あらすじ
海沿いの王国・ガーダルシア。 トトと呼ばれるその少女は、確かな魔力を持つ魔術師の血筋・サルバドールに生まれた。 しかし、生まれつき魔術の才には恵まれなかった。 ある日トトは、神殿の書庫の奥に迷い込んだ。 扉の奥から呼ばれているような、そんな気がしたから。 果たしてそこには、数百年前に封印されたという<人喰い>の魔物が眠っていた。 トトは魔物の誘いにのった。 魔物はその封印から解き放たれ、トトは耳を失った。 そして、強い強い魔力を手に入れた――。 これは、孤独な<人喰い>の魔物と、彼のママになろうとした少女の儚くも愛しい歪んだ愛の物語。
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Posted by ブクログ
人喰い物語3部作第2弾。
〈人喰いの魔物〉と少女の織りなす歪な親子の物語。
歪んではいるもののお互いに求めあうトトとホーイチの関係性にはホロリと来た。同一世界観とのことでゲストキャラの登場も楽しめた。
Posted by ブクログ
・サルバドールの落ちこぼれ、トト
・「兄さんと妹と死ぬまで一緒にいなくちゃいけないらしいわ」
■1章
pp1-73
サルバドール一派の愚かなる劣等生トト。彼女は生来の才能の無さからそうした恥辱に甘んじていた。ついにはサルバドールから追放される、という話も持ち上がる。
「もう魔法などできなくてもいいのよ」と言って欲しかった母にも、望む言葉はかけてらえず癇癪を起こしてトトは走り出す。
行く先には一族に伝わる禁書の棚。その最奥、封印された鍵を壊し、敢えて扉を開いてしまうトト。暗闇に確かに息づく魔物が彼女の耳だけを攫っていく。倒れる直前に彼女は水色の玉を見る。それは魔物の瞳なのである。
目覚めたときには、普段の朝ではなく、族長までも集まっていた。彼が言うには「魔物が耳を持っていった。魔力の残滓がお前の耳に宿っている。」とのこと。残る魔力のためか、魔物に呼ばれたつもりになってしまうトトは再び封印の扉に向かう。魔物を見据え、彼女は名を授ける。こうして、彼女は人食いの魔物をホーイチとして使い魔にしたのである。
「一緒に行こうよ」
一族に連れられ、処罰を待つ。もう、家族を見る気にはなれないトト。けれどもう彼女の影の中にはホーイチがいるのである。
p77「ご期待に応えて出てきてやったよ。拍手はまだかな?」
■1章
pp1-73
外交官になったトト。やはり耳の力が凄まじく、疎まれることもある。一方で、王家の末娘とは仲良くなる。
武人だと名乗る旅の男、ゼクン。そんな彼を気に入らないと言い切るホーイチ。けれどもうトトは彼のことをそう忘れられそうにない。
そんな中、幾重にも襲いかかる敵魔術師。その中にガーダルシアの術式をみつけ、トトは父母に詰め寄る。トトは自信が時期尊師候補に挙げられていることをしるのであった。
衰弱するホーイチ。襲いかかる敵。ついにはゼクンは破れ、トトは倒れる。
目が冷めたトトは周りに多くの人の気配を感じる。孤独だと思い込んでいたのはいつからだったか。自分はホーイチにすがって目を閉じていただけではなかったのか。。。
そんなトトにホーイチは耳を返した。
ホーイチは虫の息のゼクンにいう「勝負をしようか、傷の男」
ホーイチの真意はここにあった。ゼクンに飲まれ、消えてなくなることを承知していたのだった。
やがて、時は経ち、トトは子供を授かる。その子は両親にはまるで似ておらず、目元に3連のほくろをもつ、浅黒い肌の子であったのだった。
END
■外伝
AND
ダミアンは過去に、そのやり方の効率の悪さを指摘されてはいた。しかし、貴族の家や宮殿に忍び込んで盗みを働くことは大変に肌にあっており、ガーダルシアの宮殿が今回の狙いであった。
黒い蝶々。王の娘に部屋で出くわすのは失態では会ったが、彼は赤い耳飾りを手にする。
その品にどうにも不気味さを覚える彼は、すばやく店に預けてしまい、家路についた。
彼には妹がいる。人には見えないものが見える、と噂される一方で、彼は妹の虚言癖をもしっていた。
次の朝、耳飾りは再びダミアンの手の中に会った。
夢がダミアンを苦しめる。
耳飾りは、ガーダルシアの魔物最初の犠牲者のものであった。
夢が彼を東へゆけと導くのであった。
孤児院を二人が旅立ったときのように、妹ミレイニアはまたダミアンに寄り添っていた。
ダミアンの苦しみは常軌を逸していた。
魘され、発熱し、果には喀血似まで至る。
それを目にして心を痛めるミレイニア。
振り返れば、彼女の人生はその霊視によって振り回されていた。親に捨てられ、サーカスに捨てられ、売春宿を逃げ出した。そんな彼女の異能に「虚言だ」と救いをもたらしたのがダミアンであった。
霊視の嘘、兄弟の嘘。嘘では会ったがそれは彼女をどこまでの救っていたものであった。
耳飾りの妖しい力に、其の晩もダミアンは寝ながらにして苛まれる
もがき苦しむダミアンを前に彼女はいう。
「------好きになった人の一人くらい、私だって守るのよ」(pp.255)
ミレイニアは耳飾りに手を重ねた。
ミレイニアの力は耳飾りのそれを抑えたのだった。
「この旅が終わったら、またリュートを弾いて」
「泥棒と占い師もいいけれど、そんな兄弟もきっと、悪くはないわ」それには虚言だと言わぬダミアン。
ついに二人は街にまでたどり着く。目立ての家の家主は不在であったが、息子が留守を守っていた。
曰く、アベルダインの末裔だという。紐解いてみれば彼の母はかつて天国の耳と呼ばれた高名な外交官であり、驚いたことに今はガーダルシアの姫君のもとへ向かっているという。
「兄さんと妹と死ぬまで一緒にいなくちゃいけないらしいわ」
何年ぶりかのリュートを爪弾いてダミアンは呟く。
「悪くはないな」
************
本編は魔物と、その母になろうとした少女の話。
お互いに思い合っているにも関わらず、依存もしつくせない。
結末としてはホーイチの名を継ぐ息子が生まれるわけだが、、、、、魔物のホーイチはそれでよかったのか。いくらトトを泣かせたくないとはいえ、ややかわいそうには思う。最も、その切なさがメイン
後日談が良い。
耳飾りを軸にガーダルシアまでの 旅路を簡潔に描かれている。
耳飾りの起源が、奴隷商によって死んでしまった 母子に起因するものだと夢でわかる。
また、ガーダルシアの魔物の姿がこの母子に基づいているともわかる。奴隷として連れられて、母は亡くなり、息子は魔物に喰われる。散々である。そりゃあ世の中呪いたくなる。
しかし、それは外枠であり、本編よりもわかり易く甘い、こちらも歪な兄弟の話であった。
ミレイニアの一途な姿には大変心惹かれる。急転直下ではったが、後味の良いラブストーリーになっている。しかし、、、「悪くはないな」と答えているダミアン、おそらくよくわかってない。
よくわかってないであろうことも、おそらくミレイニアは察してはいるが・・・。
Posted by ブクログ
とある国の落ちこぼれ魔術師「トト」。
彼女が迷い込んだ先は人食いの魔物を匿っている先。
褐色の肌。目元には三連のホクロを持つ魔物。
そこでトトは耳を喰われた。
が、引き換えに聞いた事のない国の言葉でも話せるという力を手に入れる。
そして、その人食いの魔物に「ホーイチ」と名付ける。
ホーイチはトトにママになって欲しいと使い魔になる。
トトはホーイチのママになった。
年を重ね外交官として働くことになったトト。
トトは「天国の耳」という二つ名を持った。
ティーランという姫様はトトを気に入って。
人目がないときは普通に話すことを進言。
トトも、ティーランも人から狙われる位置にいることは変わらない。
ある日、城下の市で奴隷商と対峙するゼクンと会う。
そしてポツリとホーイチは言う「ボクはアイツが嫌いだ」と。
トトはホーイチを封印して、城を抜け出した。
ゼクンはトトを探し出して「守りたい」と申し出る。
トトが何者かを知っていても尚、トトを愛した。
トトは拒否するが、ゼクンは食い下がり、魔術師たちの攻撃を受けてもトトを守る。
そのて、ホーイチが「勝負をしよう」と。
ホーイチはトトに両耳を返し、「名を一つ、これからの未来を全て キミにあげる」と。
一つの約束をして。
ボクが死んだら、ボクを思って泣いてくれるかい? と。
ホーイチは、トトはゼクンが死んだらもっと泣くと。
だから勝負だと。
勝ったら喰らう。負けたら君なってしまうと言いながら。
優しいホーイチは負けてしまう。
が、ゼクンと一緒になったトトは子供を授かる。
授かった子供は 褐色の肌、目元には三連のホクロ。
紛れもなくホーイチ。そしてトトとゼクンの子供だ。
トトは本当のママになった。
話後半はティーラインのお話。
ダミアンは泥棒を生業としていた。
侵入したのはティーラインの小部屋。
そこで盗もうとした耳飾り。ティーラインは『本人に返して』とダミアンに頼む。
ダミアンは耳飾りを持ち、城を後にして…
血の繋がらない妹ミレイニアと一緒に耳飾りを返しに行く旅に出る。
この二人は孤児院に預けられていた。
そして同時に抜け出した仲だ。
ダミアンはアベルダインの母の思いを追体験する。
それを全体験をした後、トトの住む家にたどり着く。
その時出会ったのはトトの息子である ホーイチ だ。
ホーイチは自分の生まれる前の話だと、人喰いの魔物時代の話をする。
それはダミアンの中で繋がった。
人だった時代のアベルダインとその母。
母を失い、そして自ら喰われ魔物になったアベルダイン。
再度死して生まれ変わりトトの本当の息子になったホーイチ。
ティーラインに乗せられる形となったが、耳飾りは無事にホーイチの手に渡ったのだ。
ダミアンとミレイニアはそのまま旅を続けるのだろう。
同じ惹かれ合うモノ同士として。
Posted by ブクログ
2年前に読んだのは覚えていましたが、星四つつけていてどんな内容だったかさっぱり覚えてなくて再読しました。
可読性はあるんですが、内容が濃いわけではないです。
落ちこぼれの魔法使い少女がいて、魔物のいる神殿の奥に行って耳を喰われ、十年以上その魔物を使い魔としてそばに置き、魔物から喰われたその耳が異国の言葉も理解することから、ヘブンズイヤーとして外交官の仕事してたら、ヘブンズイヤーを持った少女を尊師として候補にあがったために、自分を守るはずの一族が襲撃してくる。それを守るのは使い魔の役目なのに、旅人が少女を守るといい、魔物はその旅人と一体となった。
そしてその旅人と結婚した少女が生んだのは、依然魔物の姿だった肌の濃い褐色の男の子だった。
精神論を端折ったらざっとこんな感じです。
付録のANDはまだ読んでないです。
Posted by ブクログ
人間と魔物の話。
ホーイチは、
自分はトト一人だけでいいけれど
トトは人間だから
ホーイチだけでは駄目だと思っていた。
のに、
トトはホーイチ一人だけで良いと思おうとした。
ぐっときました。
ただ、最後
子供が産まれた所の話はいらなかった。
なんともありきたりな話になってしまった。
ANDがあるんだから
削ってしまってもよかったんじゃないのかな?
うーん...余分だよなぁ。
Posted by ブクログ
前作同様、やさしい御伽噺。
「MAMA」
表題作。
「サルバドールの落ちこぼれ」トトが「人喰いの魔物」と出会い、変わりゆく物語。魔物はかつて喰らった「アベルダイン」の名に縛られていたが、トトに「ホーイチ」と名づけられた上、ママになると言われてしまう。
月日は流れ、「天国の耳(ヘブンズ・イヤー)」と呼ばれる敏腕外交官となるトト。ある日出会ったゼクンと交流を深めていくが、致命傷を負ってしまうゼクン。
ホーイチはトトを想い、ゼクンにある賭けを持ちかける。
「AND」
後日談。
ガーダルシアの城に忍び込み、赤い耳飾りを手にしたダミアン。ティーランに見逃す代わりに持ち主に返すよう依頼される。
耳飾りは、かつて魔物に喰われたアベルダインの物だった。
血のつながりは無いが、孤児院から共に逃げ出した妹ミレイニアと旅に出ることに。
「AND」の方が好きかな。
共に、偽物の作り物の紛い物の家族の物語。
関係は偽物でも、その想いは本物だと、僕は思う。
Posted by ブクログ
ミミズクと違って童話というよりもファンタジーの色合いが強くなった感じがする。
でもやっぱり視点が第三者で進むから少し物足気が。
末姫をもう少し出してほしかったなあ。。。
でも総合的には満足の作品です。
Posted by ブクログ
掴みどころのない、しかし人が求めてやまない「愛」。
本物を手に入れるまで、確証がない段階での「ふり」。
「愛のふり」が「愛」となるまで。
「愛のふり」も決して愛でないわけではない、そこが苦しい、不安。
偶然の出会い、求めるものの偶然の合致から、
親子愛で繋がっているふりをしつつ葛藤し、
アベルダイン≒ホーイチとトトが本当の親子となるまで。
ゼクンとの愛、ティーランとの友情、
ANDではダミアンとミレイニアの兄妹愛のふりをした愛などなど、
色々な愛が重なりあう苦しさも含めて、
それぞれの愛を育んでいく人々のお話。
文章に難あり。雰囲気を作るために日本語を壊してる。