あらすじ
その瞬間、少女の中の「魔女」が目を覚ます――。『本屋の森のあかり』の磯谷友紀が新境地を拓いたオムニバス集! 高校の文化祭に向けて準備が進む演劇部の舞台、「魔女リリト」。脚本担当の明日実(あすみ)は、ふとした瞬間、自分の中に眠っていた「魔女」の存在に気づく――。大人になる直前、不安定に交錯する恋と揺れ動く心模様を鮮やかに、そして残酷に描き出すオムニバス・ストーリー。
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青春は自分の気持ちを探る時間
高校生活を謳歌している男女の恋心をギリシャ神話のリリド、アダム、イブ、パンドラなどになぞらえながら、文化祭の演劇部の演目として展開していくのが面白い。
バード部の野鳥観察会でイユンクスという珍しい鳥を絡め、魔術が本当に備わったかのように心を動かしていくのも神秘的。
自分でも分からない心が、人と関わることで自覚しながら少しずつ大人になっていくそれぞれの登場人物たち。
とても落ち着いた学園もので、青春の痛みを感じる秀逸な作品です。
登場人物の名前に「実」を入れてアダムとイブが食べた林檎の果実を思わせるところや、ギリシャ神話の三美神を表す重要な数字の「三」が入った名前や万葉集から取った名前、三を持つ子や慧の名前の子が皆を繋ぐ役割を持ち、細部のこだわりが感じられる。