あらすじ
☆一冊でアイドルの基本がわかる!
メディアとの関係、アイドルを生み出す方法の変遷、芸能プロダクションというビジネスモデル。
「見出すゲーム」「支えるゲーム」「育てるゲーム」というアイドル消費の根幹。
古典的アイドルから現代アイドルまでを、それを支える仕組み・環境を含めて徹底的に論じる。
☆アイドルがわかれば日本経済がわかる!
アイドルと日本経済に相関関係があることは、「アイドルの時代」を景気循環に重ねて見れば一目瞭然だ。
アイドルブームは戦後経済成熟期と現代、つまり「行き詰まった」時代に起こっている。
では、行き詰まった時代の人々がアイドルを求める理由とは? 日本経済の来し方行く末とは?
☆東浩紀氏推薦!
「アイドルがいまなぜ支持されるのか、ようやくわかった。
半世紀の歴史を踏まえ、文化論と産業論を統合する“現代アイドル論の決定版”」
AKBグループ、ももいろクローバーZ、モーニング娘。、そして、あまたのアイドルがしのぎを削るアイドル戦国時代。
いまこそアイドルを、その起源にさかのぼって考えよう!
本書では、エンターテインメント産業の研究者にして現職官僚である著者が、文化・産業、そして経済・社会、二つの視点から「アイドル」に迫る。
【本書で取り上げるアイドルたち】
映画スターの時代を経て70年代に生まれたアイドルたち。
南沙織から山口百恵、キャンディーズからピンクレディー、そこに満を持して現れ、80年代アイドルブームの中心に立った松田聖子。
また、河合奈保子、中森明菜、小泉今日子といった聖子のライバル達。
そして、時代を作ったグループアイドル、おニャン子クラブ。
90年代、冬の時代の後にやってきた現代アイドルの時代。
AKBグループ、ももいろクローバーZ、モーニング娘。を軸に、PerfumeやBABYMETALからローカルアイドルたちまで、もはや挙げればきりがない。
【主な内容】
はじめに アイドルからこの国を考えよう
第一章 アイドルのメディア産業論
第二章 アイドルの消費論
第三章 アイドルの進化論
第四章 アイドルの国家論
第五章 アイドルの世界平和論
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
80年代アイドルの活躍した時代から、90年代の「アイドル冬の時代」を経て、モーニング娘。やAKB48、ももいろクローバーZといったグループが乱立し「アイドル戦国時代」とも称される現代に至るまでの歴史を、日本経済の変化から解き明かす試みです。
現代のアイドルを支持している人びとは、グローバル資本主義の流動性を前提としており、その点では宇野常寛のいう「資本主義ネイティブ」でありながら、グローバル資本主義のなかでエリートをめざす競争から距離を置こうとする「ヘタレマッチョ」だと著者はいいます。そして、こうした「ヘタレマッチョ」たちが自分たちの置かれている宿命を受け入れるべく鼓舞するような「アイドル」を支持しているという見解が示されています。
アイドルの歴史にかんする考察についても、また日本経済の見方についても、著者の議論は興味深く読みました。ただ、中産階級主義についての評価にかんしては、個人的に著者のように楽観的にはなれないと感じてしまいます。
中産階級が解体していくなかで、ほんらい国家に対して適切な距離を保っていたはずの大衆文化が「韓流」や「クールジャパン」といった国家的戦略のなかに組み込まれてしまうことにより、かえって国家間の摩擦が増幅される危険性を鑑みるならば、日本のアイドルがたどり着いた「ヘタレマッチョ」を元気づけ励ます存在という役割に希望を見いだそうとする著者の見解も、理解できます。しかしながら、こうした中産階級主義には「内」に対する抑圧的な構造を抱え込んでいるのではないかという反省をおこなうことも必要でしょう。このことは、かつて丸山眞男をはじめとする戦後の知識人たちを相手に「大衆の原像を繰り込む」ことの必要性を訴えた吉本隆明が大衆文化批評の世界に身を投げ入れるようになった際に、痛切に感じとっていた問題でもあったように思います。
とはいえ、「アイドル」という存在に熱中する人びとの意識に、国民経済的な観点からせまるという著者の試みは、じゅうぶんに成功しているのではないかと思います。