あらすじ
奇才・阿部共実の原風景を収めた作品集。「空が灰色だから」単行本未収録のオールカラー2話(「灰色」「乙女心」)、web連載作「ドラゴンスワロウ」、デビュー作「破壊症候群」、描き下ろし作「デタジル人間カラメ」、さらに「あつい冬」「大好きが虫はタダシくんの」を収録。
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Posted by ブクログ
話の軸が多種多様で、とても満足度が高い短編集でした。
・ベースが灰色なのがらしさな「灰色」「乙女心」
・豪快な台詞量が異様に楽しい「ドラゴンスワロウ」
・大義名分に喜ぶ主人公が清々しい「破壊症候群」
・責任取ってくれと言いたくなる「あつい冬」
・デタジルという形容詞を八ページで説明した「デタジル少年カラメ」
・最後、歩き出したページが記憶に残る「大好きが虫はタダシくんの」
特に「ドラゴンスワロウ」と「あつい冬」が好き。表題作も素晴らしいのですが、途中参入の二人組が邪魔に感じました。こいつらがいると、そりゃ奈緒は志織を拒絶するしかないわけで。なんかもったいないな、と。
とはいえ、です。
Posted by ブクログ
表題作「大好きが虫はタダシくんの」は、インターネットに発表された、聞いた内容を復唱して理解する女子高生が主人公の作品です。
とあるSNSである漫画家さんがお勧めしているのを聞いて初めて読んだ時に受けた物凄い衝撃は落涙を禁じえないほどでした。
いじめがきっかけでそうなってしまったのか、それがきっかけでいじめにあっているのかは作品中では明らかにされませんが、復唱しないと聞いた内容を理解できないという障害を持ってしまった主人公が、その障害が周囲に与える影響を自覚していながら、聞いた内容を理解するために復唱せざるを得ないというジレンマと向き合っている姿がその作品のテーマとおよそ似つかわしくない絵で描かれています。
障害やいじめをテーマにした作品はいろいろありますが、特にこの表題作はそのテーマも絵柄もその組み合わせも異色の出来であると感じました。
Posted by ブクログ
異彩だらけのチャンピオンの中でなお、異様なセンスを放ち続ける阿部共実の短篇集。こういう人を鬼才と呼ぶのだと思う。
ずっと読み返したいと思っていたデビュー作『破壊症候群』が収録されているだけで、十分に買う価値はあるかと。
この収録順は意図的なんだろうなぁ。
『空が灰色だから』を知らないまま読むと、前半でほっこりして、後半に連続する理不尽な狂気に心を折られることうけあい。
というか、『ドラゴンスワロウ』が初読みだったので、どこかで容赦の無い何かをしかけてこないかと、途中まで思い切り身構えてました。
『大好きが虫はタダシくんの』は以前に読んでいたけど、やはりくるものがあります。この作者のオーソドックスな狂気をそのまま煮詰めたような一撃。
描きおろしの『デタジル人間カラメ』の狂いっぷりがおかしい。絵の不安定さやこの意味不明な吸引力が計算されたものだとヤバいし、天然のセンスだとしたらもっとヤバい。
チャンピオンの『空が灰色だから』の休載が、これを描くためのチャージ期間だったとしたらと思うとゾッとしますね……。