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【競馬シリーズ】弁護を引き受けろ。そして裁判に負けろ……アマチュア騎手で弁護士のメイスンは、ライバルの騎手を殺害した容疑で逮捕されたミッチェルの依頼を受けた。その直後から奇妙な脅迫が彼を脅かす。時を同じくして、逆恨みをしたかつての依頼人がメイスンを襲撃してきた。ふたつの事件には関連があるのか? 恐怖と職業倫理の間で揺れ動くメイスン……競馬シリーズの興奮にリーガル・スリラーの醍醐味を盛り込んだ巨匠の意欲作!
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Posted by ブクログ
思わずうなった。 ディック・フランシス名義のどの著作よりも、面白い。 フェリックスが存命な限り、楽しませてくれそうである。
ディック・フランシスが一度ぺンを折った、いやさ、折りかけたのは、メアリ夫人の逝去が、ディックの心に投げかけた痛手が重すぎ大きすぎたためだろうと思われていた。それ以上に、メアリ夫人はずっとディック作品に共著とされてもおかしくないほど作品に深く関わっていたと伝えられる。 ディックの作品には、毎作毎...続きを読むに異なる職業の主人公が据えられるが、その職業に応じて作品世界は彩色される。いわば競馬界とミステリ界しか知らない(おっと、飛行機の世界も精通していたっけ!:「飛越」参照)ディックという作家が、世界の様々な職業、別の舞台に小説の題材を求められるのも、メアリのリサーチによるものだったと言われる。 画家、カメラマン、保険調査員、ネゴシエイター、運転手、映画人、鉄道マン、銀行マン……数限りない職業を描いていたディックが、ついに本書では法曹界に目を向けた。しかもメアリ夫人の手助けなしで。 しかも驚いたことに、いやこれこそがディックという作家の誇りでもあるところなのだが、ロウヤー(法律家)にとっては法に基づく行動を取ることがいかに誇り高き行為であることなのかまでをも描き切ってしまうところである。下手なリーガル・サスペンスが書き切っていない尊厳に値する場所をまで描き切るところである。この作家、息子との共著となり、メアリ夫人を失って以降も、少しも変わらず、唸らせてゆくのである。全く! 本書には、ディック・フランシスのピーク時そのものがそのままの姿で詰まっているように思う。理不尽な敵。執行される暴力と威嚇。脅え、そして戦おうとするが、更なる暴力に曝される罪のない犠牲者たち。法を曲げろと脅迫される主人公は、敵への攻撃に転じてゆく。暴力はまた振るわれエキサイトしてゆく空気の中で、尊厳と誇りを闘志に変えて。 そうした人間の行動、方向、意志力といったものを軸に馬力を放ちながら、ディックの作品はトラックを走り抜けてゆく。障害を飛び越える。時には落馬や転倒によって大きな深手を負うことがあるが、それでも意志力により負傷は癒える。そうして、複雑に絡み合う陰謀の構造に小説は辿り着く。そのミステリとしての要素もしっかりと小説の核になってゆく。 ミステリとハードボイルドを兼ね備えた作品の完成度は、今も全く一歩も譲らぬ妥協のない産物として保障されており、年に一度だけ世界に向けて出荷される。職人が丹精込めて作り上げた食材のように。世界の読書グルメが、果実のように作品を頬張る。満悦の笑みがこぼれる。 エクセレント!
ディック・フランシスによる競馬シリーズの41作目で、息子であるフェリックス・フランシスとの共著2作目になります。 一度は筆を置いたディック・フランシスが前々作の『再起』で復活しました。 そして前作からは息子さんと共著となったようです。 競馬シリーズは主人公の職業は毎回様々で、でも何がしか競馬界と関係...続きを読むをもっているというのがお約束で、今回の主人公は弁護士でアマチュア騎手です。 この弁護士が仲間のプロ騎手の殺人事件の裁判に巻き込まれていきます。そして弁護を担当して必ず裁判に負けるように様々な圧力がかけられます。 この圧力に屈するのか…それは、是非読んでみてください。 今回の主人公はいまいちタフな感じが無いのですが、正義を貫く姿勢が良かったです。 共著という事、翻訳の方が変わった事、これらによる若干の違和感は無くも無いですが、作家さんの世界ではあまり聞かないですが世襲に近いものになっていくように思います。 話の終わり方については賛否両論ありそうです。納得は出来ませんでしたが、ある意味スッキリはしました。
長年にわたり、ともにヒット作を生み出すパートナーであった最愛の妻メアリーさんの死後、5、6年の沈黙を破って、2006年に復活したディック・フランシスの、復活後、3作目。 主人公は、弁護士であり、かつアマチュア騎手。 仕事に誇りを持ち、なおかつレースに出ることを心から愛している。 「これぞ、ディック...続きを読む・フランシスだ」とうれしくなりながら読んだ。 そして、主人公は7年前に妻と死別しており、ともに過ごしたころを回顧するシーンもある。 レースへの思いを綴るところも、妻との思い出を綴るところも、ディック・フランシス自身の言葉なのではないかと思うくらい、自然で、そして切実であった。 小説のプロットもよくできていて、シリーズのなかでも上位に入る出来栄えだったと思う。 ただ、最後に主人公が悪い奴を殺害するところだけはちょっと引っかかった。なんとなく、ディック・フランシスらしくない終わり方だったような。。 あー、それにしても、これであと読んでいないフランシス作品は、のこり2つだ。 読み終わってしまうときのことを考えると、なんだか寂しいなあ。
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