あらすじ
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アイデンティティを失ったのは国家だけではなかった。家づくりもまた欧米に憧れ全国画一的なニセモノに甘んじてきた60年間。温暖化時代に突入した今、その地域の材料と気候風土に基づき、近くの山の木、自然のエネルギー、現代の土壁「セルロースファイバー断熱材」、そして職人の技術を活かすことで、「省エネ」と「健康」とが両立する次世代仕様の家は実現できる。山口県・福岡県で年間150棟の環境共生住宅を手がける地域工務店経営者が、試行錯誤してたどり着いた“呼吸する心地の木の家”を優しく説き起こす。これから家を建てようとする人、暮らし方を再考したい人に贈る新しい「住まいの基本書」。
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Posted by ブクログ
本社を山口県下関市に構え、木を生かした家づくりに加え、太陽熱を利用したOMソーラーと新聞古紙を利用したセルロースファイバーによる断熱、吸音、調湿を得意とし、高気密・高断熱をうたう、住宅をラップで巻いたような新建材の住宅にはない、『呼吸する家』を売りとする地域工務店『安成工務店』の代表取締役、安成信次さんの家づくりに対する思いと、安成工務店の歴史について綴られた一冊。
戸建ての家づくりを考えて、完成見学会に何度かお邪魔している『安成工務店』のある見学会でディスプレイされていた一冊の本が目にとまり、パラパラとめくっていたのを覚えてくれていた担当者さんが家にわざわざ届けてくれたので、読んでみた。
日本の家づくりは、「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。」と600年も前に吉田兼好が『徒然草』に書いているように、夏に過ごしやすいように設計されてきた。一方、冬には囲炉裏や火鉢で暖をとったり、ただただ着こんですきま風に堪える生活をしてきた。
そこで、夏に過ごしやすいうえに、冬にも過ごしやすい家づくりを目指して、太陽熱を利用したOMソーラーと新聞古紙のセルロースファイバーをデコスドライ工法で隙間なく詰める技術を取り入れ、省エネかつ健康的な、住む人にも地域にも優しい家づくりを実現している。
また、安い建築を海外から輸入して省エネ住宅を建てるとコストは安くなるが、建築を運搬する際に多くのエネルギーを消費するうえ、廃棄するにもコストがかかり、リサイクルもできない建築を使うことが、本当の意味での省エネ住宅といえるのかと疑問に思い、安成工務店では、大分県上津江村の木材を使用し、人工林を整備し、環境にも配慮し、いつでもリサイクルできる自然素材で、運搬も最小限に抑えた、トータルでの省エネ住宅を考えた。
木を生かした家が他のどの住宅より優れているというわけでもないし、人には好みがあるし、洋風でモダンな家が好きな人もいれば、レンガ造の家が好きな人もいる。
個人的には、木の温もりを感じて、夏は涼しく冬は暖かい、自然素材の家が好みだ。
そのうえ、環境にも優しく、伐採した森林を人工林として管理し、森を再生している地域工務店に魅力を感じる一冊だった。