あらすじ
イギリスとアメリカが互いの音楽を「洋楽」として受容し、進化、統合させて現在のロックが生まれるまでを明快に説く。ミュージシャンの歴史的位置づけもわかるロックファン必読の書! (講談社現代新書)
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
「ロックの歴史」というより「ロックのルーツ」というべき本なのかもしれない。
本書では「ロックンロール」という言葉のルーツから紹介されている。なんでもトリキシー・スミスというシンガーが歌っていた「マイ・ベイビー・ロックス・ミー・ウィズ・ワン・ステディ・ロール」という曲を当時の人気のDJアラン・フリートという人が命名したのが原点だそうで、「ロックンロール」のルーツは、アメリカのブラック・ミュージックにあるのだそうだ。
当然この時代を知らず、感覚的にロックに入った我々世代には、ロックンロールとブラックミュージックは結び付かない。
ロックンロールと聞けば、ツェッペリンの「ロック・アンド・ロール」が連想されてしまうのだが、本書で扱う情報はほとんどツエッペリン以前という感じだ。
後付けで時折耳にすることのある「ロック・アラウンド・ザ・クロック」や「ハートブレイク・ホテル」などがロックの原点的な曲であることはそれとなく感じていたものの、それらがイギリスに上陸してイギリスに音楽的な影響を与え、独自のロックが生まれていき、それがブリティッシュロックを生み出していったという流れについては今回理解できた。
特に70年代、80年代のハードロックに馴染み深い世代としては、「ブリティッシュロック」というワードをよく使っていたので、英国こそがロックの震源地であると思っていた。
ビートルズやローリグストーンズも、リアルタイムではなく、中学生、高校生になってから後追いで興味を持ち始めた世代である。当時、クラスの中には洋楽好きの中にも、ビートルズ派、ストーンズ派があったように思う。兄貴がいるちょっと渋い奴は、ストーンズを語っていたように思う(笑)。
米国から上陸したロックンロールからスキッフルと呼ばれる英国独自の音楽が生まれ、そこからビートルズというブリティッシュロックの第一種が生まれ、一方おなじく米国から上陸したジャズやブルースの音楽性を追求するなかからモッズサウンドというものが生まれ、そこからストーンズという第二種が生まれたようである。
ビートルズのジョン・レノンも、ジョージ・ハリスンも、リンゴ・スターも皆スキッフルバンドの出身であったようだ。
そういう意味では、スキッフルバンドの元祖ロニードネガンをブリティッシュ・ロックのルーツとする説があるようである。
もう一つの特徴は、ギター・ヒーローの流れである。1950年代にブームを巻き起こしたクリス・リチャード&シャドウズのギタリスト=ハンク・マーヴィンやブルースギタリスト=マディ・ウォーターズの影響力が大きかったようだ。
ヤードバーズが生んだ三大ギタリスト、エリック・クラプト、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジはそれぞれに彼らの強い影響を受けている。
ヤードバーズ出身の三大ギタリストが、ブリティッシュロックを渓流から大河へと展開していく大きな役割を果たしたことを考えると、このギターヒーローの流れというのは、ブリティッシュロックを特長づける大きな柱であるように思える。
そうした意味からか、自身としては、ヤードバーズがブリティシュロックの原点ではないかと思ってきたが、著者はまた少し違った観点で、ヤードバーズを原点と捉えているようであった。
すなわち、本物のブルースを追求するエリック・クラプトンは、結局ヤードバーズでは「ブルースもどき」と思えるものしか実現できなかったと回想しているが、このブルースもどきこそが、実は英国でうまれた英国独自のロックだったのではないかという分析である。
ロックのルーツ、特にブリティッシュロックのルーツを理屈づけた書籍ではあるが、ここから派生していく大河の歴史はなかなか簡単に語り切れるボリュームではないだろう。いずれ70年代、80年代へとつながる歴史を著者には語っていただきたいと願う。