【感想・ネタバレ】地元学をはじめようのレビュー

あらすじ

いきいきした地域をつくるために必要なものは? 人と自然の力、文化や産業の力に気づき、引き出していくことであり、それを実行するための手法が地元学だ。1990年に水俣市ではじまった地元学は、いま全国へ広がっている。調べ方から活かし方まで、若い人が自ら行動して地域のことを深く知るのに役立つ実践型学問だ。

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Posted by ブクログ

吉本哲郎 (よしもとてつろう)
 1948年水俣市生まれ.宮崎大学農学部卒業.1971年,水俣市役所に入る.都市計画課,企画課,環境対策課課長,水俣病資料館館長をへて,2008年退職.現在,地元学ネットワーク主宰.国内外で,地元に学んで人・自然・経済が元気な町や村をつくる地元学の実践にあたる.著書に『わたしの地元学 水俣からの発信』(NRC クリエイティブ),『風に聞け,土に聞け──風と土の地元学』(地元学協会事務局)がある.

「地域にあるものを新しく組み合わせて何かをつくることと、料理をすることはよく似ています。知りあいの料理人がこんなことを教えてくれました。  「冷蔵庫をあけて、あれがない、これがないというのは二流だ。冷蔵庫をあけて、あるもので料理するのが一流の料理人だ」  私は、黙ってあたりまえにやるのが超一流だ、あるもので料理するのはふつうの人だとつけ加えています。  地域の扉をあけて、「あれがない、これがない」で料理するのは二流、あるものでやるのが一流、でも黙ってあたりまえにやるのがほんとうの超一流だと考えています。そしてそれはふつうの人たちなのです。どの地域にも、ふつうの超一流の人たちがたくさんいるのです。私が提唱する地元に学ぶ地元学は、そんな人たちに光をあてていくものです。」

—『地元学をはじめよう (岩波ジュニア新書)』吉本 哲郎著


「 「これまで、知識、学問を身につけ、大きな世界を知ること、そしてそこに出て行くことが知的で立派な人間のたどる道だと思って、暮らしてきた。しかし、その世界では一人の人間の役割は見えてこない。私たちは、役割の見える小さな世界に生きているほうがもっと幸せだったのではないか」(内山節立教大学教授・哲学者)」

—『地元学をはじめよう (岩波ジュニア新書)』吉本 哲郎著

「地元学は、あるものを探します。ないものねだりではなく、あるもの探しなのです。あるものは目に見えるので、写真を撮り、それは何かと、地元の人たちに聞いていきます。そして、驚いたこと気づいたこと別に絵地図をつくります。つくった絵地図を見て、これはどういうことなのかをさらに書いていきます。この取り組みから、それまで見えなかったことが見えてくるのです。そして結局は、自分が見えてくるのです。  地元学は、地域のもっている力、人のもっている力を引き出していきます。いま地元学で若者たちにおきていることは、地元学に関わるなかで、あるがままの自分をそのままあるものとして見ていき、自分のもっている力に気づいていることのように思えます。」

—『地元学をはじめよう (岩波ジュニア新書)』吉本 哲郎著

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2025年06月10日

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地域に目を向けたときに、いいなと思った考え方が「地元学」ということで読んでみた1冊。地元が好きっていう人たちのその「好き」を「見える形」に、さらに「地域の力」に変えていくために、どんな取り組みをした地域があったのか。とても興味深く読みました。最初が水俣だったことも良かったと思います。
印象に残った一節は「調べたものしか詳しくならない」。そこを人に任せたら、自分で判断もできないし、自分も調べることを大事に、あるもの探しから自分の住んでる地域でおもしろいことをしていきたいと思えた1冊でした。

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2013年09月08日

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 地元学って何だろう。地元学をすすめるために必要なこととは。
 まさに,「地元学」を始めようとする人たちのための入門書です。ですから,その取り組み方もしっかり書いてあります。まるで、小学校の総合学習の手引き書のようです。それくらい「すぐに使える」内容です。

 「地元学」について,著者は次のように述べています。

 地元学派,あるものを探します。ないものねだりではなく,あるもの探しなのです。あるものは目に見えるので,写真を撮り,それは何かと,地元の人たちに聞いていきます。そして,驚いたこと気づいたこと別に絵地図をつくります。つくった絵地図を見て,これはどういうことなのかをさらに書いていきます。この取り組みから,それまで見えなかったことが見えてくるのです。そして結局は,自分が見えてくるのです。(本書,p.213)

 過疎化が激しくて,もうぽしゃっていくしかないと地元の人が思っているような土地。そんなところで,どのように地域おこしをしていくのか。その方法論が示されています。もっとも,産業化していくようなところまでの指南書ではありませんが,いくつかの事例から,その方向は示してくれています。

 あたりまえこそすごいことだ。あたりまえにあるものを探そう。でも,外の人でないと気づきにくいから,外の人たちといっしょに調べよう。あるもの探しだ。何もないところから,新しいものは生まれない。新しいものとは,あるものとあるものの新しい組み合わせなのだ。(本書,p.23)

 地元の人たちにとっては当たり前すぎて空気のようになっているものこそ,その土地の特徴であり,他地域と差別化できる部分かもしれません。それを気づかせてくれるのは,地元の人ではなく外から来た人,観光客だったりするわけです。
 そういえば,娘の学生時代の友達が,はじめて釣りをしたときに大変感動していたことがありました。海の近くに育った娘にとっては小学生のころから釣りは当たり前。その当たり前に喜ぶ友達の姿。
 もうひとつ,こんな視点も大切だと思います。

 私は,経済には三つあるといっています。
1 お金の貨幣経済
2 手伝いあう結(ゆい),もやいなどの共同する経済
3 家庭菜園で野菜をつくり,先祖に供える花も育て,海・山・川の幸を採取して食べたりする自給自足の経済
です。豊かさはお金だけではなくて,共同と自給自足の経済の総和であったはずなのに,いつ,お金だけが豊かさを計る尺度になってしまったのでしょうか。(本書,p.14)

 お給料だけ見ると田舎暮らしはそんなにたいしたことはないかもしれない。でも,ゆったりした自分の家に住み,海や山で遊び(採取し),ご近所からお裾分けを頂いたりすることまで含めると,なんと豊かなことでしょう。

 じつは,地元学はポジショニングのことなのです。自分がいまどこにいるかわかるから,自分が見えてくるのです。やることも見えてくるから,自信がついてくるようです。(本書,p.210)

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2021年02月10日

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ネタバレ

大事なことは住んでいるところを住んでいる人が説明できること

アイデンティティ閉塞症

変化をゆっくり馴染ませるためには地域と自分を知り地域の個性や特徴を把握していること、そうやって自分の地域に自信を持つことが大事。

あるものを活かす。足元にあるものを確認し意味を把握して昔ながらの知恵特風を含めて新しく組み合わせていく。地域の持っている力と人の持っている力を引き出す。

事実に驚け、それは何故かと深く考えよ

地元にあるものを探したら次にそれはどういうものなのかを深く考えていく。見えるものからそれまで見えなかったことをわかるようにしていく。


地域の人にこれはなんですか、なんと呼びますか、何に使いますかと聞く 地元の人の言葉で記録する

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2020年05月04日

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著者は熊本県水俣市環境課の職員をされていた方です。

本書は、水俣病の話から始まります。日本三大公害のひとつとして、小学生で習うものになっていますが、その実情は言葉では表すことができません。
本書は、岩波ジュニア新書ですが、そういったところは包み隠さず書かれています。差別、農作物、海産物、今でさえ、この課題は抱えています。

著者はその背景が基として、地元学というのを提唱しています。

いきいきした地域をつくるために何が必要なのか?ということに対し、地域のもつ人と自然の力、文化や産業の力に気づき、引き出していくことだと説明されています。
それを実行するための手法・地元学であり、今後より活性化するとのことです。
本書は、地域の方との関わり方、調べ方から活かし方までを説明されています。学生時代のフィールドワークの考え方にも似ていて、それの学ぶ上では本書はオススメなのだと思いました。

この地元学は、今後の地元、地域発展に向けて、考える上で必要な考え方だと感じました。

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2012年05月07日

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熊本県水俣市で、水俣公害後の地域復興に取り組んだ、実践例。

地名が病名にもなった水俣病。その発生地で「もやい運動」にはじまり、地域での「あるある発見」活動に着手。

地域の水脈をたどる活動は、企業活動による廃水で発生した問題が、実は水脈に依存する住民生活のなかにも潜在してはいないのかとの、問いか。

法学部出身の自治体職員なら手がけない課題かも。農学部の《モノつくり思想》が開花した。岩波ジュニア新書の一冊。

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2010年10月06日

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筆者は、水俣病で疲弊した町の再生のために奔走した吉本哲郎氏。

私は、ソーシャルワーカーとして地域づくり(ふくしのまちづくり)に従事しておりました。
ソーシャルワーカー界隈ではあまり聞こえてきませんが、「土の人」と「風の人」という言葉があります。

「地域の風土と暮らしは、外的要因・内的要因による変化を常に受けている。地元の人たちは、地域を守り育てていく当事者である。地域の持っている力・人の持っている力を引き出すことが、外の人たちの役割である」
地元の人たちを『土の人』、外の人たちを『風の人』と呼ぶことができ、両者が協力することで地域の良さに気づくことができます。

地元学が誕生した熊本県水俣市という地域社会は、当時混乱の極みにありました。世界に類例のない産業公害が発生し、多くの人の健康と生命が奪われました。
さらに、患者たちは中傷(根拠のないことを言い、他人の名誉を傷つけること)・偏見・差別にさらされ、市民も水俣出身というだけで結婚ができない・就職ができない。水俣の名前では農産物は売れないなど、世間からいやな目にあいました。

これではいけないと、熊本県と水俣市、市民が一体となって、1991年7月から動き始めました。
自治的組織「寄ろ会みなまた」をはじめとした自治的な動きが活発になった背景には
・水俣病について研究した人だけ詳しくなり、住んでいる私たちは詳しくならなかった。だから、多くの水俣病患者が苦しんでいるのに傍観者になり、中には偏見の目で見る人たちもいた。
・下手でもいいから自分たちで調べていこう。調べた者しか詳しくならない。

と、地域が元気になるために、ただ住むだけの住民から、地域を守り育てていく当事者としての意識を持っていく手法として地元学があることが本書で分かりました。

また、水俣病という負の遺産はあると認めて、ないものねだりという「愚痴」を、あるもの探しという「自治」に変えていったのが水俣でした。

地元学は、3つの元気を作ることを目指しています。
・人の元気
…水俣再生は「もやいなおし」という、壊れてしまった人と人の関係をやりなおすことから始まった。人の気持ちがすさんだままでは、町の再生はおぼつかない。
・地域の自然の元気
・経済の元気
…お金の貨幣経済・手伝い合う結やもやいなどの共同する経済・自給自足の経済

特に大切なのは、気持ちの再生である「もやいなおし」、それは「人それぞれの違いを認め合い⇒人と人の距離を近づけ⇒話し合い⇒対立のエネルギーを創造するエネルギーに転換」するという原則です。
未来に希望を描き、環境都市づくりに果敢に挑戦できたのは、この原則があって、住民協働の心が育ったからだと言います。

述べてきたことは第一章部分で、以降は具体的な『地元学』の実践について書かれています。
具体的な手法が知りたい方へも、参考になる1冊と思います。

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2025年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

水俣市などを具体例として、地元や田舎を活性化させるための工夫の仕方のひとつとしての地元学について知れた。地元学で、地方にあるものを見つけると地方への愛着が湧き、地元に留まるようになったり、住民が活き活きしたりすることに驚いた。実際私が小学校の時に学区探検に行き、校区への理解が深まり、校区が少し好きになった経験があるので、小学校の時の校区探検の意味のひとつに気づくことが出来たと思う。

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2019年12月23日

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