あらすじ
修羅場には独自のルールがあり、それに対応する作法と技法がある。イエス、宇野弘蔵、西原理恵子ら多岐にわたる達人から、どんな極意を学べるか? ヒトラーら反面教師の「悪知恵」とは? 外交と政治の修羅場を駆け抜け、獄中で深い思索を重ねてきた著者が贈る、実践的アドバイス。
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Posted by ブクログ
修羅場の極意
著:佐藤 優
中公新書ラクレ 500
敵を作り、嵐に巻き込まれた時の対処方法、「うろたえるな!時を待て」
修羅場とは、継続的に闘争が起きている場所のことをいう
耐えず闘争が続いている状況では、普段は見えるはずのものが見えなくなってしまう
逆に普段、見えないものが見えるようになることもある
気になったのは、以下です
・チームリーダーや部長が無能だと、全体に悪影響が及ぶ、これは国家においてもおなじだ
・マキアベリ 性格がよい人よりも、疑い深く、国民から恐れられるような国王の方が、結果として国民に幸せをもたらすと考えた
・愛されるよりも恐れられるほうが、はるかに安全である
・修羅場で、守勢になった側での裏切り行為はごく普通の出来事だ
・マキアベリは、人間の本質は、悪であると考える
こういう性悪な人間たちによって作られる世界は、基本的に悪だ
・マキアベリによれば、信義にもとる人の方が権力を握ることができるという
・イエス 受けるよりは与える方が幸いである
・食うか、食われるか、が、ヒットラーの基本思想だ
・生き残るためには何をしてもいい
・裏切者は敵より悪い
・ヒトラーたちは、言葉を自らの権力を獲得し、維持するための道具としてしか考えなかった
・これからの時代は、望むと望まざるとにかかわらず、ひとつの国、ひとつの組織、ひとつの仕事だけに頼れなくなっていきます
そうした中では、自分の生き方、働き方、自分で決めていく、ことが求められる
・修羅場とは、世界的な大事件に遭遇したり、特捜検察に逮捕された場合だけを指す概念ではない
第三者から見れば、よくあることだ、と映ることでも、本人にとっては深刻な修羅場であるという場合もある
・人脈を長期間維持することは、人脈構築の数倍難しい
心底信頼できる友人がいるかいないかは、仕事と私生活の双方において死活的に重要だ
高いレベルで維持できる人脈は、通常、片手に収まる範囲内だ
・最悪のシミュレーションだけすればいい
・修羅場が避けられても、それで幸せかどうかはわからない
・カネがないのが最大の修羅場
<結論>
企業、官庁でも、上司を選ぶことはできない
無能な上司、性格に著しい偏りのある上司に遭遇したときは、時、を待って、行動に移る
決して、時期尚早な戦いをしてはならない
修羅場の作法の達人たちは、時、を見極める達人でもある
目次
はじめに―東京拘置所での谷底生活から
1 偉人たちのサバイバル術
2 反面教師たちの失敗学
3 「獄中」の教訓は役に立つ
4 ヴァーチャルな修羅場、リアルな修羅場
対談 「最悪」のシミュレーションだけすればいい―西原理恵子
おわりに―「時」を見極めるということ
初出一覧
ISBN:9784121505002
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:224ページ
定価:800円(本体)
発売日:2014年06月10日
Posted by ブクログ
かなり興味深い内容でした。
様々な修羅場に関して、マキャベリ、キリスト、ヒトラーなど、そのエピソードを対比させながら、著者の主張を論じるという方法で、明快に修羅場での作法を解説くださいました。
その根底は、自分の意志を持ち、それを物差しといて、いかに考えていかに行動するかということの大切さかと思いました。
Posted by ブクログ
佐藤優氏による著作。
2014年6月10日発行。
月刊中央公論に連載した「修羅場の作法」を再構成した本。
2013年5月号~2014年3月号の連載分
印象の残った部分を列挙してみると
絶えず闘争が続いている状況では、普段は見えるはずのものが見えなくなってしまう。
逆に普段、見えないものが見えるようになることもある。
国民に愛されるとともに恐れられる国王になることはとても難しい。
その場合、恐れられた方がいいとマキャベリは主張する。
修羅場で、守勢になった側での裏切り行為は、ごく普通の出来事だ。
政党、官庁、企業は、利益共同体(ゲゼルシャフト)なので、人間関係は、基本的に打算に基づいて構築されている。
政治家や官僚の派閥も、守勢になると崩れてしまいやすいのは利益共同体の本性からして仕方のないことだ。
トップに立つ者は、助言を絞り込む必要がある。
専門知識のある者の助言を受けるが、その場で結論を出さず、自分の頭でよく考え、決断する。
ひとたび決断したら、その後、多少、迷いが生じても
決断を断固貫く。
イエスは、まず敵と味方をはっきり峻別せよと説いている。
その上で、敵を愛するのである。
もちろん人間の心情として敵を愛することはできない。
しかし、愛するように努力しなくてはならない。
敵には敵なりの理屈や立場がある。
敵を愛するという視座を無理をしてでも持つことにより敵の内在的論理を理解することができる。
憎しみは、人の眼を曇らせる。
その結果、敵の論理や動きを正確に判断することができなくなる。
そして、間違えた対応をしてしまう。
敵を愛するという気構えを持つことによって、戦いを有利に進めることができるのである。
「受けるよりは与える方が幸いである」イエス・キリスト
限られた人生の中で、自分が他者から「受けること」を
第一義に考えるのではなく、他者に自分が何か「与えること」ができないかを考えることにより、この世界が異なって見えるようになることを、著者は人生の節目で何度も実感した。
ワイマール憲法のような、模範的な人権が規定された憲法をナチスの暴力だけで無効にすることはできない。
暴力的な政治には、それを正当化する有識者が必ず存在する。
いつの時代もケルロイターのような知恵者が現れて、
法解釈の名の下で民主主義を内側から破壊していく危険があることを、常に忘れてはならない。
「基本的諸法律は、国家指導の他の諸法律と別に区別はない」
オットー・ケルロイター
憲法改正手続きが面倒ならば、現行法体系と矛盾しても
政治的に都合がいい法律をいくつも通していけば、
実質的な改憲が可能になる。
コンピューター言語を自由に操ることができるギークたちには言語、民族、国家に対する意識が稀薄なのである。
第三者的に観察すれば、ギーク達の世界観はアナーキズムに親和的だ。
インテリジェンス・オフィサーの職業的良心は国家のために全てを捧げることだ。この観点で、インテリジェンス機関はアナーキストに対して先天的な忌避反応を持っている。
「元インテリジェンス・オフィサーは存在しない」
ウラジーミル・プーチン
インテリジェンス機関に勤務した者は、一生、この世界の掟に従い、国家に奉仕すべきである。この掟に背いた者は殺されても文句は言えない。
他者のために存在したというイエスに倣って、われわれも正しく言葉を使い、行動するならば、修羅場の危機から抜け出すことができるのである。
もう少し、われわれの日常に引き寄せて、
このことを言い換えるならば、あなたが他人の気持ちになって考える努力をすると、自然と言葉の使い方も異なってくるようになる。
その結果、あなたの行動が変化する。
この影響が自然と他人にも及ぶ。そして、他人もあなたのことを思いやるようになり言葉遣いと行動が変化する。
このようにして、リアルな人間の信頼関係が構築される。
日常を一時的にリセットする(安藤美冬)
仕事に熱中し、前だけ見て働き続けても、良い結果はでない。
定期的に休みを取り、自分の仕事を観察し、反省することが必要である。
人脈を長期間維持することは、人脈構築の数倍難しい。
人間が本当に怒るときは二通りです。
本当のことを言われたか、とんでもない大ウソをつかれたとき。
いわゆるエリートと喧嘩する際には中学校までのトラウマをどうやって引き出すかが大事なポイントになります。
佐藤優の修羅場・・事件の容疑者になって、メディアスクラムで3ヶ月間ホテル暮らしを強いられ、自宅の郵便物を報道陣に荒らされて、逮捕されて足かけ513日間独房に入れられて、公判に4500万円かかって、裁判に8年を要して、外務省をクビになったくらいです。
企業、官庁でも上司を選ぶことはできない。
無能な上司、性格に著しい偏りのある上司に遭遇したときは、「時」を待って、行動に移る。
決して、時期尚早な戦いをしてはならない。
Posted by ブクログ
ヒットラーやキリストのみならず安藤美冬も登場する、著者の幅広い認識のなかから修羅場の極意を紹介される。
新書一冊という制約の限界はあるけれど、著者の北方領土にかけた外交官時代と裏切り、その修羅場と歴史上の人物たちの限界極まったときの処世術は場当たりではない処世の習う点がいまみえる。過去の佐藤優の著作も読み返してみよう、。
Posted by ブクログ
外務官僚だった佐藤氏の著書。色々とレベルが異なることを書かれているので、人によって違う印象を受けるのでは?
神学者の項が気になった。「あなたが他人の気持ちになって考える努力をすると、自然と言葉の使い方も異なってくるようになる。その結果、あなたの行動が変化する。この影響が自然と他人に及ぶ。」
言葉はコトの葉。口先だけでは直らないけど、すごく大事。
西原理恵子との対談もよい。最悪の事態を想定する。うん、大事。
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて佐藤優初挑戦。
馴染みがないので神学の話になると眠くなってしまった。
しかし逮捕されて独房にいた彼がいう
「猫は信用できる」には笑ってしまった。
彼が逮捕されるに至った話も書籍になっているので読んでみたい。
Posted by ブクログ
【期待したもの】
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【要約】
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【ノート】
・体裁としては、1章で1つの「修羅場ってる」本なり人なりを取り上げて、そこから、エッセンスを抽出して見せるというもの。
・「ヘルマン・フィッシャーーヒュルストルンク「フロッセンビュルクからの報告」、『出会い』(192頁)」(P155)とあるけど、この本、見つかんないだよな。
【目次】
はじめに 東京拘置所でに谷底生活から
? 偉人たちのサバイバル術
1章 助言者は絞り込め ニッコロ・マキアベリ
2章 逆説的発想で事態を打開せよ イエス・キリスト
3章 「偽装」というテクニック フョードル・ミハイロビッチ・ドストエフスキー
? 反面教師たちの失敗学
4章 破壊的影響力の秘密 アドルフ・ヒトラー
5章 悪知恵にだまされるな オットー・ケルロイター
6章 ”正義?”の勘違い エドワード・スノーデン
? 「獄中」の教訓は役に立つ
7章 独房で筆者の精神を救ってくれた教え 内村剛介
8章 経済学と小説の力 宇野弘蔵
? ヴァーチャルな修羅場、リアルな修羅場
9章 人間関係に役立つ独学者の言葉 ディートリヒ・ボンヘッファー
10章 ノマド的”処世術” 安藤美冬
11章 不作為は悪 小説「インフェルノ」のラングドン
対談 「最悪のシミュレーションだけすればいい」 西原理恵子
おわりに 「時」を見極めるということ
Posted by ブクログ
マキアベリ、君主論、愛されなくてもいいが、恨まれることなく、恐れられる存在にならなければならない
イエス、受けるよりは与えるほうが幸いである
ヒトラー、政治とは、ある民族がこの現世での存続を求めて行う生存闘争を実行していく上での技術である
Posted by ブクログ
修羅場とは、継続的に闘争が起きている場所を指す。
圧倒的な知識量から古今東西のテキストを用いて、修羅場において人がどう切り抜けてきたかを解説する。
Posted by ブクログ
修羅場には遭遇しないほうが好ましいが、そういうわけにもいかない。数々の修羅場を経験してきた筆者が、著名人等の言葉を引用しつつ修羅場ならないよう、なってもに立ち向かえるような心構えを説く。宗教や哲学なと難しい部分もあるが、読むほどに深まる内容。