あらすじ
男はひんぱんにうなされていた――彼のみる夢の中には恐ろしい顔をした男が現れ、彼の前に仁王立ちになるのだった。その男の両手は、たった今まで人間の内臓をかきわけていたかのように血にまみれている。そして今、その血まみれの手の男が現実の中に出没しはじめた。「俺は気が狂ったのか……?」広告代理店に勤め、家庭を愛する平凡なサラリーマンを襲った悪夢の正体は何か? 直木賞受賞作家が描く、戦慄と恐怖のスリラー・サスペンス。表題作ほか「血霊」「自恋魔」など4編収録。
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Posted by ブクログ
悪夢からくるパラレルワールド(?)から始まり、超能力を中心に描く、ちょっと怪談チックなSF短編集。超能力と言っても、テレパシー的なものやちょっとした未来予知という、現実離れ度合いは少なく、ほぼ現代ミステリといった作品がほとんどである。
その昔、仲間内でSFブームがあった際に、半村良も読まれていたのだけど、一部の作品は評価が高く、それ以外はそうでもなかった。本作は「そうでもなかった」の類なのだろう。超常現象によるダイナミズムが僅かで、人間関係の難しさや怖さといったところが本論になっている。
この歳になったら、怖さがわかるようになってきたので怪談として読めるが、導入の地味でドライな人間模様の描き方には、合う合わないが出そうな気がする。そのせいもあって、半村良作品を読んだのは中学か高校以来だ。
本作でやはり面白いのは表題作。それ以外は短編ドラマ的に脳内で映像化出来る人向け。半村良独特のカラフルな角川文庫は絶版なようなので、ミステリ的なSFが好きなオトナの人は、最近出ている電子書籍版を読まれるとよいでしょう。