あらすじ
【第7回小林秀雄賞受賞作】国際的な免疫学者であり、能の創作や美術への造詣の深さでも知られた著者。01年に脳梗塞で倒れ、右半身麻痺や言語障害が残った。だが、強靭な精神で、深い絶望の淵から這い上がる。リハビリを続け、真剣に意識的に〈生きる〉うち、昔の自分の回復ではなく、内なる「新しい人」の目覚めを実感。充実した人生の輝きを放つ見事な再生を、全身全霊で綴った壮絶な闘病記と日々の思索。
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Posted by ブクログ
再読。知の巨人が、脳梗塞による半身不随を得て新たなる巨人として生を得るまでの魂の記録。
倒れて、動くことも話すこともできなくなった中で、再び生きることへの希求を見いだすまでの記録、後半はそんな新たな巨人の視点で過去を振り返り、国を動かし、「生きる」姿を描き出す。
初めて読んだ10年前は、前半の闘病記の印象が強く、後半はさらっと読んだが、年を重ね後半の方が心に残った。
Posted by ブクログ
『私は昨日までは健康だった。定期健診を受けても何もひっかかるところは無かった。それが一夜にして重度の障害者となり、一転して自力では立ち上がることもできない身となった。何をするにも他人の哀れみを乞い、情けにすがって生きなければならぬ。』
死の淵をさまよい、目覚めると重度の障害者になっていた。
毎日自死しようとするが、それすら叶わぬ。
その心情をありありと綴る。読むのがつらいページもあった。
障害者にとっての最悪の法改正についても記述している。
発症後180日以上たったあとはリハビリを受けることができないというものである。
リハビリすることを毎日の糧としている人がいること。
構音障害については、1年リハビリしてもやっと少し効果が出るくらいのものであること。
これらを考えると、このような法改正はありえないはずである。
あるいは正しく例外を定義しておくべきである。
そのようなことが蔑ろにされた法改正がなされてしまう現実についても記述している。
またそのような法改正に対して、44万人の署名を集めて政府に立ち向かうなど、すさまじいまでの行動力も見せている。
『重度の障害を持ち、声も発せず、社会の中では再弱者となったおかげで、私は強い発言力を持つ「巨人」となったのだ。
言葉は喋れないが、皮肉にも言葉の力を使って生きるのだ。』
もし突然障害者になったら僕はこのように行動できるだろうか。