【感想・ネタバレ】薔薇忌のレビュー

あらすじ

降りしきる薔薇の花びらに埋もれて死ぬことを夢見た劇団員(「薔薇忌」)、濃密な淫夢に日常を侵される歌舞伎小道具屋の娘(「紅地獄」)、元スター歌手の再起に賭ける芸能プロデューサー(「化鳥」)……舞台芸能に生きる男女が織りなす世界を、幻想的な筆致で描いた珠玉の短編集。著者の独創性を世に知らしめた柴田錬三郎賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

芝居をめぐる、惹かれ期待する関係の短篇集。いじらしくて、ねじまがって、フェティッシュで、古臭くて。
短編の寄せ集めではなく撚り集めで物語が出来る。
決して「恋愛」ではないし、情愛が支配するわけではない。
欲望と怠惰と執着と希求。
純粋さよりも湛える深淵を愛す。

各編ごとに見ても仕方ないって途中までやって分かった。
各々登場人物の設定とかかれる内容は少しずれている気がする。勿論意味はあって必要な設定なんだけど、〇〇→△△となる記号ではなくて、〇〇からその人の印象と人生を推測しないと読みにくい。AパートとBパートの距離が遠い。
登場人物は等しく大きい得体のしれない(歴史を持つ)ものへの畏れを持ち取り憑かれた人たち。変わらないそれらに寄り添う(反抗しながらも?)しかない。
「化鳥」の杏二を彼はそうしたかったのだろう。「女でありながら女を超えたもの。人でありながら人を超えたもの。存在することに拠って観客を異界にひきいれるもの。」人でもなく神に近く、周囲すら巻き込んでしまう。ここにいる動けない「私」をつれだしてくれる何者か。なにか。
それに魅せられ続けた。


「薔薇忌」
祈り。自分の思いを次こそは次こそは・・・・叶わないで欲しい、かなって欲しい。自分を捉えて話さないものから必死に逃げようとし、しかし捉えられ続けたい。そんな感じ。
それをたんたんと。ひょうひょうとした女性がそんな執着を語るからいじらしい。
「祷鬼」
薔薇忌につづいて祈りについて。この流れはずるいと思った。祈ることの矛盾や無意味さ、その意味がみえる。
「紅地獄」
幼い好きと女性としてみてしまった。この合致はほんとうに怖いし、あり得ることだなあと思った。芝居や(続いてきた伝統ある)道具への畏れが書かれる。
「桔梗合戦」
得体のしれない母とそれを超える私。
多分違いはなにを失おうとしたか。
「化粧坂」
なまめかしい。ここに女装、女形への幼い思い出が残される。この体験を持って次編も読んでしまう、と罠だなと思う。
子供らしさと大人の世界。どちらもの貌をもつ彼。
「化鳥」
これか「化粧坂」が一番好き。
鳥は鳥のままでは、人は人のままでは、ただの凡夫なのだ。
芝居や舞台、身体表現に拠る芸術のある種の完成への遠さが現れている。
人は、やはり人である、と思う。
「翡翠忌」
「化鳥」とは一転。化け物が出てくる。と言っても年齢の話だが。彼女はひとを超えたことがあるのではないだろうか。



皆川博子、何冊か挫折してるけど、これは大丈夫だった。現代モノを何個かあさってみようかな。
ある意味で酷く、読みやすかった。
悪く言えば芳醇さは低い気もする。
そうとも思った。
情愛ではないと前に書いたけど、執着と言った感じには思わなかったし、すごく感情的でない印象を受けた。
すごく俯瞰された主人公が多かった。

0
2014年08月13日

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