あらすじ
決壊する河川、崩壊する山々、危険をはらむ土砂ダム……。東日本大震災から半年後、紀伊半島を襲った台風は百名近くの犠牲者を生んだ。いったい何が起きたのか。どんな危険が身を襲ったのか。奈良県十津川村、和歌山県那智勝浦町の現場を、ノンフィクション作家が行く。豪雨のリスクに無縁な地は日本にはない。首都水没予測も含め、豪雨災害の実態を伝える迫真のドキュメント。
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Posted by ブクログ
2014年の本です。
2011年の台風12号の被害を受けた奈良県の十津川村と和歌山県の那智勝浦町のドキュメントです。
迫力ある筆致で災害の凄まじさが描かれています。
その中で必死に地域を復興しようと頑張る人たちの姿が印象的です。
Posted by ブクログ
○2011年の紀伊半島豪雨災害について、その関係者等の話しをまとめたドキュメント作品。
○本書中にもあるように、当時は、東日本大震災のあった年であり、印象は強く残っていなかったのだが、本書を読んで、むしろ強烈なインパクトを受けた。
○十津川村の歴史など、山と暮らす文化についても、興味深かった。
○本書の最後に、首都圏等における水害の予測・危機についても触れているが、最近の気象状況を見ていると、まさに人ごとではない問題と感じた。
Posted by ブクログ
第1、2章はH23年和歌山での土砂災害のルポタージュが中心。「まえがき」こそ命からがら助かった住民の方の話だったが、そのあとの本編は住民目線の話はあまりなく、むしろ行政側(首長、防衛省、国交省)や建設業者による対応こそ、中心的に描かれている。行政の対応等に光をあてられていること自体は有意義。
惜しむらくは、そのように目線ごと(プレーヤーごと)にわけて描かれていればそれぞれの活躍ぶりがよく伝わっただろうということ。
様々な話を一緒くたにして書いたり、途中に学識者(静岡大・牛山教授)の話をまぜこぜにして書いたりしているため、情報が頭に入ってこない。
その点、『ドキュメント 御嶽山大噴火』や『前へ!—無名戦士たちの記録』のように、主人公やテーマをわけて書いてほしかった。
ただそんなことがどうでもよいくらいに、締めくくりにあたるはずの第3章はひどかった。「やっつけ」である。せっかくここまで和歌山での土砂災害を取材して記述してきたのに、急に、
土砂災害ではなく大河川の災害の話になり、
山間部ではなく首都圏の話になり、
極めつけは、もはやドキュメントでもなんでもなく、ジャーナリズム?になる(というか、既存の内閣府防災の報告書の紹介と、高橋裕先生の少しのコメント、そして消防団員の手記の長い引用、等・・・)。
最終的には筆者の個人的な感想が締めになっており、学生の出来の悪いレポートを読むよう。
あぁ残念。このテーマはきちんと誰かに書いてほしかった、と悔しい思いさえ抱きたくなる。
Posted by ブクログ
2011年9月に発生した奈良県十津川村、和歌山県那智勝浦町の豪雨災害の詳細なレポート、そして、その事例を踏まえ今の東京の水害に対する脆弱さを指摘している。
被災地に共通していえることは、ここ何十年かは大丈夫だったという近視眼的な、根拠の無い安心感。
土地の古老といっても、記憶があるのはせいぜい70年から80年ぐらいのもの。しかし、たとえば那智谷の地形は、専門家からみれば典型的な谷底平野であり、長い年月をかけて川が谷底を暴れ、谷を削ることに寄って平野が形成されてきた地域であるらしい。
そこが危険な場所だという認識に、欠けていたのではないかという指摘。
そして、やはり被害が発生した地域では、本気での防災体制が確立されていなかったという指摘。
形式的には、防災体制図は完備され、法律的基準は満たされていると国に報告はなされている。しかし、実際に避難を始めるタイミング、そしてそれを伝える手段、さらに実行する能力について、本当に備えがあったといえるのだろうか?
この二つの指摘は、決して本書で取り上げられた地域にのみ適用される特殊な事例ではない。むしろ、日本全国、私や貴方が現に住んで、働く、その土地でも指摘されるべき弱点なのではないだろうか。
そして、本書の第三章は、具体的事例をあげて、現在の東京の脆弱性を指摘している。たとえば、荒川右岸鉄道橋、たとえば中央区付近の地下鉄等々。
あまりに人が集まりすぎているから、有効的な対策がとられていない、さらにみんないるからという根拠の無い安心感が、さらに危険性を増幅させる。
私も昨年、本年と豪雨被災地の支援に現地に赴いたが、いずれの地も、雨が降っていなければ なんでこの場所が?という一見穏やかそうな場所。地球温暖化が理由なのかどうかはわからないけど、いままで大丈夫だった場所が、同じ理由のままこれからも大丈夫なんてことを信じるべきではない。
まず、自分の意識を点検し、改めるべきところは改める。そして、家族にそれを広げ、地域に広げ。さらに自治体、国まで真剣に国民の安全を考えるようにすること。それが、自分を含めひとりひとりの命を守ることに直結していると強く感じた。