あらすじ
「戦犯」の末裔たちはどのように生きてきたのか。敗戦で個人に背負わされた“黒い烙印”は、その一族にどのような影響を与えてきたか。東条英機、土肥原賢二、広田弘毅、東郷茂徳という「A級戦犯」の孫たちの生々流転から、アジア地域での知られざる「BC級戦犯」の生き様までを掘り起こし、戦後から現在まで「国家と個人」の狭間で苦悩する末裔たちの宿命を、若き俊英が丹念な調査のもとに活写する問題作。
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Posted by ブクログ
戦争責任は当時の日本全体、それを代表していた軍部や政府、そして支持した国民全体にあると感じる。当時に生きた日本人にとって、言葉も理解できず意思も表明できないような赤子でもない限り、個人的には全体にあったと考える。勿論軍部や政府に反抗し、対抗する勇気ある国民も居ただろう。それはごく一部の人たちであり、開戦前、開戦後も一貫して態度を貫き通せた人でもなければ責任の一端はあると感じる。
中でも、戦後に戦犯として罪名を背負った人々については、開戦への責任、戦時中の暴力や民間人・捕虜に対する殺害などは明らかな犯罪=犯罪者と言える。また、広田弘毅の様な文官についても外交官としての失敗や内閣を統率できなかった責任はあるだろう。
本書はそうした戦犯達の孫にフォーカスし、戦後どの様に生きてきたかについて書かれたものである。誰もが知っている東條英機や広田弘毅、土肥原賢治などの孫達が味わった戦後についてどれほど多くの日本人が知っているだろうか。何も考えなければ、戦犯の子供の子供なのだから、仕方ないだろうという人もいるかもしれない。だが自分の先祖に対する責任を負わなければならないなら、日本人の大半は戦国時代を経て犯罪者になってしまう。親や先祖は選べない事を考えれば、生まれた瞬間に重責を負って生まれてくるというのはあまりに酷い。
本書はそうした人々(孫達)がどの様にその様な状況を克服し、加えて名誉を取り戻し、かつ普通の人々と同じ生活を取り戻したか知る事ができる。勿論不幸な境遇を克服できずに亡くなられた方もいるだろう。もし貴方が祖父の犯した罪を生きている間中考えなければならないとしたら恐ろしい。不条理そのものだし、耐えて生き抜いた人々にはさぞかし辛かったであろう。
後半は日本人に使役された韓国人や台湾人についても語られている。祖国に帰ることもできず日本人として罪を償わされ、最後まで祖国の土を踏めなかった戦犯が多く居たことも、孫達の記憶から忘れ去られてはならない。
Posted by ブクログ
満州事変から太平洋戦争にかけての戦争責任を問われた戦犯たちの子孫や、戦犯そのものの人生などをまとめた一冊。
たくさんの書物と本人らへのインタビューを元に描かれていることからすごくしっかりとした学術書のような印象。
その点、無知なわたしにはなかなか難しく読むのに悪戦苦闘…。
それにしてもA級戦犯の中でも東條英機のお孫さんの話はかなり苦しい。学校の担任から担任を持つことを拒否されるなんて、どんな気持ちだったんだろうか。
土肥原賢二や広田弘毅もA級戦犯だということくらいしか知らずで。広田弘毅だけ文官でありながら靖国神社に祀られてるのも知らなかったくらい。
戦犯問題に関していろんな意見があるのは重々承知ですが、もう誰も悪くないというか、少なくとも子孫に関しては何も責を負う必要はないと思うなぁ。
本書で描かれていたB級、C級戦犯なんてなおさら。台湾人や朝鮮人の人ですら、日本の戦犯扱いされてたそうですが、
そんなの本当に罪はあるんだろうかと思ってしまう。
(捕虜へのやむを得ない暴行とかそんなんはやっぱりあるんやろうけども…)