あらすじ
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本格的に理論を勉強する前にこの本で少し予習しておこう。音楽理論を学びたくて理論書を読み始めたけど、途中からわけがわからなくなって結局放り投げた……。そんな経験を持つ人は多いでしょう。また、これから音楽理論を学ぼうとする人が、ほとんど何もわからない状態からいきなり本格的な理論解説に直面したら、きっと面食らってしまうはず。本書は、そういった従来の音楽理論書の敷居を一気に引き下げ、理解への架け橋となるべく作られた読み物風の入門書です。まずこの本を読んで音楽理論に対する必要最小限の予備知識を頭に入れておけば、そこから先、ちゃんとした音楽理論書を読んだときの理解度が飛躍的に向上すること間違いなし。やる気のある人にこそお勧めの1冊です。*この電子書籍は固定レイアウト方式で作成されています。文字の拡大・縮小や、検索、ハイライトなどの機能は利用できません。
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音楽理論と昭和のノリが学べる
タイトルに惹かれ、音楽理論を本格的に学ぶ前段階として本書を購入しました。
コンセプトとしては、小難しそうな「音楽理論」とラフに接することで勉強アレルギーともいうべき症状を緩和し、最低限の知識を身につけようといった感じでしょうか。「この知識を元に本格的な音楽理論の勉強に移ってね」という、まさにタイトルそのまんまで素晴らしいですね。
実際のところ、分かりやすく伝えようとする工夫が随所に見られ、教えられる側にとってみれば親しみをもって学ぶことのできるとても有難い存在のように思えます。
ただしそれは、昭和の古いノリをスルーすることができればの話です。
ラフに、気軽に読んでもらおうという意図から生じたこの一工夫こそが、悪目立ちして、「さあ勉強するぞ!」と息巻いている人間の集中力を損なわせようとしてきます。
おそらく読み始めた最初は気にならないかと思います。しかし延々と続く昭和のノリはジワジワと意識を侵食し、直に己が昭和生まれのおっさんになったような錯覚に陥ります。
内容だけ見れば各項目での説明を画像なども交えて行なっているため、初心者でも分かりやすいです。
しかし、「俺・私はまじめに勉強したいんだ!」という人や今どきの若い方々にとっては、現代的でないこのノリがかなり辛いものとなるかもしれません。
結局のところ、本書をお勧めできるのは「あまり勉強する気のない人」といえるかもしれません。しかしこの本はタイトルにもあるように、読後に本格的な勉強へと移ることを想定しているため、どこかおかしなことになってしまっています。
忌憚のない言い方になりますが、本気で勉強したい方であれば本書をすっ飛ばして最初から「ちゃんとした音楽理論書」を手に取った方が学習が捗るかもしれませんし、そこまで本格的に学びたくはないんだよって人の場合でも、違う初歩的な理論書を眺めた方が負担(昭和のノリ)がなくていいのかも…。
ですが、慣れてくればこれ以上ないほど丁寧に説明してくれているのが伝わってきます。
あとがきを読んでみても、この軽いノリは「音楽理論書の敷居を下げるため」という信念のもと敢行されたとあります。
人を選ぶノリであることは間違いないかもしれませんが、分かりやすさという観点に重きを置いてみると星5の評価が妥当でしょう。
Posted by ブクログ
ダジャレ好きな「センセー」と、女子大生で将来保育士になる「リロンちゃん」が、ゆるい会話をしながら「五線と音名」、「倍音と音程」、「音階」、「調性」、「和音」、「機能とケーデンス」について柔らかく解説するもの。
読むのは面白いし、タイトル通り「ちゃんとした音楽理論書を読む前に」これで知識を入れておくと、だいぶん分かりやすいだろうという本。
たとえがたくさんあって、例えば「登りやすい長音階の階段」と「身体に負担がかかりそう」な短音階階段(pp.100-1)とか。そんな風に音階を考えたこともないなあ。とか。駅の階段とか短音階で登ってみようかなあ、と思った。他にも、トニックは「キーを決定づける主役中の主役で、戦隊のリーダー兼お父さん的な存在のIレンジャー」(p.139)とか、ドミナントは「ヒロインとして船体のサブリーダー兼お母さん役を務めるVレンジャー」(p.140)とか。教えるのがうまいなあというたとえ。他にも「テンションノートは、コードトーンの1つが本来の職場を離れて、ついふらふらと買い物に出かけてしまった状態と言うことができます。"あいつ仕事ほったらかしてどこ出かけたんだ?仕事がたまったままじゃないか!”と部長が起こって、職場に緊張が走る……まさにそんな状況に似た緊張感のある響きを持っているのがテンションコードなんです。」(p.192)とか分かるかどうかは別として読んでいて面白い。『ジュニア楽典』では音程で挫折したけど、この本ではちゃんと鍵盤を数えて、例えば2.5鍵分は「完全4度」、それよりも半音広がったファからシは3鍵あると、増4度という(p.75)など、1,4,5,8度は完全から増と減、2,3,6,7度は長3度と半音差の短3度の2種類あって、そこからさらさらに半音差で増〇度、減〇度、など、p.74に図でまとめられている。これを理解すれば〇度の音程の話はクリアしたかも、という気になった。「短3度音程を転回すると、長6度音程」(p.81)など、9から3を引いて長短を入れ替える、というのも分かりやすく、丁寧に解説されている。
面白かった話は、「理想の純正率と現実の12平均律」の話(p.34)。普段聞く音楽は、「ド・ミ・ソの振動比」に「ちょっとした小数点以下のズレ」があるらしく、そのおかげで「"トランスポーズや曲中での転調が可能"」なんだそうだ。聴き比べてみないことにはよく分からんけど、意外。それから、よく半音上に転調する曲について、理論的には「五度圏の図を見ると半音上のキーというのはかなりの遠隔調になっていますよね。対角線上の左隣ですから、主調から見たらまさに他人。でも、遠い関係の調に転調した意外性がかっこいいわけです。」(p.147)だそうだ。半音上なんて意外でもなんでもないっていうか普通転調ってそうするもんじゃないの、と思ってたけど、そういうことでもないらしい。逆に「かっこよくない転調」というのを聞いてみたい。
…とは言え、『ジュニア楽典』よりは少し進んだ気がするけど、でも「調性」からやっぱり怪しくなってきて、和音はやっぱりお手上げ。これは音を聞きながら習わないとダメかなあ、とか思ってしまう。ということなので「ちゃんとした音楽理論書」にたどり着く道は遠いことが分かってしまった。(21/09/11)