【感想・ネタバレ】カメラ・オブスクーラのレビュー

あらすじ

裕福で育ちの良い美術評論家クレッチマーは、たまたま出会った美少女マグダに夢中になるのだが、そこにマグダの昔の愛人が偶然姿をあらわす。ひそかに縒りを戻したマグダに裏切られているとは知らず、クレッチマーは妻と別居し愛娘をも失い、奈落の底に落ちていく……。あの『ロリータ』の原型であるナボコフ初期の傑作。英語版と大きく異なるロシア語原典の独特の雰囲気を活かし、細部の緻密な面白さを際立たせた野心的な新訳。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ロリータを読んでから、ナボコフという作家に興味がわいて買いました。
前作よりも読みやすく、比喩もロリータよりかは息をひそめている感じがしてすらすらと読めました。


後半の盲目になった時の絶望感はすごかったです。描写から今見えている視界がきえたかのように、その時に感じる肌の風の感触とか、遠くの衣擦れの音とかも聞こえてくるような気がして・・・
読後感がすごいです。何とも、自らまいた種というべきなのでしょうけれど、娘と妻を捨てて他の女の所へ行ったとしても、この最後はあまりにも酷過ぎる。
恐怖がぞわぞわと眼球を撫でているかのような感覚。
クレッチマーも悪いけど、後半のマグダとホーンを見ていると微々たるものに思えます。

ドリアンナ・カレーニナの名前ににやり、としていた頃が懐かしいです。

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2012年02月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

帯に書かれている通り「ロリータの原点」ともいえる作品。
妻子を持った中年の男が16歳の少女に惚れて家を出て堕落していくというか少女マグダの悪戯により強制的に堕落させられていく姿が描かれている。
ただの、少女との楽しげな不倫の恋だったら芸がないんだけど、マグダがなかなかのあばずれで、その未熟ならではの底知れない悪さが後半どんどんエスカレートして怖くなった。

特にクレッチマーが盲目になったのをいいことに愛人を一緒の家に住まわせ、せめて自分の部屋の色彩を教えて欲しいと頼むクレッチマーに愛人に吹き込まれたでたらめな色を教えるあたり、ぞくぞくした。ステレオタイプではない、悪意を悪意とも思わず振舞える本物の悪女。

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2012年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あの「ロリータ」のナボコフの初期作、ということで期待して読んだけど、
レトリックに関してはやっぱり「ロリータ」ほどではなかった。
初期作だからこそだと思うけど。ロシア語作品だし、訳の問題もあるかな。
良くも悪くも読みやすい作品。
「ロリータ」の前にこれを読んでおけば、もっと早い段階で「ロリータ」も楽しんで読めたかもしれない。

ストーリーは特にどうということもなく
クレッチマーが普通の思考回路を持った人だったり登場人物が割と多かったりしたせいで、
ラストまで現世離れせずにストーリーが進んでいった気がする。
(だからあまりレトリックにのめり込めなかったのかもしれない。
「ロリータ」は完全にハンバートとロリータの二人の世界で、
難解な描写や比喩も全部ひっくるめて「世界」を形作っていたんだな、と今になって思う。)

ナボコフの作品は、細部を読み解くところに楽しみがある。
独特の比喩とか表現はもちろんだけど、
例えばマグダの蛇のイメージとか。(これはちょっと露骨すぎるなとも思ったけど)
そういう意味ではこの作品も相当読みごたえはあると思う。
登場人物も多いし、繰り返し読んだらまだまだいろんな発見が出てきそうだ。

解説によると、この作品のテーマは「見る」「見えない」らしい。
要素はいたるところに。
私がいいなと思ったのはマグダがクレッチマーの家に押しかけた後、
書庫の隙間から赤い裾が覗いていて…のくだり。
割と象徴的な部分だと思った。
結局クレッチマーは何を見てて、何が欲しかったんだろう。


「カメラ・オブスクーラ」と「ロリータ」だったらやっぱり「ロリータ」の方かな、と私は思う。
もちろん細部の凝りようは言うまでもなくなんだけど、
ドリーとマグダなら断然ドリーの方がすきだから。
マグダの悪女っぷりがただの年を取った悪女と同じそれで、なんとなくしっくりこない。
成熟しきれない素朴さとか、素朴ゆえの残酷さとかそういうものは幼いものの特権だと思う。
そういう幼さを存分に発揮してるドリーの方が私には魅力的だった。


全然関係ないけど「カメラ・オブスクーラ」っていうとどうしても
楠本まきと有村竜太郎が先に出てきてちょっと中二病っぽいイメージを持ってしまう。

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2013年09月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おもしろい。芸能人の不倫報道などが気になってしまう人にはたまらないだろう。
ナボコフといえば「ロリータ」だが、本作もロリコン親父が未成年の美少女に翻弄されてしまう物語だ。
裕福な美術評論家クレッチマーが、美少女マグダに夢中になる。妻子を捨ててマグダと一緒に暮らし始めるが、そこにマグダの元カレであるホーンが戻ってくる。
マグダとホーンの関係を知らないクレッチマーは、マグダとの生活の中にホーンが出入りすることを許してしまう。マグダとホーンは、クレッチマーの目を盗んでいちゃいちゃし、しまいにはクレッチマーの財産を奪う計画まで立てはじめる。
偶然、マグダとホーンが自分を騙していたことを聞かされたクレッチマーは逆上し、事故が起こる。そのせいでクレッチマーは失明する。しかし、クレッチマーはマグダを疑った自分に罰がくだったのだと反省する。クレッチマーはマグダとふたりで療養のために田舎の家で暮らす。しかし、クレッチマーが失明しているのをいいことに、ホーンもその家にもぐりこみ、マグダといちゃいちゃする。
クレッチマーの義弟マックスが乗り込み、クレッチマーを連れ出す。
自宅に戻ったクレッチマーはマグダへの殺意を抱いていた。
やがてマグダの居場所を知ったクレッチマーは、マグダを殺しにいくが、逆に自分が殺されてしまう。
解説には、これは「見る」「見ない」についての小説だと書かれている。
カメラ・オブスクーラというタイトルからもそれは想像できる。
クレッチマーは、マグダの中になにを「見た」のだろう。
おそらく、彼がそれまでの人生において見ることのなかった「女」を見出したのだ。恋愛の対象となる「女」だ。それはもしかしたら「人生」と言ってもいいかもしれない。それこそ命をかけてのめり込む「人生」。熱意を向ける対象を見たのだ。そういう意味では、この作品は、宝を求めて冒険する男の物語といってもいいかもしれない。

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2020年03月20日

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