あらすじ
警視庁公安部の刑事だった奥野侑也は、殺人事件で妻を亡くし退職を決めた。孤独に暮らしていた侑也に、かつての上司を通じて潜入捜査の依頼が入る。北の果てに建つモウテルの管理人を務め、見知らぬ人物と暮らしながら疑似家族を演じろという。侑也が現地に赴くと、そこにいたのは若い男女と傷ついた一匹の番犬だった。やがて闇に隠れた謎の組織の存在と警察当局の狙いが明らかになり、侑也は眠っていた牙を再び甦らせる――。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
まったくノーマークだった作品であり、ノーマークだった作家。本屋大賞候補だったらしいがうかつやった。これは想定以上の大傑作!
中年男の再生、家族小説、犬との親愛物語…俺の好物があちこちにちりばめられていて、その上で良質のハードボイルドであり、活劇アクションであるのだ。初期の高村薫、清水辰夫の良作のニオイガプンプンする。
しかも、キャラクターがみな個性的で深い。主要登場人物だけでなく、嫌なキャラはイヤなりに、端役であっても見せどころがあるし、個性を極力コロした設定の通名だけで出てくる連中までもが手を抜かれず描写されている。読んでる間はその描写にドキドキし、読後に「スゲーな」と感動する。
搭乗する組織の書き分けが分かりにくくてNとスカベンジャー、公安と刑事課あたりの区分けがしにくかったり、物語の中盤以降あたりまでの伏線の張り方が冗漫だったり…、粗を探せばあるんだけど、最後まで読んでしまえばそんなことは些末なことに思える。
オオラスのオオラスなんか、「ここまでスゲー料理出しといて、なんでデザートがレディ・ボーデン」みたいなありきたりさに残念さを覚えるのだが、それすらそこまでの料理を引き立てる手法かと思ってしまうくらいに、とにかく熱量がすごいのだ。
不勉強、不見識で恥ずかしいが、こんな作家いたんだなぁ。まだまだオモロい小説は世の中にいっぱいあるんだなぁ。
Posted by ブクログ
*警視庁公安部に属していた奥野侑也は、妻を殺人事件で亡くし、以降人知れず孤独に暮らしていたが、かつての上司から北の寂れた土地でモウテルの管理人を務めてほしいと依頼され、任地に向かう。そこで待っていたのは、見知らぬ若い男女と傷ついた一匹のド―ベルマンだった…*
面白過ぎて、徹夜で一気読み!文句なし、まさに『ザッツ・エキサイティング!』。公安、闇の組織、囮作戦、騙し合い等々ハードボイルドが主体ですが、疑似家族の面々との人間ドラマあり、マクナイトやどんちゃんたち動物部門の癒しありで、色々な側面から多彩に物語を楽しめる。とは言え、やや都合が良すぎたり、強引だったり、後半詰め込み過ぎだったり、と色々突込みどころもありますが、最後は感動の大円満なので、もうそれで全てヨシってことで。