【感想・ネタバレ】A3 上のレビュー

あらすじ

【第33回講談社ノンフィクション賞受賞作】判決の日、東京地裁で初めて完全に「壊れている」麻原を見た著者は愕然とする。明らかに異常な裁判に、誰も声をあげようとしない。麻原彰晃とその側近たちを死刑にすることで、すべてを忘れようとしているかのようだ―戦後最凶最悪と言われたオウム事件によって変わってしまった日本。麻原とオウムを探り、日本社会の深層を浮き彫りにする。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

公平な裁判をしてくれていると国民が信じている裁判所。案外、世間の意見に迎合しやすい機関なのだと本書で知った。もちろん麻原元死刑囚が行ったことは極刑に値するものだけど、公平な精神鑑定の元に裁判が行われていないというのは知らなかった。下巻も楽しみ

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2019年02月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

p.46(1.傍聴)
魔女狩りに限ったことではない。集団となった民意にはそんな残虐な側面がある。近代以前のどの時代にも、あるいは世界中のどの地域にでも、アンフェアで取り返しのつかない裁判はいくらでもあった。多くの孤立した罪なき人が、集団によって正義の名のもとに処刑された。だからこそ近代司法は、「あらゆる被告や容疑者は裁判で有罪が決定するまでは無罪を推定される存在として扱われるべきである」とする無罪推定原則を、デュープロセス(適正手続き)や罪刑法定主義と並べながら、最重要なテーマと定めている。

p.101(4.弁明)
それはこの社会の願望である。もし彼らが普通であることを認めるならば、あれほどに凶悪な事件を起こした彼ら「加害側」と自分たち「被害側」との境界線が不明瞭になる。それは困る。あれほどに凶悪な事件を起こした彼らは、邪悪で凶暴な存在であるはずだ。いや邪悪で凶暴であるべきだ。

p.115(5.弁護)
オウムは多くの異例を慣例にした。例外を前提にした。だからこそオウムによって危険意識を煽られた日本社会は、特に「罪と罰をめぐる意識と座標軸を、それまでとは大きく変えた。」

p.148(7.真宗)
「親オウムでもない」とか、「もちろん信者でもない」などと、言わずもがな
のことを彼が補足せねばならないこの現状に、今の日本社会の傾斜が表れている。

p.265(14.鏡像)
…時おり思う。まるで鏡のような男だと。信者は麻原の本体を見ていたのではなく、麻原という鏡に映る自分自身を見ていたかのようだった。だからこそ信者によって、その印象はばらばらで決して収束しない。

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2013年05月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 数年前に一度読んだのですが、「忖度」という言葉が流行語となった昨年辺りから気になり、教祖の死刑執行を機に再読することにしました。

 下巻の最後は以下の言葉で締めくくられていました ── “いずれにせよ麻原は、おそらく数年以内に処刑される。〔中略〕そのときに自分が何を思うのかはわからない。でもこの社会がどのような反応をするかはわかる。それはきっと、圧倒的なまでの無関心だ。”
 「数年以内に処刑される」という部分はちょっと外れましたが、「圧倒的なまでの無関心」ということについては本当にそのとおりでした。

 著者の主張は概ね次のとおりです。
① 目が見えず側近からの報告以外に情報源を持ち得ない麻原とその意向を過度に忖度し偏った情報を提供する側近とが相互に作用しあって、教団が暴走してしまった。
② 事件に不安を持った大衆は分かりやすい情報を求め、メディアは大衆の求める単純なストーリーに合致した情報のみを報道した。この結果、オウムは絶対悪であるとの世論が形成された。
③ 麻原が訴訟能力を失っていたにもかかわらず、世論に圧された裁判所が拙速に死刑を確定したことで、真相を解明する機会が失われてしまった。

 これらの中でも特に②には注意すべきだと思います。情報を求めた大衆と、大衆の意向を忖度して恣意的な情報を与えたメディアとの関係は、ちょうど教祖と側近の間の構図と同じです。我々が自分と異質な何かに対して不安を感じ、ポピュリズムがそれを一押しすれば、その「異質な何か」が「悪であり敵である」と我々は簡単に信じ、攻撃さえします。つまり、我々だって「オウム化」し得るのです。

 国民の圧倒的多数がオウムをひたすら憎悪することで思考停止していた時期に、多くの取材に基づいてオウム事件を異なる角度から捉えようとした著者の姿勢は貴重だと思います。事件発生から20年以上が経過し、当時の記憶は人々の間で薄れて行くでしょうが、一方で事件を冷静・客観的に見ることができるようになってきているはずです。そのような中で本書を読み、事件についてもう一度考えてみることは意味があると思います。

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2018年09月23日

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