【感想・ネタバレ】GPIF 世界最大の機関投資家のレビュー

あらすじ

危うし、年金財政。130兆円の運用資産改革はアベノミクスの救世主にはならない。
2014年4月までGPIFの運用委員を務めていた著者が、知られざる世界最大の機関投資家の全容と、
あるべきGPIF改革について説く、緊急提言の書。

安倍政権が株価引き上げのネタとしてGPIF改革を利用したかどうかは議論しません。そんなことはどうでもいいのです。大事なことは、GPIFというものの存在を、国民が突然意識したのですが、それが何かもどのようなものかもまったく知らない。そして、政権はそのGPIFを大きく変えようとしている。しかも、まさにいますぐに、です。これは危険です。私は4月22日までGPIFの運用委員というものをやっていました。運用委員を運良く退任して、ある分野の守秘義務は依然あるものの、自由に記述できる立場にある私が、いまできることは、GPIFの理解を少しでも幅広く多くの人と共有することだと思うのです。したがって、理解が浅く、誤りもあるかもしれませんが、とにもかくにも、全力でこの本を緊急出版することにしたのです。 (「まえがき」より抜粋)


【主な内容】
第1章 GPIFとは何か
第2章 年金制度とGPIF
第3章 GPIFという組織
第4章 GPIFの運用方針と目標運用利回り
第5章 年金制度と資産市場の断絶
第6章 公的年金のくびき
第7章 国債と分散投資
第8章 低金利革命
第9章 国民によるわな
第10章 GPIFは必要か?
第11章 GPIFのガバナンス改革
第12章 透明性と説明責任
第13章 GPIFの運用とガバナンス
第14章 GPIFは良い運用者か?
第15章 意外と素晴らしい国債とそのリスク
第16章 あるべきポートフォリオ:日本株は買うな
第17章 リスクとは何か
第18章 GPIF改革私案

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Posted by ブクログ

ネタバレ

現時点で年金の運用構造とその課題を理解するために格好の書物である。
利回りについて割かれた分量は多いが、その分丁寧な説明で分かりやすい。
➡6章、8章は読むべきポイントが多い。

そして、話はガバナンスの話へと向かう。
著者自身がガバナンスを専門としており、ガバナンスの入門書としても通用する分かりやすい説明であった。
➡9章、12章が良い。

それ以外のポートフォリオの提言などは、アイディアの一つとしてはありかもしれないが、中身としては深まっていないように感じた。
外部からメディアなどが具体的ポートフォリオに口出しすべきでないと書きながら提言している形になっており、むしろポートフォリオの提言は書かず、途中までの年金運用とGPIFのガバナンスについての紹介書で良かったのではないかと感じた。

全体としては、類書が少ないなかで、GPIFだけでなく年金運用、さらにはガバナンスについて分かりやすく触れた良書であった。

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2017年12月31日

Posted by ブクログ

以前地方公務員の年金運用の仕事をしていたことがあり、年金運用のあり方についてはいろいろ思うところがあったので、GPIF改革について書かれたこの本には早速飛びつきました。
運用のプロというのは世の中に大勢いますが、プロでも通常の運用している額は数百億円程度で、兆円単位の金額を運用している人というのは、少なくとも日本にはあまりいません。そのことから、年金運用の改革については、専門家でもどうも実務的にちょっと的外れのように思われる意見を言う人が多いように思っていたのですが、この本の筆者は、数年にわたってGPIFのあり方検討会の委員や運用委員を務めておられたというだけあって、さすがによく研究されており、説得力のある意見を述べられているなと思わされ、とても勉強になりました。
最終章の運用の改革案については、非常におもしろい提案ではあるものの、やはりちょっと実務的には無理があるのではないかと思われましたが、今政府が検討しているという「もっと日本株を買わせる」という方向性よりは、よほどこちらの方が良いというのには同感です。
一般の人にもわかるようやさしい言葉で書こうと非常に努力をされていることはよくわかったのですが、それでもこの本は運用の経験の全くない人には、やはりかなりわかりにくい内容ではないでしょうか。資金運用の専門家の人にこそ、しっかりと読んでもらいたい本です。

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2014年08月14日

Posted by ブクログ

餅は餅屋。国債はもはやリスクオンとはいえ、これだけ巨大な投資機関の矛先は、やはり国債であるべき。なぜなら巨艦が支え続ける限り、それ自体リスクヘッジになるから。なのに何を勘違いしたのか、株式比率を上げてきた。しかも皆が稼げてる時にマイナスを出してまで。最大の失敗は、投資方針を公言してしまったこと。これはいわば投資の手の内をばらしているようなもの。組織の仕組みから変えないとえらいことになりそうだ。

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2017年02月26日

Posted by ブクログ

GPIFを巡る昨今の議論は過熱している
公的年金であり、130兆円という資産規模を誇る世界最大の運用機関であるGPIF
この本を読まざるともそのGPIFを巡る問題点は明らかだ
即ち、恣意的な政治介入を断固避けるべきだということ
そもそも株価(=企業価値)は企業の本源的価値そのものであり、バリュエーションの方法による差異はともかく、外的な資金流入の影響で左右されるものではない
行動ファイナンスを取り上げるまでもなく、現代の投資理論がモメンタム重視であり、既知情報の蓄積がイコール株価であるとまでは言わないが、アベノミクス(=政治)の通信簿を良くするために株価操縦は行われてはならない
ましてや所轄官庁の長でもない財務大臣の発言によって株価が変動することなど、まったくもってあるまじき姿であると思う
現代ポートフォリオ理論に依拠した投資分散効果を狙うのであれば、日本株比率は増加させるどころか低下させなければならない
日本株投資額の増加により、一時的に株価は改善するかもしれないが、なんらかの衝撃により株価が低迷することがあったら、投資分散が効率的に図れていないGPIFのポートフォリオは想定以上に壊滅的な損失を被ることになる
奇しくも運用委員長に今年ご就任されたわが母校NFS教授の米沢委員長には、同氏が教壇で教えられたファイナス理論に忠実に基づいた運用指針の策定を強行に意見具申していただきたい!

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2014年09月01日

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