あらすじ
医療の世界でも、2011年頃を境にビッグデータ(bigdata)関連の医学論文が急激に増えてきた。論文の内容をみれば“Publichealth”関連が最も多く、これに続くのが“Healthcare”に関するものだ。
とはいえ、ビッグデータの実態はと問えば、まだ誰も確たる答えは持っていないのではないだろうか。
本書では、医療におけるビッグデータの意義にフォーカスし、医療ビッグデータが産み出す価値についての考察をまとめた。本書が、日本における医療ビッグデータ活用の嚆矢となれば幸いである。
~「はじめに」より抜粋~
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Posted by ブクログ
医療ビッグデータを体系的に知ることのできる書籍は、2014年5月現在において唯一無二である。
日本においても、電子カルテやレセプトなど集積されてきているものの個別単体で使用され、データ間の連携はできていないのが現状である。
欧米における、疫学、医療経済、副作用検知など事例も紹介され、これから取り組むべき課題も見えてくる。
医療で扱うデータは交絡因子も多いため、医療を知るデータサイエンティスト「ヒューマン・データサイエンティスト」の育成も急務であると訴えていた。
Posted by ブクログ
統計上の標本抽出ではなく、全量の調査が出来るようになり、相関関係を導き出す事がしやすくはなったが、解釈をするための専門領域の知識は必要とのこと。データ解析自体にも、ドメインナレッジが必要だし、解釈においても経験なりが必要とな。
データの収集という観点での国内での課題は、レセプトデータは取れるが、医者による診断データなどはなかなか収集して知見を得られる状態になっていないと。
具体的には、以下の情報は得られているらしい。
「
そうしたデ ータの主なものとしては 、 「医療機関の診療情報 」 「保険者 (健康保険組合 、国民健康保険など )のレセプト情報 」 「薬局の調剤情報 」 「特定患者の登録情報 」の 4つがある
」
米国では、国民皆保険制度がない代わりに、保険会社がその機能を担っている分、データ収集と活用に積極的と言うのは、経済原理がリアルに働いていて、データ収集のモチベーションになっている点を理解して置かなければなるまい。
最近の国内ニュースとしては、IBM Watson が大量の癌治療論文を解析し、医者の手助けをして特殊な癌を患う患者の病名や治療法を支援したと言うものがあったが、本書で述べられている医療とビッグデータを具体的なユースケースとして世に出したのは、非常に素晴らしい事だと思える。
データの収集や分析ではなく、人類の生老病死に関わる問題を医療の側面でいかに充実させる事が出来るのか? が主題だと思うが、この領域は少子高齢化とビジネス化と言う観点で注目していきたい。