あらすじ
待機児童問題の真実と
さらに早まる“保活”の現実
2013年に話題となった神奈川県横浜市の待機児童ゼロ達成。実はこれにはウラがあった――。保育所の補助金や児童館、学童保育、そして予防接種ひとつをとっても、すべて国会や地域の議会で決められる。子育てと政治は密接な関係にあるのだ。子育ての現場を長年取材してきた著者が、「子育てとそれに対する政治の対応」を多くのデータを交えながら検証し、日本の子育てを考える。保育新制度の認定区分などの中身や問題点にも触れる、保育関係者必読の書。帯には、哲学者・國分功一郎さんからの推薦文を掲載。
●横浜市「待機児童ゼロ」の真実
●待機児童の歴史
●待機児童はなぜ生まれるのか?
●待機児童と保育事故
●さらに早まる? 「保活」の現実
●「待機児童一揆」はなぜ起こる?
●保育士不足と待機児童
●保育所という命綱
●保育新制度は子育て世代を幸せにするか?
猪熊弘子 いのくま・ひろこ/ジャーナリスト・東京都市大学客員准教授/日本女子大学卒。主に就学前の子どもの福祉や教育、女性や家族の問題を中心に取材・執筆、翻訳を行う。『死を招いた保育』(ひとなる書房)で、日本保育学会第49回日私幼賞・保育学文献賞を受賞。
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Posted by ブクログ
自分が将来子供が欲しいと考えているので、現実を知るにつれて読み進めるのがとても辛かった。
サブタイトルにもあるように「少子化なのになぜ待機児童が生まれるか」ということについて具体的に書かれていた。保育園の経営の事情や、待機児童ゼロという言葉の裏の真実など。子どもの権利、学ぶ権利、貧困などさまざまな問題が浮かび上がり、読んでいて絶望的な気持ちになる。
あー、結婚して子供生みたいよー。
Posted by ブクログ
「日本死ね!」のブログが話題となった今年前半。
匿名だからと首相が言えば、皆が猛抗議。
確かに現実を直視しているとは言えない発言だった。
しかし、この待機児童問題は当事者になってみなければわからない問題でもあるだろう。
本書は高齢者に比べ、後手に回される若年層、なかでも「子供」(幼児)のための政治について考察したものである。
私自身も待機児童の親となった時期があった。
夫婦揃ってフルタイムで夜勤あり、双方の親の援助なし、これだったら満点でしょ、入れるって!と、思っていたのが間違いだった。
満点なのは当たり前で、あとは1点ずつの加算を積み重ねていかなければならないのだ。
それに気づいたのは「不承諾通知」が来てからだった。
絶句、顔面蒼白。
どうすんのこれ、仕事戻れないじゃん。
しばし呆然とし、必死で大学時代に学んだことを思い出す。
行政不服審査法に基づいて60日以内に......いや、待て、とりあえず事業所内保育所に通わせよう、たぶんそこならなんとかなる.....
そして事業所内保育所に預け、その後公立保育園の内定をもらい今に至るが、私のようなパターンは相当恵まれているし、事業所内保育所があるならそっちにそのまま通わせろよ、という意見も出るかもしれない。
でも、そうやって親同士で争ってなんになる?
そもそもなぜこんなに保育所に入れないのだ?
その内容は本書に譲るとして、保育園に入れないという問題は火急の課題である。
本書で指摘されるように、子供の一年は大人の一年とは違う。
ちんたら議論した挙句やっぱり反対が多くて無理でした、じゃ済まされないのだ。
票欲しさに選挙の時だけ公約にあげて、在任中にはやらない(昼寝をする時間はあるのに)なんていうのは言語道断。
事の重大さを政治家の皆さんは分かっていらっしゃいます?
とはいえ、政治家ばかり糾弾するのも違う気もしている。
私たちはどれだけ未来を考えてきたのか。
「今」が大事と言うのと「今だけ」が大事とでは全く意味は異なる。
そんな余裕ないよ、そうかもしれない。
子供嫌い、それも結構。
でも、いつか私たちは必ず老いるし、子供が嫌いでも5年後には子供が、孫がいるかもしれない。
その時になってから考えるのでは遅いのだ。
権利の上に眠っていたのは誰だったか。
三歳児神話なんて、嫉妬なんて、「かわいそう」という言葉だけで責任を取らない大人なんていらない。
必要なのは現状把握、そして予算、行動。
自己責任というのなら、地域の子供を見守ってください。
それが社会責任です。
今この国に必要なのは、子供達の権利を保護すること。
彼らが幸せでいられること、それが本書を含め、親たちのただ一つの願いなのだ。
Posted by ブクログ
保育の問題についてわかりやすくまとまっており、読みやすかった。
保育園に入りやすい時期にきちんと保育園に入れることばかりを目指して
情報収集など保活を始めていたけれど、
そもそも、一日の大半の間子どもを預けるのに適した場所なのかどうか
厳しい目で妥協せず見極める必要がある、といったことが前提なのだということが
抜けていることに気付いて、今この世の中の保活騒ぎにどれだけ
のせられているかと恥ずかしくなった。
いやーでもなんとかしてほしいよね。
Posted by ブクログ
問題の根深さがわかる。政治学、行政学、政策学、社会運動論などいろんなアプローチができ、日本の縮図とも言える領域。行政の担当者、首長の努力の成果と限界。問題を振り回す政治家、マスコミの認識不測。社会運動の可能性。
Posted by ブクログ
「子育ては、政治に最も近い」という猪熊さんの説明はとても分かりやすかった。ただ、自分の子育てを楽しみに思う気持ちも大きいけど、「少子化なのに待機児童が生まれ続ける」矛盾に、疑問&不安を感じずにはいられない・・・。
Posted by ブクログ
親の便利は子の不便
待機児童ゼロは数字のマジック。
→根本的に「カウントのルール」がないので自治体によって、発表の数字に内容は全く異なる
保育を受ける側、する側、どちらにも大きな問題があり、その問題の影響を受けるのは常に子どもである。
潜在保育士はたくさんいる。賃金が悪すぎる。
わかりきっている問題だったのに、この何十年も話は進んでいない。むしろ後退していた。
やっと動き出しそうなのがこの数年。
Posted by ブクログ
保育園に勤めている保育士も是非読むといいと思った。預かる保育士側は、こんな小さな子どもが親から離れて朝から晩まで頑張らなければならない、そんなにしてまで働かなきゃいけないのか!?という目で保護者を見ていることは結構ある。しかし、保護者側も簡単に子どもを預けているのではないこと、保育園に入る入らない以前にこの時代の子育てがどんなに大変なのか…ということまで考えなければならない。
今の日本の子育てがこどもにとってよりよいものになるようにしていきたいと思う。
Posted by ブクログ
子供を持つことが怖くなるような、現代の子育てをめぐる内容の一冊。色んな問題があまりに複雑に絡み合っていて、どこから手をつけていいかわからなくなる。「待機児童」の定義、保育園の数、保育士の数、保育園の質、親の知識、シングルマザー・ファザー、親の貧困。そして本書ではあまり触れられなかった印象もあるが、そこに使うためのカネの問題。
財源をどっかから回すしかない、そのためには声を挙げるしかない、ということにもなるのかな。
親の便利は子供の不便、という言葉も重い、怒りの一冊。子供は社会の宝物であるはずなんだけど。
Posted by ブクログ
特に待機児童に関連した、政治的な施策と絡めた、現実の家庭で起きている問題について議論している。
政策自体の目指すところはよいものであり、行政自体も非はないとしても、実際の状況の中では目的とした振る舞いはせず、時に不幸な事故につながってしまうことを、実例を用いて示している。
本来的には子の健全な育成を目的としても、家庭や自治体を主軸に据えると、結果的に子の不利益につながってしまう問題を提起している。
待機児童問題自体は出版時点から遡って昔からあると書いてあり、そもそもこの本自体が10年近く昔の本で、いかに難しい問題なのかと考えさせられる。
子育てに限らず、政策を考える際には、それがどのような力学で、どのような結果になるか、考えることの重要性がよく分かり、勉強になる。
Posted by ブクログ
◯保育施策を自身の体験も踏まえながら批判的に展開している。
◯1つ1つの思いは最もであり、印象的な個別ケースも多いのだが、根本的な解決を示しているわけではない。
◯政治によって解決される部分は大であるが、表題の内容が、結局のところ選挙で首長を選ぶ点だとすると、場合によっては四年がかりであり、待機児童対策に必要と主張された即効性という意味ではもう少し説得力が欲しい。
Posted by ブクログ
小論文の役に立つかなと思って読みました。
いそいで読んじゃったから、細かいデータとかは飛ばして読んだりしてたけど
前日に『 フィンランド 豊かさのメソッド』を四でたので、あまりの差に愕然とした。
田舎育ちで待機児童がそんなに深刻な問題とは知らなかった。
わたしもデモ運動とか選挙活動してる人見ると
「うるせえ、やめて」と思ってしまう質だったけど
これからは見方が変わるかなぁと思った。ママさんたちは戦ってて、北欧でも国会に赤ちゃん連れ込んで講義した母親たちのおかげで、今のような教育の充実した国になった、という記述を見たからだ。
わたしも子供生むときが来るとしたら全く他人事ではないなと思った。保育所にあずけて自分の子供が亡くなってしまった母親の思いを考えただけで……。
小論文の勉強のために沢山本を読むけど、高校生活のなかで最も自分のためになってると思う(笑)
Posted by ブクログ
「なぜ小学校にはみんな入れるのに、保育園にはどうして全員が入れないの?」というシンプルな視点をもとに、保育園の現状がだいたいわかる本。これまでの国の動きなども絡めて、今に至る経緯がわかりやすい。
ただし、タイトルは不親切。名は体を表していない。「政治」はあまり語られていない、あるいはかなりの突っ込み不足。また、「子ども・子育て支援新制度」についての記載は薄いので、新制度そのものを勉強したい人には不向き。
Posted by ブクログ
少子化なのにどうして待機児童が生まれるのか。これは定員と希望者のバランスの問題。ただそのバランスを解消するためにはカネも時間も必要である。
本書には、そのバランスを欠いたあまりに起きたひどい事例が多数紹介されている。弱者の現状というのはオーバーな例なのかそれが標準なのか、全貌はわからないが、オーバーな例であっても起こるべきではないものである。
認可外保育所を「地獄の預かり箱」と評した例もある。親が諦めれば受け入れる側も低い方に流れていくので、とにかく諦めないことだ、と。とはいえ、受け入れ側も貧困にあえいでいる。
横浜の待機児童ゼロという数字のマジックをあげつつも、しかしそれを掲げて当選した市長の取り組みも一定に評価している。マニフェストから動いていく例もある。
気になるのは「3党合意」と「消費税10%」を人質にした新制度で、10%にする前提でもなお、財源がどうも消え去ってしまっていたようだ。「念の為解散」では、女性の活躍とかも併せてまとめてリセットスイッチ、そして増税だけが残った、というオチが見えかくれする。僕は、本書でいうような子育てを概ね終えた世代だが、今度は自分の子たちに降り掛かってくる問題だ。
あまりいい気分になる本ではないが、それで火種を持っておく、という性質のものだろう。当事者は政治にもっと口を出してよいが…。