あらすじ
バラバラ殺人事件の被害者は、みんなの知っている「チワワちゃん」だった。彼女にはたくさんの友達がいた。でも本当は誰も彼女のことを何も知らなかった……。表題作のほか「夏の思い出」「チョコレートマーブルちゃん」など六編を収録した珠玉の短編集。
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2019年1月に映画が公開された「チワワちゃん」などが収録された短編集です。
バラバラ殺人の被害者になった通称「チワワちゃん」。
ちょっといいなと思っていたヨシダくんの恋人としてミキの前に現れたチワワちゃんは
本当はどんな女の子だったのだろう?
友人たちの証言によって浮かび上がる、チワワちゃんの矛盾と孤独。
強烈な存在感と魅力で周囲を惹きつけ、華やかな世界に飛び込んでいったけれど
彼女が何をしたら満たされたのか、結局誰にも分からなかった。
登場人物たちがそれぞれの青春を終わらせるかのように
チワワちゃんと自分との関係を語るラストシーンは美しい余韻を残します。
その他、アホアホで楽しい学園ラブコメなども収録されていますが
改めて、もし今も岡崎京子が執筆活動を続けていたらどんな作品を描いただろう、と
思わずにはいられません。
感情タグBEST3
「チワワちゃん」は有吉佐和子の「悪女について」からヒントを得たのだろうか。
1人の女性が死に、彼女を知る人の証言のみで進んでいくという手法が全く同じ。
他の作品は、岡崎作品でありがちというか、他にも似たようなのあったなって感じ。
Posted by ブクログ
バラバラ殺人事件の被害者の身元が判明した。
うちにも泊まりにきたチワワちゃんだと、
本名をニュースで見て、最初わからなかった。
生前のチワワちゃんを知ってた人、つきあってた人たちが
集まって、偲びつつ語り合って、
チワワちゃんが東京都すいせんの白いビニールに断片を入れられて
投げ捨てられた海にいく。
思い出話からチワワちゃんがどんな子だったかを描写してて、
でもつかみどころのなさがあって、
ひどい殺され方をしたけれど、みんな明るくてクールで・・・
現代の人間関係がとてもリアルに描かれていて、面白かったです。
Posted by ブクログ
短編7篇。この作品は僕の中では岡崎京子の絶頂期の中の一つで、特に「チョコレートマーブルちゃん」と表題作の「チワワちゃん」にはこの人がこれまで書いてきたエッセンスのほとんどが入っていると思う。この頽廃的な感じ。バブル期。そして、それを読んでいるのはこれまた頽廃的な時代。バブル期とは対極に位置する今。これが意外とピッタリ符号し合っているというか、しっくり来る。ように久しぶりに岡崎京子を読んでいて、感じたこと。だったりする。(10/4/25)
Posted by ブクログ
チワワちゃんは バラバラにされて東京都すいせんの白いビニール袋につめられて死んだ 白いビニール袋を何重もかさねて東京湾にほうり捨てられたチワワ 可哀そうに一緒にプールにいった時も犬かきすら出来ず みんなに笑われてプンプンしながらクラランスの日焼け止めクリームをパラソルの下でぬっていた カナヅチのチワワだったのに(「チワワちゃん」)
「ギスギスにやせてカレン・カーペンターみたくなるの」「だれそれ?」「アメリカの女のこ 歌手でね」「お兄さんとうたっててね」「きれいな声でね世界中の人に愛されててね」「でもダイエットしすぎて死んじゃったの」「フーン」「もしあたし達が死んじゃったらどう言われるのかなあ」「んー 死因にもよるけど」「日本の女のこがね」「死んじゃった」「それだけよ」(「チョコレートマーブルちゃん」)
Posted by ブクログ
あたし達のやってることってクサくてヤリスギなのかな?
でもあたし達はそうしなきゃいけなかったんだ。
?チワワちゃん?
そうだ、結局誰も本当のチワワちゃんを知らない。
チワワちゃんが本当に寂しかったのか、本当に幸せだったのか、そんなの誰にもわかんないの。
そうやって生きて、そうやって死んでくんだ。
わかったような顔されるけど、わかられながら死んでく人なんているのかな。
こうやって書き残さなくちゃ。遺書を。
でも、何も残さなかったからこそチワワちゃんは美しい。
Posted by ブクログ
間も無く映画公開ということもあり再読。というか、もう何度読み返したかわからないくらい。「リバーズ・エッジ」とは違った意味で岡崎京子らしさ満載の作品集。
ふわふわとていた当時の時代感がよくわかる一冊。何となく毎日が過ぎていた当時が懐かしい。
Posted by ブクログ
岡崎京子はすごいなぁ。
何年経っても、すごいのが変わらないのがとってもすごい。
私がまだ若かった頃の空気を、感覚を、少し新しい気持ちで蘇らせてくれる。
若い時にも。そしてもう若くはなくても。違和感なく読めるマンガや小説は意外に少ないと知っている。私の中で岡崎京子と吉田秋生はたぶん、きっとずっといける!
しかし問題は母として子供に解禁するにはかなりデリケートなジャンルってことよね。
Posted by ブクログ
ああ、95年の空気だな、という短編集。
物語が終わった後に我々はどこへ向かうべきなのか、ということをいろいろな人が考えていた。なんでも無い日常へ戻ろう、と言った人は多かったのだけれど、岡崎京子もその一人だったのだなと確認できた。
僕らが日常へ戻れたかどうか、はまた別問題。
Posted by ブクログ
ある日バラバラにされてゴミ袋に入れられた遺体となってみつかった女の子は、私たちがあの時期いっしょに遊んでいた「チワワちゃん」だったーーー。
家に泊まりにきたことだってあるのに、考えみれば本名も知らなかったチワワちゃん。いつも笑ってたけどときどきさびしそうで、いろんな男の子と寝まくっていて、グラビアモデルからAV女優になって、ちょっとバカっぽくて胸の大きかった女の子。でも私たちはいったい彼女の何を知っていたのだろう?
犯人のわからないバラバラ殺人という題材を、ほろ苦い青春群像劇のように仕上げた異色の作品。
Posted by ブクログ
岡崎京子の短編集。
目次
LOVE,PEACE&MIRACLE
夏の思い出
チョコレートマーブルちゃん
GIRL OF THE YEAR
チワワちゃん
空を見上げるーあとがきにかえてー
好き?好き?大好き?
殺されたチワワちゃんの思い出を友人が語っていく中で構成されていくチワワちゃん像。
社会学的質的研究に頻出する「アイデンティティの多元性論」を地でいくような作品。
劇的な出来事ーー海の家での一時、花園探し、ガールオブザイヤー、友人の死ーーが起こるのに、起これば起こるほど登場人物も読者もからっぽ感が増していく、岡崎京子が繰り返し描く「退屈」が炸裂している。それは後書きで岡崎が述べる「こわいもの」の1つなのだろう。
それは登場人物が自らの立ち位置ーーマンガの中ーーを把握していることを表す台詞、現代思想用語による作者のコマへの介入、もってまわった言葉使い、引用によって表象されているのではないだろうか。(仮説)