あらすじ
失われた過去の記憶が浮かび上がり、男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活に忍び寄る新たな魔手。名探偵・御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリー『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。
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Posted by ブクログ
記憶喪失モノって、なんでこうもドキドキするんだろう。九広の家の「生まれる前の胎児の泣き声のような、糸を引く不安の叫び」「生まれる前と死んだ後とはこんなふうに結ばれ、繋がっているのかと誰もを気づかせずにはおかない、悲しみとも嘆きともつかぬ霊波の躍動が、輪を作り、ひゅうひゅうと音をたててこの息の詰まるような空間を駆け巡っていた」の描写など、読んでいて、実際胸の窄むような思いがした。一体何なんだという興味と不安と、好奇心にドキドキする感じがたまらない。
好きなシーンについて
一つ目は、
「ねえ君、一目惚れって信じるかい?」
「信じるわ。だって私も経験あるもの」
「そう?」
「うん」
「いつ?」
彼女はちょっと俺を見てから目を伏せ、恥ずかしそうにこう答えた。
「ゆうべよ」
のシーン、胸キュンすぎた!このまま月9持っていこう!!
二つ目は真相ターンの、鉄の馬に跨り、颯爽と夜の荒川土手に現れた御手洗さん。
このシーン、すごくカッコいいのに、
「淋しかった、一人ぼっちだったからな。君などには永遠に解らない感情だ。自分にとってすべてだった良子との生活、それを汚されるってことがどんなにひどいことか、君には解るまい!」
「君、僕だって一人ぼっちだ。」
この、「孤独」を持ってる感じなの、たまらない。しかも「ナイフの前に身をかざした彼女の気持ちが分かったからさ」「君、僕だって一人ぼっちだ」とか、この辺の台詞、石岡君への告白か何か?
「君はきっと僕に謝りたくなるだろう。そうしたら、恥ずかしがらなくていいからね。僕は今夜も明日も、ずっと部屋にいるよ」、愛か?
いや、愛なのだろうな。占星術殺人事件でもポロッと言ってたけど、「僕の孤独は君が埋めてくれる」だから「君の孤独も僕が埋めたい」的な、そういう愛なんだな……。んんブロマンス!ありがとう(感謝)
三つ目は、細かいけれど「自分の涙で小さな水たまりが出来ていた。それを見ると、わずかに笑いがこみあげた。」最後の方のこの描写。共感できる。良いなあ。(ちょっとした描写なんだけど)。思いっきり泣いた後ってちょっと自分が滑稽に思えて、自己嫌悪とかそういうことも忘れて、自然と笑えるんだよね。生きるための人間の本能だろうけど、石岡君、そのまま幸せになってくれ!
他にも好きなシーンはもろもろありますが、とにかく、クライムサスペンスから「いつもの」御手洗シリーズ、ミステリに収斂していくのが最高でした!良かった!
Posted by ブクログ
御手洗潔と石岡君の出会いのお話。
所謂本格ミステリとは違うけど、記憶を失くした男の行動を辿る形で次々物語が発展していくのが面白かった!
…と言っても前半部分は、記憶を失くすことがどれほど恐ろしいかや千賀子の日記の内容がショッキング過ぎて読んでてだいぶ辛かったから面白いというよりはハラハラした…
最後に名前が出て全部思い出すところ良かったなぁ〜。途中で薄々気になってはいたけど記憶を失くした主人公が石岡君だったとは…!
Posted by ブクログ
今後の創作の参考資料として読んだ。大変読みやすい。人間関係(登場人物)は広げすぎず、真相に至る為のヒント・伏線などはしっかりと確立している。しかして探偵役の推理は一見突飛に思えるが、物語が進むにつれ、頷きざるを得ない不思議がある。登場人物の末路を予言しつつ、それを繰り返したり下手に防いだりせずひとつの診断結果として、また伏線として残しておくのがお洒落だ。
Posted by ブクログ
御手洗と石岡の出会いと絆が生まれるエピソード0の物語。御手洗のどんな行動にもついていく石岡の理由が分かり、改めて御手洗と石岡の関係が好きになりました。
これは、御手洗シリーズを読んだり人絶対読むべき作品です!
島田荘司、真のデビュー作!!
御手洗潔シリーズが大好きで、ずっと読み続けています。
「異邦の騎士」はシリーズ長編としては3番目ですが、時系列的にはそれより前のお話し。
実際の執筆も最初に書かれたので、文章も若々しく感じますね。
何度か読み返してますけど「主人公、石岡君だったの!!!」っていう驚きが味わえるのは初見だけなのが残念(笑)
Posted by ブクログ
「記憶喪失の人に過去を誤認させ、人を殺すように仕向ける」というのは、本来大胆で意外性のあるトリックなのだろうと思うけれど、あまりにお話として綺麗なので、逆になんだか大したことのないように思えてきてしまう。また、主人公が精神錯乱している状態のにあるときの一人称視点の文章は、筆が乗っていて描写が多彩だが、ミステリとしての面白さには繋がっていないように思えた。
御手洗潔についても、素の人間性を一旦置いておいた探偵としての立ち振る舞いは全体として穏やかで、ミステリ小説として読むとなんとも物足りず、人情小説として読むとありきたりに思える。
Posted by ブクログ
全体的にはとても面白かったけど、ネタバレしたあと、それまでに腑に落ちなかった部分がすべて回収されず残ってしまったのでそこが残念だった。
こちらで想像を膨らませて辻褄を合わせることもできるけど、合わせるのではなくて自ずと合って欲しかった。当時は免許証のケースは一種類だったのだろうか?たまたま二人の免許証のケースが同色だったのだろうか?もし色違いなら西尾久と西荻以前の問題になってしまうのと、九広にたどり着いたときに感じた既視感。これはやはり思い込みが見せた産物なのか。
Posted by ブクログ
おもしろかった。序盤からのめり込んで読んだ。
ある意味島田荘司的容疑者Xの献身みたいな。(話は全然違うけど)
他に比べてトリックとかミステリー要素低めに思うので-1。
Posted by ブクログ
まさか主人公=石岡(ワトソン役)の過去編だとは思いもしなかった。
御手洗と石岡にこんな過去があり絆が生まれたというのはエモいが、石岡は故意ではないにせよ殺人を行っているわけで、少し見る目が変わってしまう。