あらすじ
記者クラブに席を置くことの誘惑と腐敗、社をあげて破る「不偏不党」の原則、記者たちを苦しめる「特ダネゲーム」と夕刊の存在…。「知る権利」のエージェントであるマスメディアの自壊は、民主主義の危機を生んだ。朝日新聞社で十七年間にわたり記者を務めた著者が、「職場」として経験したマスメディアの病巣を指摘した問題作。
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Posted by ブクログ
本書に朝日系メディアの論調に対する批判を期待すると裏切られる。そうではなく、いま日本のマスコミ企業が犯されている病理的体質に対する批判、いやもっと敷衍するなら大企業病に犯された組織に立ち向かう若手改革派社員=著者の奮闘記、という風に読むことが出来る本だ。
著者が出会う様々な同僚・上司の、普段自社の社説で批判しているような官僚的言動に唖然とさせられる一方、著者のような社員が組織を変革することができずにたどる退社という顛末にもやむを得ないという気がした。これは硬直した大組織を擁護しているのではなく、改革とは誰かが正論を吐き、それが通れば成し遂げられるというものでは(残念ながら)無いから、である。
つまり最も改革されなければならないような社員・幹部の目の色を変えてこその改革であり、その意味で彼ら朝日の「エリート集団」が集団として曲がりなりにも危機感を持つようになるには、それこそ新聞というメディアが日本から、いや世界から消え去るかどうかの瀬戸際まで待つしかないだろう。もっともそのときに何年越しの改革などと悠長なことをしている余裕があるとは思えないが。