしても、同じようなことを書かざるをえなくなる心境も分かる。
有罪、弁護士資格剥奪、がんという苦難の中で、
その心の底流として、論語に支えられているのが、興味ふかい。
日本人は、最後は そこに行き着くかもしれない。
論語は、東洋人の思想の基層をなしているのだろう。
確かに 田中森一が 聖書に向かったら、違ったテイストになる。
許永中に対する想いが断ち切れないところが、
精神的に強さがありながらも、どこかに繋がりと救いを求めるのだろう。
結局は、田中森一を落とし込めるための特捜部の執拗な怨念が
にじみ出てきて、特捜のストーリー逮捕が、暴かれている。
田中森一は、まさか自分にそのような仕打ちをされるとも
思わなかっただろう。脇が甘いといえば、甘い。
無罪を主張するのは、痛々しくも 田中森一は無実と思う。
法の枠の中だけでなく、法の外も含めて、
法律家として、ドブ掃除をする価値を貫き通した。
ご冥福を、祈ります。
Posted by ブクログ
これだけのバイタリティーと優秀な頭脳を持ってしても、特捜部という国家権力には抹殺されるのかと思うと怖くなった。晩年の絶望的な最後の苦悩が切なく感じた。
Posted by ブクログ
2014年11月に亡くなった田中森一の最後の著書。
『反転』とかぶっているところも多いが、それでも十分面白い。検事→弁護士→5年間の服役をしてきた男の自伝。
恨みからは何も生まれない。人への恨みはやがて凝り固まり、根深さを増し、人を恨むことが人生のようになってしまう。だから田中は自分陥れた人間を恨まぬよう気持ちをコントロールしてきた、というくだりに頷かせられる。