【感想・ネタバレ】中村修二劇場のレビュー

あらすじ

2014年のノーベル物理学賞を受賞した日本発の青色発光ダイオード(LED)の発明。今回の受賞で大きな貢献をした人物が受賞者の一人、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授だ。
これほどまでに毀誉褒貶が激しいノーベル賞科学者は、ちょっと珍しい。中村教授は世界有数の研究者であると同時に、日本の社会や企業のあり方に、いわゆる「中村裁判」を通じて一石を投じてきた人物。その鋭い舌鋒ゆえに、人物像や研究業績への誤解も少なくない。
青色LEDの発明、企業技術者から米有名大学の教授への転身、かつての所属企業を相手取り発明対価を争った中村裁判と、常に世間とマスコミの耳目を集め続けてきた中村教授の行動は、まさに「劇場型」といえるだろう。ただ、その過程で様々な思惑が複雑に絡み合い、メディアのアイコンとして塗り固められた結果として、多くのことが語られれば語られるほど、「本当の中村修二」の姿は見えにくくなっていった。
それぞれの場面で吐露した中村教授の思い、専門記者の視点、世間の見方はどのようなものだったのか。そして、科学者最高の栄誉を獲得した教授は今、何を思っているのか。
本書は、20年以上にわたって追い続けてきた「中村修二劇場」の全幕をトレースし、地方企業の技術者だった中村教授がノーベル賞を受賞するまでを当時の報道を中心につづった全記録である。

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Posted by ブクログ

 日経の技術系雑誌に載せたものをまとめるとともに、再度中村修二本人の肉声を掲載させたもの。
 それにしても科学の進歩には、私のような一般人ですら無意識的にその恩恵を得ているのであるが、この青色LED発光ダイオードは、気付けば世界を席巻し、さらにそれを技術の土台として多くの分野において計り知れない貢献をしていよう。
 この本を読んで、勿論理系的な話は難しすぎてわからないが、一人の不世出の天才が、いかに誰もいない野道を切り拓いていったかの一端を知ることができるともに、そこからの会社との裁判、一般技術者の会社における待遇、日本の技術立国としての危機と在り方への警鐘などなど考えさせられることが色々とあり、まさに表題の如く劇場のようである。
 また何度も本書に出てくるが、日亜化学創業者の小川信雄氏がいなければ、この世紀の大発明はありえないことだったとのことで、ある人物が何かを成し遂げるということを見抜き、一任する度量と慧眼を持つトップというのも学ぶべきとこである。

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2021年11月21日

Posted by ブクログ

青色LED裁判で技術者の待遇や地位向上に貢献したことは意義のあることだと思います。ただ、苦難の末、発明し、ノーベル賞を受賞しながら、いまだにヒール的な存在になっているのは可哀想な気がします。本当は日本が好きだからこそ、日本の将来を憂いていることには少なからず共感できました。

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2015年01月22日

Posted by ブクログ

祝ノーベル賞便乗本。日本の会社勤めで発明の対価が高いのは製薬メーカ。大手メーカは社内発明に対して見返りが薄い。日本の司法制度にも問題あり。米国の大学だと個人と大学で50%づつ対価を受け取れるというところもある。社会インフラとして、優秀な頭脳を日本に留めておくのが難しい状況になっている。

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2015年01月05日

Posted by ブクログ

改めて読むと、青色LEDの量産開発は偉業と思う。この開発は、大企業の環境からは生み出せないし、中村教授のマインドがないと生み出せなかった。サラリーマンエンジニアが、忘れているベンチャー精神を彷彿させてくれる。

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2014年11月18日

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