あらすじ
新進作家の「私」は、知り合いのストリックランド夫人が催した晩餐会で株式仲買人をしている彼女の夫を紹介される。特別な印象のない人物だったが、ある日突然、女とパリへ出奔したという噂を聞く。夫人の依頼により、海を渡って彼を見つけ出しはしたのだが……。創造の悪魔に憑かれた男ゴーギャンをモデルに、最期まで絵筆を手放さなかった男の執念と情熱を描く、20世紀の大ベストセラー小説を決定訳で。
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Posted by ブクログ
月と六ペンス読みました。
終盤のところが1番印象的で好きでした。
生まれる場所を誤る人がいる、とゆう一文から始まる文章のところや、タヒチでのストリックランドの様子。
物語中盤にストリックランドがブランチのことを、支配欲は激烈で魂の支配までする、ただ自分のものにしたかっただけだ、と言い放っていましたが、タヒチのアタは自分をほっといてくれるからこれ以上は望まないといい、最期をそこで過ごす。このふたりの対比は痛々しく、ブランチに同情してしまう私は似たものをどこかで持っているからなのかなと思ったり。
世間はどうでもいいストリックランドと、ブランチの夫の他者に執着にも感じるような介入をしたがる様子との対比。人物像が生々しく、言い回しが難解なところが多々あって何度も読み直しては考えながら読みました。
妻の元を去ってから出会った女性たちは、ストリックランドの何にそんなに惹かれたのだろう。
主人公が彼を色んな角度から分析し描写していましたが、野生的さと肉体的強さ、官能的と書いてあるところがありました。お金や名誉をもたなくても、そのままのたたずまいや皮肉さ、仕草や肉体に惹かれたのだろうか、それとも理想を追う生き方に魅了されたのか、理性が吹き飛ぶような劣情を感じさせる人とはどんなものなのだろう、などと、女性側の視点に立って色々考えてしまいました。
とはいえ、自分にはこの生き方しか生きれない、と決意した人には何を言ってもこちら側が滑稽に見えるだけで、手を伸ばしても届かない月のような存在と思うのが1番かも、なんて身もふたもないことを思った。
モームの他の作品も読んでみたいな。
Posted by ブクログ
男は自己充足のために、絵を描いていた。しかし、彼の死後に、作品は多くの人に評価され、消費される対象となった。富と名声は、彼が求めていたものだったのだろうか。
Posted by ブクログ
『存在のすべてを』の登場人物が読んでいた本というのでどんな本か読んでみた。『存在の~』はいまいちだったけど、この本は最高だった!
空想上(ゴーギャンがモチーフになってるとかなってないとか?)の芸術家を追って一人の作家がまとめた物語という設定なんだけど、ただただ原田マハさんのようにきれいに積み重ねられた物語だけでなく、モームの哲学を楽しむことができた。いつものことながら文章表現も豊かで巧みであるので行間もなく延々と文字が連ねられていても全く負担にならず面白いようにページが進んでしまう。
このタイトルも意味深で、ついついwikiでその意味まで調べてしまうと、ああ、なるほど深いわぁってなる。ストリックランドの生き方を羨ましいとは思わないが好きなことのためにすべてを投げ出して突き進める人生は素晴らしい。
この光文社の古典新訳シリーズは昔からの名作を現代語訳として読みやすくしているせいもあってスムーズに頭に入ってくるから間のある時にちょいちょい挟ませてもらっている。このシリーズなら『罪と罰』も完読できそうな気がするから今度挑戦してみるかな。
Posted by ブクログ
語り手に一番共感した。若い人の感性はわからないしきっと素晴らしい物があるんだろうけど、きっと自分はそれが評価されなくなっても古い物にこだわり続けてる。それに絵のセンスも自分と全く一緒……。その辺通して、勝手にモームとお話出来たら絶対楽しいんだろうなあって想像してた!!
ストルーブとその妻の話が一番面白かった。どうして妻がストリックランドを好いたのか最初全然わかんなかったし、むしろストルーブみたいな人と私も結婚出来たらなあって思ってたけれど、妊娠していた話を聞いて印象が一変。でもストルーブみたいな可哀想なくらい滑稽な人、確かにこういう人どこかに居るよね……ってなる、本当に描くの上手い。ストリックランド夫人とかも。モームはふっと浮かぶ印象とか感覚を本当に上手に言葉に表すなあって思う。あと言葉も皮肉も入っているけれど、とっても美しい表現や的確でハッとさせられる言葉を使う。
私の勝手だし時代背景とかも絶対に解説者ほど詳しくないけれど、この本の巻末の解説には全然共感できなかった。未開の地にアメリカ製のストーブがあるのは悪意のある社会風刺的な皮肉じゃなくて、もっと純粋な悪意のないただの情景描写してたら案外面白い物があったからって雰囲気の皮肉?って印象を持った。私は言葉すっごく下手だし、モームに親近感湧きすぎてるのか神聖視しすぎかもしれないけれど……。
Posted by ブクログ
夫が出奔したのが絵を描きたいという理由に納得できず、あくまでも女に一目ぼれしてその女を追ってパリへ行ったという流言を自発的に流すストリックランド夫人の心情がよく理解できなかった。自分より魅力のある女性に負けたという方が恥じゃないか…?男の庇護にあることこそ価値があるという今では考えられない思考が当たり前だった時代なんだなと思うとこういったところに通俗小説としての価値があるのかなと感じた。
ストリックランドがゴーギャンをモデルにしているというけれど、晩年のクレイジーさと、亡くなってから名声を浴びるというところから私がイメージしたのはゴッホだった。