あらすじ
【競馬シリーズ】弁護を引き受けろ。そして裁判に負けろ……アマチュア騎手で弁護士のメイスンは、ライバルの騎手を殺害した容疑で逮捕されたミッチェルの依頼を受けた。その直後から奇妙な脅迫が彼を脅かす。時を同じくして、逆恨みをしたかつての依頼人がメイスンを襲撃してきた。ふたつの事件には関連があるのか? 恐怖と職業倫理の間で揺れ動くメイスン……競馬シリーズの興奮にリーガル・スリラーの醍醐味を盛り込んだ巨匠の意欲作!
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
長年にわたり、ともにヒット作を生み出すパートナーであった最愛の妻メアリーさんの死後、5、6年の沈黙を破って、2006年に復活したディック・フランシスの、復活後、3作目。
主人公は、弁護士であり、かつアマチュア騎手。
仕事に誇りを持ち、なおかつレースに出ることを心から愛している。
「これぞ、ディック・フランシスだ」とうれしくなりながら読んだ。
そして、主人公は7年前に妻と死別しており、ともに過ごしたころを回顧するシーンもある。
レースへの思いを綴るところも、妻との思い出を綴るところも、ディック・フランシス自身の言葉なのではないかと思うくらい、自然で、そして切実であった。
小説のプロットもよくできていて、シリーズのなかでも上位に入る出来栄えだったと思う。
ただ、最後に主人公が悪い奴を殺害するところだけはちょっと引っかかった。なんとなく、ディック・フランシスらしくない終わり方だったような。。
あー、それにしても、これであと読んでいないフランシス作品は、のこり2つだ。
読み終わってしまうときのことを考えると、なんだか寂しいなあ。
Posted by ブクログ
競馬シリーズ41作目。
法廷弁護士であるメイスンは、障害競走のアマチュア騎手でもある。
身重だった妻を亡くして七年、仕事とできるかぎりの乗馬にレースに
明け暮れる毎日。
だが、一緒にレースを走ったトップジョッキーが殺され、
別のジョッキーが犯人として逮捕される。
容疑者からは自分の弁護をしてくれと頼まれるが、
事件前のことを証言しなければならないかもと渋っていた。
そこへ老父の写真と共に、弁護を引き受けて負けろと言う脅迫の手紙が届く。
その後も執拗に裁判に負けろと電話をしてくる脅迫者は誰なのか。
殺人の真犯人なのか、なぜジョッキーを殺したのか。
被害者の家から仔馬が産まれた時の写真がなくなっていたので、
仔馬のすり替えか、出産時期のごまかしだろうなということは見当がついた。
このシリーズにしてはかなりわかりやすい馬犯罪だったので。
とはいえ、犯人を追い詰める法廷の場面は見ごたえ、いや読みごたえがあって、
リーガル・ミステリーとして圧巻だった。
さらにはラストでメイスンが、
自分や自分の老父に暴力をふるい、陪審員を脅して法による秩序を損ない、
自分と恋人の将来を脅かす敵を、
過剰防衛と自覚しながらもとどめを刺した場面が印象的だった。
いまさらながらこの競馬シリーズ、
ミステリーであるとともにヴァイオレンスであることに気が付いた。